第1部では「アニメーションセミナー・inヨコハマ2009」として「『よなよなペンギン』トップクリエイターが挑んだアニメ表現技術」が行われた。『よなよなペンギン』は、23日に全国ロードショーとなったアニメーション映画である。
監督のりんたろう氏、アニメーションスーパーバイザーの前田康生氏、CGIスーパーバイザーの篠崎亨氏が参加した。

『よなよなペンギン』は国内だけでなく、フランスやタイと共同制作を行っている。セミナーでは、りん監督は、まず手塚治虫の虫プロ時代から45年に渡って2Dアニメーションを制作してきたことや、ピクサーとは違う方向性で3DCGアニメーションを作るといった、これまでの概要を話した。
それから日本のアニメーションは特別であるというのを前置きにし、「表現技術で言えば、日本のレベルは良い悪いは別にして突出しちゃってる。その技術のレベルをフランスやタイの人たちに理解してもらうのに七転八倒」したこと、「僕らがやろうとしている方法論、表現の仕方を理解してもらうのに2年かかった」ことなどの苦労についても語った。
具体的には国内でも該当することとして、「CGのクリエイターには原画の概念がない」点が挙げられた。「原画なしでどうやってアニメーション作るんだろうって。彼らは逐次描きっていって、1から描いて行ってしまう。どういうアクションになっていくかは、やってみてから決めるというのがあるようなんですね」。その一方で「ただ、彼らは彼らで面白い動きをさせるのでうまく使いながらコントロールしていく」。
また同じく23日に劇場公開された『アバター』のジェームズ・キャメロン監督が、日本のアニメーションのタイミングがどうしてもCGで欲しいと語っていたことを引き合いに出しながら、「日本的な間のとり方が分からない。止めがフリーズになってしまう。その間は血も流れているし、呼吸もしているんだと。そういう言葉のアヤが難しかった。情感って日本人でも難しい。外国語にはない。日本人でも身振り手振りでやるしかない」とコミュニケーションの取り方の試行錯誤に時間を割いたという。
そして背景についても、「バックグラウンドとなる背景はきちんと作られてる事は間違いないです。でも情感も奥行きもないんですよね。非常に合理的に作られてます。合理性の作り方の中では、そういうもんだろうと思うし、見る側からしたら何の問題もないです」とキャラクターの作成と同様の問題点に触れた。「ただ自分たちが作る以上は、キャラクターと同等に背景の持ってるレベルが非常に拮抗してましたよ。カットによってはキャラクターより背景が全面に出る場合がある。つまりそれは背景が持つ情感だとか奥行き感だとか空気感、そういうのを見せたいんだと」。
最後にりん監督は、「カーアクションにどんだけ日本がお金をかけてつぎ込んでも、あのアメリカのスピード感には叶わない。これ何が違うのかと思ったら農耕民族と狩猟民族の違いなんですよ。日本の新しい表現を見つけるには、農耕民族を根底において、つまりそこには侘びも寂びも間のとり方も全てある。そういうもので作って行きたいなぁ。僕らの年代ギリギリのとこかも知れないですよ」と言いつつ、「これから先はスピード感を持てるかも知れないけど」と、『よなよなペンギン』で次の世代へつないだ自負を垣間見せた。
第2部の「ASIAGRAPH特別上映 アジアの個人制作アニメーション」が行われた。こちらでは、ひだかしんさく氏の『恋するネズミ』や植草航氏の『向ヶ丘千里はただ見つめていたのだった』など、次世代作家の作品が上映された。
【真狩祐志】
よなよなペンギン /http://yonapen.jp/
日本映画テレビ技術協会 /http://www.mpte.jp/
デジタルキャンプ /http://www.digitalcamp.net/
当サイトの関連記事
/『よなよなペンギン』りんたろう監督インタビュー
/日本映画テレビ技術協会 「よなよなペンギン」セミナー開催
/「よなよなペンギン」 クリスマスムード一杯で公開スタート