『GM/おたく展関連フォーラム』レポート | アニメ!アニメ!

『GM/おたく展関連フォーラム』レポート

3月11日 東京都写真美術館
磯崎新氏 (建築家)
斎藤環氏 (精神科医)
森川嘉一郎氏 (第9回ヴェネチアビエンナーレ国際建築展日本館コミッショナー)

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3月11日 東京都写真美術館
磯崎新氏 (建築家)
斎藤環氏 (精神科医)
森川嘉一郎氏 (第9回ヴェネチアビエンナーレ国際建築展日本館コミッショナー)

 『OTAKU』展関連のフォーラムのパネリストに磯崎新氏の名前を見た時には正直驚いた。おたくと磯崎氏はあまりにも遠い存在に思えたからだ。しかし、そもそも今回の展覧会はヴェネチアビエンナーレの建築展である。日本を代表する建築家磯崎氏が出て来てもおかしくない。にもかかわらず磯崎氏の名前に違和感が漂うのは、今回の展覧会のテーマが意表をついたものであることを物語っている。

 そうした経緯を磯崎氏はうまく説明している。前回のテーマは女が変える都市として『渋谷』、『ヤマンバ』であったから、今回は男が変える都市をテーマとして考えた。その中で『おたく』というテーマが浮上してきたが、このテーマは自分では全く判らないから、第三者的立場に自分を置いたという。
 しかし、第三者的な立場に身を置きながら磯崎氏の視点は的確である。この展覧会がヴェネチアで世代により全く異なって受け入れられたことにまず触れている。つまり、40代以上の人達は最初から拒否をし、20代以下はとても反応が良かったという。磯崎氏はこれは審査員においても同様で、不真面目なものと考える人達と何か違うと感じる人達との間に論議が起こったに違いないという。
 磯崎氏は美術展の成功は通常はメディアにおける良い評価と観客数であり、失敗は無視されることだと説明する。そして、一番面白い本当の成功は、この両方が存在し論議が起こることだと考えている。今回の展示は、そうした論議を起こすことが出来たので素晴らしかったと評価した。

 磯崎氏の一歩引いた立場での発言のいっぽうで、企画に深く携った斎藤氏、森川氏の発言はもっと思い入れたっぷりであった。斎藤氏は、自分の考えるおたくの記述(定義ではないとしている)は、おたくは、虚構親和性が非常に高いことフェティシズム、2次創作、ポルノグラフィーといった要素を挙げた。そのうえで、実体指向のマニアと仮想で満足出来るおたくは違うものとする。
 こうしたおたくは、パラサイト・シングル、ニート、ひきこもりといった非社会的な系譜に連なり、そこに非社会性の新しい文化が生まれる可能性が高いと説明する。
 斎藤氏のおたくの捕らえ方は、非常に判りやすく魅力的である。そして、おたくとマニアは違うという考え方はおたくとは何かと考えるうえで新たな視点を提示している。にもかかわらず、おたくというものをあまりにも狭く捕らえすぎているように感じた。つまり、それでは、おたくは『やおい』愛好家と2次元の美少女愛好家に限定されてしまうことになる。そうした意味では、広く共有された認識とは思えないのだ。またそれは、斎藤氏が敢えて定義ではないとする理由でもあるのだろう。
 
 森川氏は、今回の展覧会の意義はヴェネチアで行うことと東京でやることでは全く違うことを中心に説明した。つまり、『OTAKU』展はヴェネチアでは非日常であるが、東京では日常の風景であるという。つまり、東京の日常の風景を敢えてもう一度美術館の中に再現する意味合いはまた別のものだとする。
 それは、おたくという『恥』なる部分を美術館や新日曜美術館といったハイアートの世界に持って行くとことである。こうした刺激が確かに面白い現象を生みだすことは判る。だが、限られたフォーラムの時間もあり、森川氏がそうした衝突の中で何を期待するのかが説明されず、やや残念な点であった。

/おたく:人格=空間=都市 
/東京写真美術館 
《animeanime》
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