広島アニメフェス2010 アニメーションと職業でシンポジウム | アニメ!アニメ!

広島アニメフェス2010 アニメーションと職業でシンポジウム

第13回広島国際アニメーションフェスティバル会期3日目の8月9日、シンポジウム「企業は今、どのような展望をもって、どのような才能を求めているか」が開催された。

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 第13回広島国際アニメーションフェスティバル会期3日目の8月9日、シンポジウム「企業は今、どのような展望をもって、どのような才能を求めているか」が開催された。
 当シンポジウムは学生の聴講を前提にしていたものの、実写の領域とも交錯してくる広義の意味でのアニメーションについて、むしろ一般向けとして改めて現状を把握するのによい機会ともなっていた。

 司会はフェスティバルディレクターの木下小夜子氏、パネラーは白組代表取締役社長の島村達雄氏、ラピス代表取締役社長の八巻磐氏、イマジカの福本隆司氏、バンダイビジュアルの杉山潔氏である。島村氏は広島国際アニメーションフェスティバルの実行委員の1人でもあり、また1985年の第1回で自身の作品『花鳥風月』が、上映時間が5分以上15分以内の作品を対象としたカテゴリーBで受賞している。
 シンポジウムでは、主にプロダクションの職種の問題について語られた。

 島村氏は自社の例として、クレイ(粘土)や金属関節(アーマチュア)などの立体人形を使用したコマ撮りアニメーションが学生に人気があるとはいえ、独立した職種でやっていくには非常に厳しいことを挙げた。白組の中でそうしたセクションを置いているのは、伝統のある技術が途絶えてしまうのが耐え難いからでもあるという。CGアニメーションについては、モデリング、リグ、アニメーション、コンポジットなどが個々に専門化しているため誰でも出来るものではなくなってきたと話した。
 それに加えて八巻氏は、デジタル化でフィルムの時代よりもツールが変化したことに伴い、仕事の細分化、ワークフローが変わってきたと言う。つまり、各々の職種のボーダレスによって細分化されたこと、絵が綺麗になった一方で仕事上の障害になってしまっていること、それぞれの職種同士のコミュニケーションが全体の質に関わってくることなどを挙げた。そして、使う道具によって見せ方が変わるというだけで制作が簡単になるということは決してない、ワークフローについて真剣に考えながら作らないといけないと念を押した。

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 福本氏は、何でピクサーみたいに若手が短編を作るチャンスを得られる会社が日本で出てこないのかと切り出した。ピクサーが80年代に10人くらいの会社であった際に、デザイナーやアニメーターがコンピューターの技術者と共にCGの独自のシステムを作ってきたことをコミュニケーションや細分化の例として挙げた。翻って現在は1人で作る人は何でも1人で出来ると錯覚しがちであるとして、それぞれディレクターの才能を持ってる人とアニメーターの才能を持ってる人、ストーリーが得意な人と絵が得意な人、学校同士とか学校と企業とか、最小限のチームでバランスをとって作れば出来るのではないかと提示した。
 一方、杉山氏はプロデューサーの視点から述べた。プロデューサーは技術的な素養や知識は必要とはいえ、自分で手を動かして何かをするということはない代わりに仕事の依頼などで直接会って話す場合に生じやすいトラブルについてだ。それは自分の言葉が必ず伝わるわけではなく、相手の見解との相
違により喧嘩になってしまうということで、誤解を恐れずに話をまとめる必要性を説いた。

 島村氏が八巻氏の触れたワークフローについて、レイヤー数が100などになってくると制御が出来なくなってくるため、その際にもコミュニケーションが大変である例を挙げると、八巻氏は今までのコンテを描いて話して伝えるというのとは異なり、今はコンテの段階からカット割りでつないでみて(アニマティクス)、動きは荒い形ででも、どんどん映像を更新していくプリビズ(プリビジュアライゼーション)でお互いにコミュニケーションしていくと補足した。
 そして福本氏は実写の映画を作る時でもCGアニメーションでプリビズを行う時代であることを前提に、プリビズの前にもきちんと設計してコミュニケーションを取る必要性から、コンピューターは個人だけで使うツールではないことを改めて強調した。それを受けて杉山氏は、新海誠氏が今はチームで制作している例を挙げ、個人でアニメーションを作るのも楽しいが、皆で共同して作る楽しさも理解してほしいと訴えた。
 八巻氏は実写の人間がアクションしたもの(モーションキャプチャー)に手付けで補正することから、実写の人たちもアニメーションの感覚を理解してもらいたいと話した。これに対して福本氏は方法論の選択肢として実写で描くのかアニメで描くのかの例として『ポーラー・エクスプレス』が公開されてDVDが出た頃の話をした。最後に杉山氏は、実写にもアニメーションの技術、アニメーションにも実写の技術と、アニメーションという言葉が使われる範囲が物凄く広がったと議論を終えた。
【真狩祐志】

広島国際アニメーションフェスティバル /http://hiroanim.org/
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