『宮本武蔵 ―双剣に馳せる夢―』に対する思いを語る
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その最終イベントに位置付けられたのが、押井守監督と西久保瑞穂監督によるセミナーだ。『宮本武蔵―リアルとフィクションの狭間にみる剣豪キャラクターの魅力』と題し、京都文化博物館森脇清隆氏司会のもと、様々なディスカッションが行われた。その前のセッションでは『宮本武蔵 ―双剣に馳せる夢―』が上映されていたこともあり、会場は250人あまりの聴講者をむかえ大いに盛り上がった。
押井脚本決定稿は、蘊蓄9割。「読物」としては最高の出来
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結局、話は立ち切れになったが、アイデアそのものは温め続けた。そのような中で-そのアイデアをある企業が興味を持ってくれたという。ただ宮本武蔵に対する思い入れが深かった押井氏は、自分の作品を単にチャンバラ活劇にするつもりは当初からなかったということもあり、興味を持った企業に対しては人気漫画のような活劇になることは絶対にないと説明。それでも一緒にやりたいということで話が進んでいったという。
これに対し、西久保監督がある日、メールで脚本が送られてきたが、そこにはすでに決定稿と書かれた事に驚きを覚えたと当時の状況を述懐した。
西久保氏は、これを「押井氏にあとの仕事を自分にまかしてもらっているのだ」と理解し、作品の制作を粛々と進めたという。結果的に脚本と完成作品では、内容が半分ぐらい変わったという。
「押井氏の脚本は、冒頭のみがアクションでのこりは「うんちく」だった」と西久保氏。押井ファンは同氏が 作品の中で繰り広げる「うんちく」が好きなのだということを認めながらも、それでは、一般の人にとっては、エンターテインメントとして成立しないということから、「うんちく」とアクションをバランスよく織り交ぜる展開にしたという。
これは、押井作品では、『機動警察パトレイバー2the Movie』以降の傾向であるしとし、このような変更でも押井氏が手掛けた作品として違和感がないだろうという確信とともに進めたとのことだ。ここで、押井氏が「作品を見ていて観客が居眠りしそうな瞬間にビクッと驚かすタイミング」と解説し、開場の笑いを誘った。
多彩な才能に恵まれた宮本武蔵をアニメという技法で解説
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また、講演では、剣豪といいながらも牢人であったという事実にふれ、これは、今でいえば「就活」にあたると押井氏。一見、格好良く見えながらも実際はそのような綺麗ごとでは済まされるものではなかったと、武家社会の厳しい現実を現代の状況をふまえて解説した。
更に押井氏は「五輪書」が哲学書以上に優れたマニュアルだったと独自の見解を提示。剣を扱えるように分かりやすく指南しており欧米がマニュアル思考で、日本が非マニュアル思考であるといった定説に異を唱えた。また、二刀流は、馬上の戦いを前提とした剣法であるとし、厳しい戦いの中で400キロもの重さと勢いを戦いの場で生かさないはずがなく、宮本武蔵は、そのような実践的な剣術を編み出したのだと押井氏独自の武蔵論を唱えた。
映像表現とは自分の思い入れがある部分を徹底的にこだわること
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また、西久保氏は、宮本武蔵を「時代に今ひと時遅れてきてしまった人物」とし、人それぞれに「ひと時遅れてしまった」という感覚があるはずでそれを表現したかったと、作品に対する自分の思いを明かした。
最後にアニメドキュメンタリーという形式について、押井氏は今回の作品を教養映画としてはとても意義のある作品となったと自らの作品を評し、「全国の小中学校の図書館には是非、お買い上げいただきたい」と笑いを誘いながらも、完成したものは間違いなく授業や、NHKの地上派でも放送できると自信を示した。
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時間にして60分というものの、あっという間に過ぎて行った感が強い本セミナー。『宮本武蔵 ―双剣に馳せる夢―』のDVDがリリースされる際は、押井氏が最終稿として渡した脚本全文が同梱される可能性を西久保氏が示唆したこともあり、今後の展開が期待された。
KYOTO Cross Media Experience2009 / http://www.kyoto-cmex.com/