『THEビッグオー』で知られる片山一良監督初の劇場アニメ『いばらの王 -King of Thorn-』は、実に挑戦的な映画である。それは一筋縄ではいかない複雑な魅力を兼ね備えつつも、観客に決して優しい作品ではない。人によっては難解すぎると失望させてしまう可能性も否めないが、一方で、近年久しく味わえなかったSF映画の醍醐味に満ちて、スリリングな面白さを提供してくれる。二度三度と繰り返し観ることで新たな発見がある――という段階で、ほとんどの観客の期待とかけ離れてしてしまうのかもしれないが、本作はその映画的な奥行きが素晴らしい。
■ 荒川直人 1965年、北海道生まれ。プロデューサー。CD「K-PLEASURE Kenji Kawai Best of Movies」で楽曲解説を執筆後、押井守&川井憲次関連の特殊需要を中心にライターの活動も行っている。 現在、mixiで5年ほど続けた極私的な映画レビューをアメブロにて公開中。Twitterも始めました。