ゲーマー姉妹を描いたマンガ「夢見る姉と壁になりたい妹」単行本発売記念インタビュー!「この作品で描きたかったのは姉妹の関係」 | アニメ!アニメ!

ゲーマー姉妹を描いたマンガ「夢見る姉と壁になりたい妹」単行本発売記念インタビュー!「この作品で描きたかったのは姉妹の関係」

書き下ろしストーリーなどを収録した漫画「夢見る姉と壁になりたい妹」の単行本リリースを記念して、作者の田澤類先生に直撃インタビューを実施しました。

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ゲムスパ連載漫画「夢見る姉と壁になりたい妹」単行本発売記念インタビュー―誕生から書き下ろしエピソードまでの裏話を作者に訊いた
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ゲームにハマった姉とそれを見守る妹の姿を描いた漫画「夢見る姉と壁になりたい妹」。2025年にGame*Sparkにて連載されていた本作ですが、2026年6月30日、書き下ろしストーリーなどを収録した単行本がリリースとなりました。

今回、単行本のリリースを記念して、作者の田澤類先生に直撃インタビューを実施。「夢見る姉と壁になりたい妹」の立ち上げから作品のコンセプトがどのように決まっていったか、単行本書き下ろしストーリーについての裏話などをお届けします。


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田澤先生インタビュー!「夢壁姉妹」はどのように生まれた?

――ようやく単行本になりましたが、企画の始まりについて教えてください。

田澤: 2024年の頭の方だったと思うのですが、確か「メガノクR(メガロポリス・ノックダウン・リローデッド)」が終わった直後で、何かしら次の連載企画を考えたいなと。担当編集との打ち合わせで、とりあえず繋ぎとして読み切りを1本描こう、みたいなのが始まりだった記憶があります。

――最初はeスポーツを舞台にした学校ものの企画もあがっていましたよね。

田澤: それも考えていましたね。連載用にしようとゲーム専門学校の人にお願いして取材まで行かせてもらったのですが、これ作るとしても時間がかかるな、と感じて。スポ根っぽいものとして作るのかとか、学校が舞台なのにあんまり変な設定で尖ったことも描けないなとか、ちょっと時間がかかりそうで...。とりあえず身近にあるものかつ、さっと描ける題材で、という形で「夢壁姉妹」のアイディアが生まれました。

当時、普段ハードコアなゲームをやらない若い女の子が『アーマード・コア6』をやっているんだけど、どうもイケメン風のキャラが人気なことが理由らしいというのを聞いて、ちょっと面白いなと思ったんです。「メガノク」でやっていたことって、すごく乱暴に言えば「女子高生におっさんの趣味をやらせる系」のコンテンツだと思うんです。キャンプとか麻雀とか、アニメでよく言われる、本来若い人がやらないようなコンテンツをかわいい女の子がやる、という。それとは少し違って、『アーマード・コア6』のようなハードコアなゲームを実際にやっている若い女性がいる、というのが興味深かったんです。

――この作品を作る上で他に参考にしたものはありましたか。

田澤: 例えばキャラクター造形で言うと、姉妹の苗字ですね。恋ヶ窪という名前なんですけど、僕の住んでいる国分寺に恋ヶ窪という地名があって、以前住んでいたこともあるんです。名前だけでちょっとキャッチーですし、「恋」が入っているから可愛いイメージがするというのと、地元感を入れたかったんです。

――「メガノク」も国分寺が主な舞台でしたね。

田澤: そうですね。ほぼ同じ地域です。一応同じユニバースという設定になっています。単なる使い回しとも言えるんですけど、たまにキャラクターが着ている服の柄とかも「メガノク」の登場人物が着ていたTシャツがそのまま出ていたり。

――読切版掲載後はポジティブな声だけでなく、いろいろな反応もありましたね。

田澤: ありましたね。特に夢女子という題材を扱ったことで、一部から強い反発もありました。自分としては長くオタク文化の中にいたので、そのあたりのリテラシーはあるつもりだったんです。むしろ前作の「メガノク」の方が内容としてはかなり攻めていたので、そちらの方を心配していました。でも今回は主人公も成人していますし、扱うゲームもそこまで過激なものではない。だから比較的安全な作品だろうと思っていたんです。ところが、自分が予想していなかった方向から反発が来た。そこについては、自分のリサーチ不足だった部分もあるのかなと思います。僕自身は嘘を書いたつもりも、悪意を持って描いたつもりもありませんでした。

ただ、この作品で描きたかったのは夢女子そのものというより、姉妹の関係だったんです。家族って、本来なら価値観の違う人間同士が一緒に暮らしているじゃないですか。友達とは違う、だから遠慮のない言い方もするし、理解できない部分もある。そういう感覚を描きたかったんです。オタク同士でも、自分と少し属性が違うだけで分かり合えないことがある。そういう部分と姉妹関係を重ねて描いていました。ただ結果として、女性オタクを否定的に描いているように受け取られてしまった部分はあったと思います。そこは自分の表現不足だったのかもしれません。

――連載化にあたって修正も行われたと聞きました。

田澤: 結構修正しました。とはいえ、作品の根幹を変えたわけではありません。一番大きかったのは、妹の姉に対する当たりの強さですね。言葉が強すぎる部分を少しマイルドにしました。

――そこから約1年後に連載が始まるわけですが、その間はどうされていましたか。

田澤: 基本的には描きためていましたね。編集部側で掲載タイミングを見ているので少し待ってほしい、みたいな話だったので、それならその間に進められるだけ進めておこうと思って。読み切りの後からずっと作業はしていました。ただ、締め切りがないぶん、多少時間をかけすぎて描いてしまっていた部分はあったかもしれません(笑)。

――連載になってからは毎話違うゲームが登場しますね。

田澤: そこは思った以上に大変でしたね。「メガノク」のときは、大きなゲームを一つ作ってしまえば、あとは小ネタとしてゲーム画面が少し出てくるくらいだったんです。でも今回は毎話ごとに新しいゲームを作らないといけない。しかも実在ゲームをそのまま出せるわけじゃないので、権利的に問題のない形に変換しなきゃいけないんです。パロディではあるんですけど、それでも思った以上に手間がかかりました。最初は「これならいくらでも描けるな」と思っていたんですけど、途中から「これは長く続けるのは大変だな」と思いましたね。一話ごとのコストがかなり高かったです。

――連載時のストーリー作りの方はどうでしたか。

田澤: そこは割とスムーズでした。基本的には自分自身や周りの人間のゲーム体験がベースになっています。実際にゲームを遊んでいて起きたこととか、印象的だった体験とか。そういうものを膨らませて話にしているので、そこはあまり苦労していません。「メガノク」のときもそうだったのですが、ゲーマーの生態を描くことは自分にとってはかなり自然にできるんですよね。

――姉妹の描き方についてはいかがでしょうか。

田澤: そこも比較的自然でした。僕自身は一人っ子なんですが、母方の実家が三姉妹だったんです。しかも一軒家で三家族が同居していました。母とその姉妹、それから従姉妹たちに囲まれて育ったので、子どもの頃から姉妹同士のやり取りをずっと見てきたんですよ。僕が一番年下だったので、家の中はほとんど女性ばかりでした。だから姉妹喧嘩もたくさん見ましたし、仲が良い姿も見てきた。兄弟姉妹って不思議だなと思うんです。友達とも違うし、夫婦とも違う。すごく仲が悪そうに見えるときもあるのに、結局ずっと一緒にいる。そういう関係性が面白くて。実は商業デビュー作も姉妹喧嘩の話だったんですよ。だからある意味では、自分の中でずっと描いているテーマなのかもしれません。

――今回の姉妹もかなり仲が良いですよね。

田澤: そうですね。基本的にはかなり仲の良い姉妹だと思っています。あの部屋も、もともとは姉が一人暮らしするために借りていた部屋なんです。そこへ後から妹が転がり込んできた。だから妹は自分の部屋もなくて、リビングで寝ているんですよ。普通だったら嫌がると思うんですけど、それを許している時点でかなり仲が良いですよね。

――姉妹のほかの家族については作中であまり描かれていませんね。

田澤: 回想で少しだけ出ていますけど、基本的には普通の核家族という設定です。彼女たちの実家は小平にあるので国分寺からもそれほど遠くないという設定です。実はこの作品の家族像については参考にしたご家庭があるんです。僕の身近にすごく仲の良い姉妹がいる家族がいて、両親もいて、お父さんも家事をするし、とても温かい家庭なんですよ。僕から見ると、ドラえもんとかクレヨンしんちゃんに出てくるような理想的な家族に見えるんです。でも実際には、そういう家庭にも親子の衝突や悩みがある。そこが面白いなと思っていて。恋ヶ窪姉妹の家族には、その雰囲気をかなり反映させています。

――姉の稀は1話のときまでゲームをやっていない人物として描かれています。そこはご自身とはかなり距離のあるキャラクター性だったのではないでしょうか。

田澤: そうですね。僕は小学校3年生くらいからずっとゲームが好きで、大人になってからもかなりの時間をゲームに費やしてきた人間です。正直なところ、ゲームをやらない人の感覚はあまり分かっていませんでした。だからそこは結構リサーチしました。YouTubeで映画や小説のレビューをしている高学歴の配信者の方がいるのですが、その人は親の英才教育で育てられて、ゲーム禁止の環境だったらしいんです。ゲームは別にやりたいとも思わないし、好きでもない。だけど、クラスの友達や仲のいい人たちがどんどんゲームばかりやるようになっていく。友達同士で集まると、みんなでゲームをする時間ばかりになる。それがすごく苦痛だったと言っていて。「もっと他に意義のあることをやればいいのに、なんでみんな家に集まってゲームをしているんだろう」と。自分は興味もないし経験もないから、コントローラーを渡されても全然楽しくないし、苦痛だったと。それは僕が育ってきた環境にはない感覚だったので新鮮でした。

僕自身も、小学校に入ってから2年間だけ親にゲームを禁止されていた時期がありました。家にはファミコンを置きません、みたいな感じで。親はどうにか子どもをゲームから遠ざけようとしたんでしょう。でも、途中で諦めて解禁されたんです。ただ、そのゲームができない間も、僕は友達の家に行って少しでもファミコンをやりたいと思っていましたし、禁止されたからこその飢餓感もあったと思います。そういう感覚を、なるべくお姉ちゃんには持たせるようにしました。

――ゲーム漫画を読む人も描く人も、基本的にはゲームが好きですよね。

田澤: そうなんですよね。特に連載していたGame*Sparkがハードコアゲーマー向けのニュースメディアだったので、その読者はゲームが好きじゃない人の気持ちって伝わりづらいかもしれないと思いました。「メガノク」の主人公の鋭美ちゃんは、小学生とはいえゲーム未経験だっただけで、すごく能動的にゲームが好きな主人公でした。あれは僕自身ともリンクできるんですけど、今回は違う。ずっとゲームをやらないまま、人格形成が終わるぐらいまで来てしまった人を描く。それはゲーム漫画として一つ新しい軸だったかもしれません。

――単行本では描き下ろしストーリーが2本収録されています。特に2本目はかなり衝撃的な内容になっていますが、どうしてあのような展開になったのでしょうか。

田澤: もともと本編の最終回で、お姉ちゃんが少し大変なことになるというか、妹とのこれまでの立ち位置がひっくり返るような出来事がありました。その流れを受けて描いた後日談となります。正直なところかなりエクストリームというか、ご都合主義っぽく見える展開に見えると思うんですが、実は今回のストーリーを描くにあたって直接的なモデルとなった姉妹が実際にいるんです。もともと生活様式や職業など、いろいろな部分を本作の参考にさせてもらっていたんですが、そのお姉さんが長年続けていた仕事を辞められたんです。その後、数年単位でニート生活をしていて、大丈夫かなと心配していたんですが、「再就職しないの?」と聞いたときに、「漫画を描こうかな」と急に言い出して。学生時代にイラストを描いていた程度の方だったので、正直、少し夢見がちな話だなと思っていたんですが、アラフォーになってから本当に漫画を描き始めて、しかも受賞歴もないのに商業連載を取ってしまったんですよ。漫画が現実に追い越されてしまったというか。ご都合主義に感じる人もいると思うんですが、現実がそうなってしまったのでしょうがないんです。

――最後に、読者へメッセージをお願いします。

田澤: まずは、連載時から単行本化までだいぶ時間が経ってしまったことについて申し訳なく思っています。短い作品ではあるんですけど、その分かなり高密度に、自分の好きなものや、「良いゲームとは何か」「良いプレイヤーとは何か」「豊かなゲーム体験とは何か」といったことに対する、自分なりの考えを詰め込んだつもりです。少し理屈っぽい話に感じる部分もあるかもしれませんが、読んだ方に、「なるほど、自分がこのゲームを好きだったのはこういうところかもしれない」とか、「自分がプレイし続けていた理由はこういう部分だったのかもしれない」と思ってもらえたら嬉しいですね。ゲームというのは単に勝ち負けや上達だけじゃなくて、その人の人生の中に残る体験になるものだと思っていますから。あとは、兄弟姉妹についての話ですね。僕自身は兄弟姉妹のいる人間ではないのですが、実際に兄弟姉妹がいて、家の中でいろいろぶつかりながら育った人たちにも、「確かにこういうところあるよね」と思って楽しんでいただけたらありがたいです。

――ありがとうございました。次回作にも期待しています!


「夢見る姉と壁になりたい妹」の単行本(電子版)は各電子書籍サービスにて販売中。価格は935円(税込)です。


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