アニメ『機動新世紀ガンダムX』の30周年を記念する「『機動新世紀ガンダムX』30thスペシャル上映会in TOHOシネマズ池袋が、2026年9月27日に東京のTOHOシネマズ 池袋にて開催された。
15:00の回の上映後、18:20の回の上映前の2回にわたりトークショーが実施され、ガロード・ラン役の高木渉、監督の高松信司、キャラクターデザインの西村誠芳、メカニカルデザインの石垣純哉が登壇し『ガンダムX』30周年を記念したトークを繰り広げた。
【15:00の回(上映後トークショー)】
・上映会用にピックアップした物語について
第2期オープニングテーマであるROMANTIC MODE「Resolution」が流れるなか、本イベントのMCを務めるガロード・ラン役の高木が登場する。続いて、高木の呼び込みにより監督の高松信司、キャラクターデザインの西村誠芳、メカニカルデザインの石垣純哉がステージに登壇した。それぞれによる自己紹介の後、今回上映されたエピソードの選定理由や制作当時の思い出について語るトークコーナーが始まった。

この上映会に向けて出演者が上映候補としてピックアップしたのは、第1話「月は出ているか?」(高松監督、石垣)、第14話「俺の声が聞こえるか!」(高木)、第15話「天国なんてあるのかな」(西村)、第29話「私を見て」(西村)、第33話「どうして俺を知っている!?」(石垣)、第39話「月はいつもそこにある」(高松監督)の全6話だ。これらの中から計4話が上映された。
第1話については、高松監督が「どういう作品にしようか悩んだし、思い入れがある」とコメントする。石垣も「絵コンテでモビルスーツが大量に登場していて、高松さんを恨みました(笑)」と当時を振り返った。また、企画は10月からスタートし、12月にはデザイン案をもとにした作画打ち合わせが行われたという。20代半ばだった石垣は、「昼間は『ガンダムX』、夜は『天空のエスカフローネ』をやっていた」と当時の多忙な制作環境を明かし、ほとんど休みのない日々だったと語った。
ロアビィ・ロイとウィッツ・スーの里帰りが描かれる第15話を選んだ西村は「完全に独立した話で、一番好きなエピソード」と選定理由を紹介する。また、第29話については、「冒頭の夢のシーンの恥ずかしさをみんなで共有したかった」と明かし、会場の笑いを誘った。
クラウダ(ランスロー・ダーウェル専用機)が初登場する第33話を選んだ石垣は「それまで1話で撃破されてしまうモビルスーツが続いていたので、“一撃ではやられないモビルスーツ”を登場させたかった」と選定理由を説明する。さらに、「そもそも何のための装甲なのか、ということで重装甲の機体としてデザインした」とクラウダへのこだわりを語りつつ、「でも、お腹に弱点があるんですけどね」と笑いを交えながら当時の思い出を振り返った。
・ニュータイプというテーマについて
続いてのトークテーマは、『ガンダムX』の根幹をなすニュータイプについてだ。本作でニュータイプを扱うこと自体は高松監督の発案ではなく、「ガンダムシリーズなら避けて通れない」と考えたシリーズ構成の川崎ヒロユキによる提案がきっかけだったという。一方で高松監督は当時、「戦後の荒れ果てた世界で、少年少女たちが出会い、たくましく生きていく物語を描きたかった」と振り返る。こうして川崎のアイディアと高松監督の描きたかったテーマが結び付き、『ガンダムX』の物語が形作られていった。

制作が進むにつれ、高松監督には「ガンダムを作っている」という意識と同時に、「ガンダムを守りたい」という思いも芽生えていったという。その感情は、ニュータイプを守ろうとするジャミル・ニートへの共感につながり、「ジャミルは俺だ、という感覚があった」と語った。
さらに、その思いは最終話における“ニュータイプという概念に囚われた人々の憑き物落とし”というアイディアへと発展する。高松監督は、「月にいるニュータイプ仙人が憑き物を落とす、という発想を川崎さんが具体化してくれた」と明かし、その存在こそがD.O.M.E.だったという貴重な制作秘話を披露した。
・30周年キービジュアルについて
続いて話題は、中秋の名月である9月25日に公開された『機動新世紀ガンダムX』30周年記念キービジュアルへと移る。ガンダムダブルエックスとガロード・ラン、ティファ・アディールが描かれたイラストについて、スクリーンには着彩前のラフイラストも映し出され、石垣と西村が完成までの制作過程を解説した。担当者から提案されたレイアウトをベースに、西村と石垣が細かな修正を重ねながら、最終的な構図を固めていったという。

ガンダムダブルエックスについて、石垣は当初は横顔のアップを想定していたものの、最終的には胴体まで描かれた構図へ変更したことを明かした。その理由について、「A3サイズで顔だけを描くのはバランスを取るのが難しい。線も細くなるし、密度感が出せない」と説明する。さらに、完成イラストではガロードとティファに隠れて見えない部分まで描き込まれていることも紹介された。

また、西村は「『機動新世紀ガンダムX』記録全集 A.W. 30th Chronicle」に収録されている描き下ろしイラストについても言及する。「水彩画は10年ほど前から趣味で描いていたが、それが仕事になった」と語り、新規イラスト制作の裏話を披露した。30周年を彩るアートワークに込められたこだわりや制作秘話に、会場のファンは熱心に耳を傾けていた。
・エンディング
トークショーの最後には、登壇者から来場者へ向けたメッセージが贈られた。石垣は、「まさか30周年でこんなイベントがあるとは思っていませんでした」と驚きを語りながら、「31周年、32周年と、皆さんに飽きられるまで続けられたらうれしいです」とコメントする。西村は、「テレビシリーズとして作った作品を、こんな大画面で観ていただくことになるとは思っていませんでした」と振り返りつつ、「僕自身が視聴者だったとしても観に行きたいと思うくらい好きな作品です。ありがとうございますという気持ちでいっぱいです」と、ファンへの感謝を伝えた。

そして高松監督は、「30年経っても、こんなに愛してくださる皆さんがいることが本当にうれしいです」と感謝を述べるとともに、「記録全集ではさらに踏み込んだ話もしていますので、ぜひ見てください!」とコメントした。会場から大きな拍手が送られる中、3人はステージを後にした。
その後、MCを務めた高木がステージに残り、今回の上映会に向けて石垣、西村と食事をした際のエピソードを紹介する。キャストだけではなく、スタッフやクリエイターの視点からも『ガンダムX』を振り返ることができた喜びを語り、来場者への感謝とともにトークショーを締めくくった。
【18:20の回(上映前トークショー)】
・『ガンダムX』ができるまで
15:00の回の上映後トークショーに続き、18:20の回では上映前トークショーが実施された。ガロードの「出るぜー!」の声がスクリーンに響くと、MCを務める高木が登場する。客席から歓声が上がる中、高木の呼び込みで高松監督、西村、石垣もステージへ姿を見せた。
まずは、『機動新世紀ガンダムX』の企画立ち上げ当時についてトークが展開された。スクリーンには初期デザインや仮タイトルなどの貴重な資料が映し出され、会場からはどよめきの声が上がる。高松監督は「すごい勢いで物事が進んでいったので、その過程はあまり覚えていない」と笑いながら振り返りつつ、西村、石垣とともに当時のデザインコンセプトや作品の方向性について語った。
ガンダムXの象徴的な武装であるサテライトキャノンについては、高松監督は「デザインを見た時に、月からマイクロウェーブを受信して発射する設定を考えた」と説明する。デザインから着想を得て世界観や設定が組み上げられていった、制作当時の裏話が披露された。
・ガロード・ランというキャラクターについて
続いての話題は、本作の主人公であるガロード・ランについてだ。高木は、『ガンダムX』について「ガロードの物語と言っていいと思っている」と語り、作品の中心にガロードというキャラクターがいることへの思いを明かす。
ガロードのデザインについて、西村は初期案が一度ボツになったことを告白する。当時『新機動戦記ガンダムW』にも参加していたことから、「そこから離れなければいけないと思った」と振り返った。初期案は現在よりも頭身が低く、少年漫画の主人公らしさを前面に出したデザインだったというが、さまざまな意見を受けながら調整が重ねられ、現在のデザインへとブラッシュアップされていったことが明かされた。

また高木は、ガロード役に決まるまでのオーディション秘話も披露する。ガロード役に決まった際には、後にシャギア役を務める森川智之から「お前、主役なの!?」と驚かれたというエピソードで会場を沸かせた。さらに高松監督は、「少年らしい元気さがあり、自分から走り出していくようなキャラクターにしたかった」とガロード像について説明する。そのイメージに高木がぴったりだったことから、ガロード役への起用を決めた理由を語った。
・川崎ヒロユキについて
トークも終盤に差し掛かると、シリーズ構成の川崎ヒロユキが話題にのぼる。高松監督は、限られた制作期間の中でシナリオ制作を進めるため、以前から別作品でタッグを組んでいた川崎へ参加を打診したことを振り返った。高松監督が作品世界の根幹となるアイディアだけを伝えたところ、ほどなくして第1話のプロットが完成する。その後も川崎を中心に物語が紡がれ、作品全体の着地点も形作られていったという。また、次回予告のナレーションの多くも川崎が執筆していたことが明かされた。

高木さんは川崎について、「言葉の魔術師」と表現する。その豊かな言葉選びが『ガンダムX』の魅力を形作っていたと振り返り、会場も改めてその功績に思いを馳せていた。
・記録全集 A.W. 30th Chronicleの新規描き下ろしについて
続いて話題は、『機動新世紀ガンダムX』 記録全集 A.W. 30th Chronicleに収録される新規描き下ろしイラストへと移る。西村は、自身が手掛けたフリーデンクルーとガロード&ティファの水彩画について、「最終回のラストシーンをイメージして描いた」と説明する。一方で、フロスト兄弟についてはレイアウトの都合上描き込むことができなかったと明かし、少し申し訳なさそうな表情を見せた。

また、石垣が描き下ろしたガンダムXとガンダムダブルエックスのイラストについても制作秘話が語られた。当初は頭部の向きが現在とは逆のレイアウトで進められていたものの、機体のシルエットや見栄えを考慮して構図を変更したそうだ。さらに、機体のカラーリングと干渉しないよう宇宙背景にも調整が加えられ、月を印象的に配置した現在のビジュアルへと仕上げられたという。
石垣はイラスト制作について、「立体的な整合性よりも、見栄えのかっこよさを優先している」と語り、頭部の大きさや腕部の構造なども、より魅力的に見えるよう設定からアレンジを加えていることを解説する。さらに、「冷静に考えると、来年還暦の男がこんな絵を描いているんだから大したものですよね」と冗談交じりに話すと、会場からは大きな拍手が送られた。
・エンディング
トークショーも終演の時間となり、最後は登壇者それぞれから来場者へ向けてメッセージが送られた。石垣、西村に続き、最後に挨拶した高松監督は、「感無量です。40年、50年、100年と愛していただければと思います」とコメントする。長年作品を支え続けてきたファンへの思いを語ると、客席からは「ありがとう!」という声が送られ、会場は温かな拍手に包まれた。
その後、高松監督、西村、石垣がステージを後にすると、MCを務めた高木が一人ステージに残り、来場者へ向けてメッセージを送った。これから上映されるエピソードを存分に楽しんでほしいと呼びかけるとともに、この日が満月であったことにも触れながら、『ガンダムX』への思いを改めて語った。最後は「これからも『ガンダムX』をよろしくお願いいたします」と挨拶し、大きな拍手の中でトークショーは幕を閉じた。
■『機動新世紀ガンダムX』 30thスペシャル上映会in TOHOシネマズ 池袋 実施概要
【日時】
2026年9月27日(日)
(1)15:00の回(上映後トークショー)
(2)18:20の回(上映前トークショー)
【会場】
TOHOシネマズ 池袋
【登壇者(敬称略)】
高松信司(監督)、西村誠芳(キャラクターデザイン)、石垣純哉(メカニカルデザイン)
MC:高木 渉(ガロード・ラン役)
【上映作品】
〇特別上映 『少年とガンダム』
〇『機動新世紀ガンダムX』
・第1話「月は出ているか?」
・第14話「俺の声が聞こえるか!」
・第29話「私を見て」
・第39話「月はいつもそこにある」
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