鈴木崚汰 “強いと思う人”は「母」 女性たちの策略が渦巻くTVアニメ「天幕のジャードゥーガル」インタビュー(9) | アニメ!アニメ!

鈴木崚汰 “強いと思う人”は「母」 女性たちの策略が渦巻くTVアニメ「天幕のジャードゥーガル」インタビュー(9)

TVアニメ『天幕のジャードゥーガル』でトルイを演じる鈴木崚汰にインタビュー。“笑顔の裏の冷たさ”と“純粋さ”、そして「敵はいても悪はいない」物語の魅力、鈴木が語る“強さ”とは。

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TVアニメ『天幕のジャードゥーガル』鈴木崚汰
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数々の漫画賞を受賞した話題の歴史マンガ『天幕のジャードゥーガル』のTVアニメが、テレビ朝日系全国24局ネットの“IMAnimation”枠およびBS朝日ほかにて放送中だ。トマトスープによる原作マンガ(秋田書店「Souffle(スーフル)」連載)をもとに、13世紀のモンゴルを舞台にした、元奴隷の少女・シタラが帝国を揺るがす物語が描かれている。

そんな本作で、モンゴル帝国皇帝チンギス・カンの第四皇子で、帝国最大の軍事力を持ち、他国への侵攻を繰り返すトルイ役の鈴木崚汰にインタビュー。登場早々に強烈なインパクトを残しながらも、物語が進むにつれて家族への思いや朗らかな一面ものぞかせるトルイ。劇中では“敵”として立ちはだかる存在でありながら、単純な善悪では語れない魅力を持つキャラクターでもある。

鈴木にはそんなトルイを演じるうえで意識した“笑顔の裏にある冷たさ”と“純粋さ”のバランスや、「敵はいても悪はいない」と言える本作の奥深い世界観について語ってもらったほか、さらに、作品を通じて触れたモンゴルの文化や価値観、そして鈴木自身が考える“強さ”についても聞いている。

[撮影:You Ishii]

◆「悪意で動いていない」鈴木崚汰が思うトルイの魅力

TVアニメ『天幕のジャードゥーガル』鈴木崚汰

――まず、本作に触れた際の印象を教えてください。

鈴木崚汰(以下、鈴木) モンゴル史というと、学校の授業で習うものとしてはどうしても「元寇(※げんこう……日本の鎌倉時代中期の1274年・1281年に、モンゴル帝国(元朝)および属国の高麗によって2度にわたり行われた対日本侵攻)」の印象が強いですよね。日本との戦いの歴史というイメージが強く、それ以外についてモンゴルを深く知る機会はあまりありませんでした。でもこの作品に触れて、モンゴルの歴史や文化、カルチャーみたいなものまでを含めて知ったうえで思うのは、単純な“男たちの戦いの物語”ではないんですよね。“魔女”と呼ばれる存在へとつながっていく物語の始まりでもありますし、その中で描かれる女性たちのコミュニティだったり、張り巡らされた策略だったり……。どこかサスペンスのような空気感もある作品だなと思いました。

――演じるトルイの印象も聞かせていただけますか?

鈴木トルイは四兄弟の末っ子なのですが、モンゴルの文化的には末子が家を継ぐという慣習があって、そういう意味では大きなものを背負っている人物なんですよ。さらに軍事力を率いている立場でもあるので、戦の最前線に立つ存在として、部族としての強さや冷酷さみたいなものは、序盤ではかなり強く描かれているキャラクターだなと思いました。

常に笑顔なのも印象的なんですけど、その笑顔の裏にはどこか冷たさも潜んでいるような感覚があって。そこは魅力的な部分だなと思います。その一方で、天幕やゲルの中にいるトルイを見ると、すごく朗らかなんですよ。大人になっても少年の心を忘れていないような、快活な男だなという印象もありますし、何より家族思いなところが素敵なキャラクターだなと思います。

TVアニメ『天幕のジャードゥーガル』場面写真

――インパクトのある登場シーンではモンゴル語で話しており、モンゴルの声優さんがアフレコされていました。同じ役を演じる同士で、何かお話されたことはあったのですか?

鈴木残念ながらモンゴル語を担当してくださった声優さんとはお会いする機会はなくて、僕のお芝居の音声をお渡しするという形でした。僕が日本語で演じたものをベースに、モンゴル語のトルイも作っていきたいというお話をいただき、ガイドというほど大げさなものではありませんが、日本語版トルイの指針のような形で収録させていただきました。視聴者の皆さんには実際にその音声をお届けできないのが僕としても残念ではあるんですけど(笑)、雰囲気を想像して見ていただけたらうれしいですね。

――登場早々にシタラを殺すよう命じ、原論を奪ったトルイ。視聴者の最初の印象としては最悪な人物ですが、鈴木さんが今言ったように、話が進むにつれて朗らかな部分が見えてきます。演じるうえで、そのギャップは意識されましたか?

鈴木トルイ自身は、そもそも自分が悪いことをしているとは思っていないんですよ。ただ「ソルコクタニが欲しいと言ったものを取りに来た」という感覚なので、僕としても心の部分を大きく変えて演じていたわけではありませんでした。一方で、シタラたちが恐れを抱かなければいけない存在ではあるので、戦場ではちゃんと“怖さ”みたいなものは出さなきゃいけないなという気持ちはありました。

でも基本的には、声も大きくて元気で、まっすぐな人物なんですよね。後半になってくると「どういう思いで動いていたのか」みたいな部分も出てきますけど、普段の会話ではそこまで深く考えているタイプではないのかなって(笑)。「原論、読めるのか?」と聞かれて「わからない」って言っちゃうような子なので、あまり難しく考えるというより、目的に向かって真っすぐ進んでいるイメージで演じました。

TVアニメ『天幕のジャードゥーガル』鈴木崚汰

――シタラ役の関根明良さんにインタビューした際「この作品に“敵”はいるけど“悪”はいない」と言っていました。トルイはまさにそれを象徴するキャラクターだと思うのですが。

鈴木そうですね。後半は女性たちの策略のお話にもなっていきますけど、そこにいる人たちも、それぞれが自分なりの正義で動いているんですよね。妃たちも、自分の夫に権力を持ってほしいとか、自分たちの立場を守りたいとか、そういう思いがあって行動している。だから、誰かを陥れようとか、悪意だけで動いているという感じではないのかなと思います。

もちろん、ドレゲネやシタラには復讐心みたいなものもありますけど、それも単純な悪意ではなくて、それぞれが抱えてきたものの先にある感情だと思うので。本当に“正義と正義がぶつかっている”感覚に近いのかなって。だから確かに「悪」はあまり感じない作品だなという印象がありますね。

TVアニメ『天幕のジャードゥーガル』場面写真

――トルイも悪意で行動したわけではないと。

鈴木あれは悪意ではないと思います。トルイとしては、ただソルコクタニの願いを叶えてあげたかっただけ。ゲルに帰ってきて「宝石じゃなくて本を持ってきてほしいなんて。なんて慎ましいんだ!」と喜んでいる姿からもわかるように、トルイ自身は純粋なんです。だから本人の中では「誰かを傷つけてやろう」という気持ちではなくて、「願いを叶えてあげたい」という思いで動いていたんだと思います。

◆「僕が思う強い人は母」鈴木崚汰が考える“強さ”とは

TVアニメ『天幕のジャードゥーガル』鈴木崚汰

――今おっしゃられたように、本作には戦いや権力争いが描かれていますが、その根底には家族や仲間との関係性も存在しています。トルイを演じる中で印象的だった人物や関係性はありましたか?

鈴木ソルコクタニですね。演じられている久野美咲さんのお芝居も含めて、印象に残っています。これまで久野さんとご一緒した作品では、どちらかというと動物っぽいキャラクターだったり、等身の低いキャラクターのイメージがあったので、こういう落ち着いた大人の女性らしさを感じるお芝居を聞いたのが新鮮だったんです。時代感のある空気も含めて「こういう表現もされるんだ!」と、掛け合いながら尊敬する部分がたくさんありました。ソルコクタニ自身も、知性を大切にしている人物なんです。先を見据えることができる聡明さがあって、そこも魅力的なキャラクターだなと思います。

それ以外にも、兄弟たちとの関係性も、この作品の中では大切なものとして描かれていきます。トルイがオゴタイのために命を懸けるシーンは、家族への思いが強く伝わってきて、アフレコをしていた僕自身の心にもくるものがありました。

――共演者の芝居で印象に残ったものはありましたか?

鈴木やっぱりシタラになってしまいますね。ナレーションも含めて、少し大人になったシタラの、どこか俯瞰したような、伝聞のような雰囲気のお芝居が印象的でした。特に、消え入りそうなくらい小さな声を出しているシーンがあるんですけど、実際に映像で見た時に、それがとても綺麗に乗っていたんです。「そんな小さな声でも、こんなにしっかり届くんだ」と、技術なのか、声の特性なのかは分からないんですけど、本当に驚きました。

シタラって、難しいキャラクターだと思うんです。表情では笑っているのに、心の中では憎しみを抱いていたりして、その切り替えが多い役なんですよね。モノローグと会話も行き来しますし、繊細なお芝居が必要な役だと思うんですけど、それを自然に演じられていて「関根さんはすごい役者さんだな」と思いました。

TVアニメ『天幕のジャードゥーガル』鈴木崚汰

――出演発表時のコメントでは、「今まで触れてこなかった文化や言葉を学び、知見が広がった」とお話しされていました。実際に作品へ参加する中で、特に印象に残った歴史や文化、価値観などがあれば教えてください。

鈴木動物のさばき方ひとつ取っても、国や地域ごとの色が出るんだというのは新鮮でした。血抜きの方法も「首から行くんだ」とか、当時からそういう文化の違いがあったんだなって。天幕の敷居を踏んではいけないとか、火に大きな意味があって穢れを払う存在として考えられているとか。そういう価値観も印象に残っています。

でも考えてみたら、僕たちにも家で靴を脱ぐ文化がありますよね。敷居を踏まないということも、どこか通じる部分があるのかなって思いました。今の生活に置き換えて考えてみると、昔から続いている価値観は現代にもまだ残っているんだなと感じて、面白かったですね。

――アニメーションについても「細かな造形が美しく描かれている」とコメントされていました。実際に映像をご覧になって、特に注目してほしいポイントやお気に入りのシーンはありますか?

鈴木トマトスープ先生の描く“絵本のような絵柄”を、アニメでどう表現するんだろうというのは楽しみでした。特に印象的だったのは、第1話のシタラたちが窓の前で会話しているシーンです。普通だったら窓に人物の姿が鏡みたいに映るイメージがあると思うんですけど、あのシーンは逆に窓の反射が人物側に映り込んでいるような表現になっていて。ああいう描き方はあまり見たことがなかったので、面白いなと思いました。

また、かわいらしい絵柄ではあるんですけど、涙の表現はリアルなんですよ。目に涙が溜まって、こぼれ落ちるまでの流れが人間の動きになっていて。この作品って会話劇が大切な作品だと思うので、そういう人間描写に力が入っているなと感じました。

もちろん風景や山、動物みたいな自然描写も綺麗ですし、建物も細かいんですよね。当時の空気感や世界観がしっかり作り込まれていて、そこもぜひ見てほしいポイントだと思います。

TVアニメ『天幕のジャードゥーガル』場面写真

――陰陽の描き方が特徴的ですよね。

鈴木そうですよね。当時は時計もない時代なので、天幕から差し込む光で時間を測る、いわば日時計のような役割もあったじゃないですか。そう考えると、太陽って当時の人たちにとって大きな存在だったんだろうなって思いますね。神として捉えられることもありますし、見え方によって意味合いが変わることもあって。作中にも日食の描写がありますけど、そういう現象ひとつにしても、その時代の人たちにとっては今以上に特別な意味を持っていたのかなって。もちろん今も太陽は大切な存在ですけど、当時はより生活や価値観と密接に結びついていたんだろうなと思います。

――トルイは大きな軍事力を持った“強いキャラクター”として描かれていますが、本作を見ていると“強さ”にはたくさんの意味があると教えてくれます。鈴木さんの思う「強い人」とはどのような人でしょうか?

鈴木誰かのために、自分を捨てられる人は強いなと思いますね。声優は表に立つ仕事なので、自分を強く持っている人が多いイメージもあるんですけど、でも実際は、その裏で支えてくれている人がたくさんいるんですよ。アニメだったらアニメーターさんがいて、マネージャーさんがいて、もっと言えば家族もそうですし。

僕にとっては、特に母がそうですね。夜遅くまで働いているのに、僕のためにいろいろしてくれていました。部活をやりたいと言えば必要なものを揃えてくれたり。当時はそこまで分かっていなかったんですけど、高校生くらいになってから「すごく強い人なんだな」と思うようになりました。僕自身は、そこまで人のために頑張れるタイプではない気がしていて、どこかで折れてしまう気もするので……。だから僕の思う“強い人”は、母ですね。

TVアニメ『天幕のジャードゥーガル』鈴木崚汰

――ありがとうございます。最後に、本作を楽しんでいるファンの皆さんへメッセージをお願いします。

鈴木最初にもお話ししたように、この作品は女性たちの会話劇や、サスペンス的な空気感が大きな柱になっている作品です。ドレゲネはどうなるんだろう、シタラはどうなるんだろう、ソルコクタニはどうなるんだろう……と、それぞれのキャラクターが強い思いを持って、自分の置かれた立場や身分の中で生きているんですよね。だから、きっとどこかに「自分と重なる」と思える部分があるんじゃないかなと思います。誰か一人でもいいので、ぜひ心を寄せながら見ていただけたら、また違った角度で作品を楽しめると思います。

そして僕が演じるトルイで言うと、やはり家族思いなところが大きな魅力だと思っています。トルイが家族のためにどんな選択をしていくのか、そしてトルイが託した思いを受け取った人たちが、それをどう繋いでいくのかという部分にも、ぜひ注目していただけたらうれしいです。

TVアニメ『天幕のジャードゥーガル』 トルイ

■TVアニメ『天幕のジャードゥーガル』
テレビ朝日系全国24局ネット"IMAnimation"枠・BS朝日ほかにて好評放送中!

【スタッフ】
原作:トマトスープ『天幕のジャードゥーガル』(秋田書店「Souffle」連載)
総監督:山田尚子
監督:Abel Gongora
シリーズ構成:加藤還一
キャラクターデザイン・作画チーフ:吉田健一
演出チーフ:藤倉拓也
美術監督:樺澤侑里
色彩設計:今野成美
撮影監督:高橋直希
編集:廣瀬清志
音楽:日野浩志郎
音響監督:小沼則義
アニメーション制作:サイエンス SARU

【キャスト】
シタラ:関根明良
ドレゲネ:小清水亜美
ファーティマ:桑島法子
ムハンマド:齋藤 潤
オゴタイ:下野 紘
トルイ:鈴木崚汰
シラ:入野自由
チャガタイ:浪川大輔
ジュチ:野島健児
ソルコクタニ:久野美咲
モゲ:朝井彩加
キルギスタニ:新谷真弓
ボラクチン:くじら

●オープニングテーマ:SEKAI NO OWARI「Stella」
●エンディングテーマ:女王蜂「星」

(C)トマトスープ(秋田書店)/天幕のジャードゥーガル製作委員会

《米田果織》

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