アニメーターの育成を通じて、日本のアニメ産業の振興を目指している。養成講座を実施することでアニメーターの育成を行うだけでなく、講座のなかの経験から、アニメスタジオやアニメーターを養成する教育機関が応用出来る教育の方法やプログラムも開発する。
第1回は一昨年から昨年にかけて行われ、高い成果を残している。今回はプログラムの強化を望む業界の声もあり、講習会の参加者を昨年の15名から25名と増やした。
その結果、研修講座からアニメスタジオへのインターシップに進むものも、昨年の11名から19名と昨年から大幅に増加した。
参加者たちに大きな期待
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また、前回の経験を受けていくつか改良点が加えられた。例えば、プロジェクトに関わったアニメスタジオの多くが、アニメーター志望者の絵を描く経験が少な過ぎると指摘することから、作画に関する講座を今回は拡充している。
さらに今回は、首都圏だけでなく関西でも2次試験を行い、また2名の外国人受講者も迎えた。より多くの人に機会を提供することで、より多くの人材が育つことを目指す。
今回の大きな特徴のひとつは、女性の参加者が圧倒的に多かったことである。その数は19名中17名となっている。
挨拶にたった日本動画協会の副理事布川郁司氏(スタジオぴえろ社長)は、自社でも女性アニメーターの活躍が目立っているが、将来の日本のアニメ制作は女性のパワーに支えられることになりそうだと驚きを見せていた。
また経済産業省の前田泰宏文化情報関連産業課課長は、若いアニメーションの才能に大きな期待を語り、国としても全面的にバックアップすると述べた。
後藤隆幸氏が記念講演
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報告会では、アニメ制作会社プロダクションI.Gのアニメーターとして同社のアニメ制作を支えるだけでなく、同社の取締役でもある後藤隆幸氏が記念講演を行った。
講演は今回の修了生に向けたもので、自からの経験からアニメーターのキャリアがどのように築かれるか語った。後藤氏は、自分自身の経験は非常に幸運なことが多かったが、こうした幸運は必ず誰にも訪れるものである、幸運が訪れた時にそうした機会を生かせることが重要なのでないかという。そして、幸運がいつ来てもいいように、日頃から準備し、実力を蓄えることが大切と修了生にメッセージを送った。
これまで数々の実績を築いてきたアニメーターである後藤氏の言葉には重みがあり、修了生達は真剣な顔で聞き入っていた。
アニメーター養成今後の課題は?
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こうした新人アニメーターの教育プログラム開発は、現在ほかにも幾つか存在する。そうしたなかで、今回の「アニメーター養成プロジェクト」のように研修講座とインターシップを組み合わせる職業訓練の方法が確立しつつある。
また、近年大手アニメスタジオが、政策的に新人アニメーターの養成に力を入れるケースは徐々に増えてきている。
その一方で、アニメーターはその仕事量や多くの経験や高い専門性を必要とするにもかかわらず、就業環境はあまりよくないとされている。このため実際に、折角育ちつつある新人アニメーターが業界での仕事を断念するケースも多い。
アニメ制作の人材不足は、アニメーター育成と同時にアニメーターの就業環境の向上も重要である。また、現在はアニメーターが注目されることが多いが、こうした状況は演出など他の制作スタッフでも同様のことが指摘される。
これまでのアニメーター養成プロジェクトの成果を活かすためにも、今後はそうした面からの対策も必要になってくるだろう。
アニメーター養成プロジェクト /http://www.animenews.jp/aja/
経済産業省 /http://www.meti.go.jp/
日本動画協会 /http://www.aja.gr.jp/