中丸雄一が原作・キャラクターデザインを手がけたショートアニメ『地球大好き!きっくん』が、2026年7月よりTOKYO MX『5時に夢中!』内にて放送される。
本作は、中丸が約15年前から書き下ろした物語を映像化したショートアニメで、地球侵略を目的に遠い惑星から来た地球外生命体・きっくんの物語。あまりの居心地の良さに、本来の目的を忘れつつ逆に日本を好きになってしまった日本侵略班たちが、日本を、そして地球を守ろうとする姿が描かれる。
このたびアニメ!アニメ!では、中丸にインタビューを実施。すると、もともと絵本化を目標に描いていたという『きっくん』誕生の裏側や、コロナ禍に毎日更新していた4コマ漫画がアニメ化へとつながった経緯が明らかに。さらに、自ら主人公・きっくん役としてアフレコに挑戦した感想や、大塚明夫、杉田智和ら豪華声優陣との収録エピソード、そして作品に込めたこだわりなどを聞くことができた。
[撮影=藤田亜弓]
◆15年越しに実現したアニメ化 “落書き”から始まった『きっくん』の物語

――アニメ化という大きな展開を迎えましたが、15年前に描き下ろした当時はどのような目標を持って作品づくりをされていたのでしょうか?
中丸雄一(以下、中丸):アニメ化はまったく想定していませんでした。むしろ当時は「いつか絵本になったらいいな」という思いを持ちながら、担当編集の方と一緒に作品づくりをしていたんです。残念ながら絵本化は実現しなかったのですが、そうした夢を抱きながら描いていた作品が、15年の時を経てアニメという形で多くの方に届けられることになったのは、本当に感慨深いですね。
――アニメ化の話を聞いたときは、どのようなお気持ちに?
中丸驚きましたが、ただ、実はその前に少しだけ転機のようなものがあったんです。コロナ禍の時期に会社の公式SNSに毎日4コマ漫画を公開していたのですが、その中で初めてキャラクターにセリフを付けたり、物語の要素を具体的に描いたりする機会がありました。その頃から、この作品が漫画なのかアニメなのか、あるいは別の形なのかは分からないけれど、何か新しい展開につながる可能性があるのかもしれないと、うっすら感じるようになったんです。なので、アニメ化の話を聞いた時は驚きもありましたが「あの頃に蒔いた種がつながったのかな」という感覚もありましたね。

――そもそもこの物語はどんなきっかけから生まれたのでしょうか?
中丸もともとは、10年近く続けていたイラストの連載企画が出発点なんです。連載を始めた頃は、色もあまり使わず、少し不気味な雰囲気の絵ばかり描いていたんですよ(笑)。すると当時のマネージャーから「これだと親しみを持ってもらいにくいから、もう少しポップな方向にした方がいいんじゃないか」とアドバイスをもらって。そこでイラストの描き方や魅せ方を見直していく中で、現在の『きっくん』につながるキャラクタービジュアルが生まれました。その後、自分でも「このキャラクターはかわいいな」と思いながら描き続けるうちに「もし次の展開があるとしたら絵本かもしれない」と考えるようになって、作品づくりの目標も少しずつ絵本へと向かっていったんです。
一方で、もともと僕自身が都市伝説や少し不思議な話が好きなんですよね。今回のショートアニメにも、そういった少し不気味だったり不思議だったりする要素が入っています。そうした自分の好みと、キャラクターのかわいらしさが合わさって、この作品の世界観ができあがっていったのかなと思います。
――世界観がかなり独特なのは、中丸さんのその部分が大きく反映されているんですね。
中丸アニメ化に際して僕が携わっているのは、キャラクターデザインとストーリーの大まかな原案の部分だけなんですけどね。細かなセリフのやり取りや演出については監督が担当されているので、僕はまず「こういう設定にしたい」「こういう世界観を描きたい」というベースになるアイデアをお渡しして、それを監督が作品として成立する形にまとめてくださっています。なので、自分の中で描きたいものや少し変わった設定を投げて、それを監督のフィルターを通してより多くの方に楽しんでもらえる形にしていただいている感覚ですね。共同作業で作品が形になっていく面白さを感じています。
◆「都市伝説が大好き」中丸雄一が描く不思議な世界観

――キャラクターデザインにも携わられているということで、きっくんたちのビジュアルには、どんなこだわりを込めているのでしょうか?
中丸とにかくシンプルで覚えやすいものにしたいと思っていました。複雑なデザインというよりは、一度見たらすぐに認識できて、親しみを持ってもらえるようなキャラクターを意識して作りましたね。
――“地球侵略に来たはずなのに、日本や地球を好きになってしまう”という個々の設定もユニークです。この世界観にも、中丸さん自身の価値観や「好き」が反映されているのでしょうか?
中丸正直なところ、最初から明確なテーマや理由があったわけではないんです。もともとは自分が好きな絵を描いていった結果、自然とファンタジーっぽい世界観になっていって、「宇宙にいる子たち」というような、かなりざっくりした設定で描いていました。
ただ毎日4コマ漫画を描いていたときに、せっかくなら読んでくださる方が最新の情報も得られるものにしたいと思い、厚生労働省や海外の公的機関が発信する情報を確認しながら、その内容を4コマの中に取り入れていたんです。そうすると、もともとのUFOや宇宙人といったファンタジーな世界観と、現実の出来事が自然と混ざり合うようになっていきました。
そこで、自分が描いてきた宇宙人たちを現実世界に登場させるにはどうしたら面白いだろうと考えた結果、「地球を侵略しに来たけれど、いつの間にか日本や地球に馴染んでしまった」という今の設定にたどり着いたんです。振り返ってみると、そうした積み重ねの中で生まれた世界観だったのかなと思います。

――監督には「ベースになるアイデア」を渡して制作してもらっているとのことですが、何か「こうしてほしい」などの要望はお伝えしたのでしょうか?
中丸「都市伝説の要素は入れたい」という話はしましたね。都市伝説が本当に大好きで、実は5年くらい前から毎月「都市伝説オフ会」に参加しているんです(笑)。プライベートで集まって、みんなでいろいろな話をするんですけど、それくらい昔から興味があるジャンルなんです。なので、この作品でも僕の好きな都市伝説的な要素を、物語の邪魔にならない範囲で取り入れてほしいというお願いはしました。作品全体は親しみやすく楽しめる内容になっていますが、よく見ると少し不思議だったり、「もしかして?」と思えるような要素も散りばめられているので、そのあたりにも注目していただけたらうれしいですね。
――自身が考えた物語の中でキャラクターがアニメーションとなって動いているのを見ての感想もうかがえますか?
中丸本当に感動しました。今はタブレットで絵を描いていますが、このキャラクターたちが生まれた15年ほど前は完全にアナログだったんです。自分の机で鉛筆とサインペンを使って、消しては描いてを繰り返していました。いわば“落書きの延長線上”のようなところから始まったキャラクターなんですよね。それが今回、プロのアニメスタッフの皆さんの手によって動き、さらに一流の声優の皆さんに命を吹き込んでもらっている。その姿を見た時は、本当に不思議な感覚でしたし、長く続けてきてよかったなと思いました。
◆大塚明夫からの助言も!初挑戦のアフレコで感じたプロの凄さ

――主人公・きっくん役として声優にも挑戦されていますが、アフレコはいかがでしょうか?
中丸すごくワクワクしながら収録に臨んでいますが、僕は声優のお仕事の経験がそれほど多くないので……。最初はかなり緊張しましたね。現場は当然ながらプロの声優の皆さんが集まる環境ですし、収録のテンポも想像以上に早かったので、正直なところ途中は半ば混乱状態でした(笑)。それでも皆さん本当に経験豊富で、いろいろとアドバイスをしてくださったんです。僕がセリフのニュアンスを少し違う形で表現してしまった時も、その後の掛け合いの中で自然にフォローしてくださって。周りの皆さんに助けていただきながら、なんとか演じ切ることができました。本当にありがたかったですね。
――きっくんを演じるにあたって大切にしていることがあれば教えてください。
中丸作品に登場するキャラクターたちは、それぞれ個性が被らないように意識して作っています。その中できっくんは、比較的“普通”の立ち位置のキャラクターなんですよね。もちろん宇宙人ではあるんですけど(笑)、飛び抜けて変わったことをするタイプではありません。だからこそ、僕の中では周りのキャラクターたちを引き立てるような、フラットな存在でいることを大切にしています。きっくん自身が前に出るというよりは、個性豊かな仲間たちのやり取りを受け止めたり、つないだりする役割ですね。そういう意味で、作品全体のバランスを意識しながら演じていました。

――実際にアフレコを経験してみて、改めて感じた声優という仕事の難しさや凄さはありましたか?
中丸すごく感じましたね。アフレコって、まずテストをするんです。その時に初めて映像を見て「このキャラクターはこういう表情をしているんだ」「こういう動きをしているんだ」ということを把握するんですよ。つまり、初見の状態で一度演じることになるんです。その後に本番があるんですけど、僕の感覚だと「もう2~3回くらい練習した方がいいんじゃないかな」と思うんですよね(笑)。
でも、プロの声優の皆さんは違うんです。1回目で映像やキャラクターを把握して、その場で方向性を固める。そして本番では、もう完成形に近いお芝居をされているんですよ。そのスピード感には本当に驚きました。僕は「もう少し時間が欲しいな」と思いながらやっているのに、他の皆さんは短い時間の中で瞬時に判断して、その場で最適な表現を作り上げていく。その技術の高さは実際に現場に入ってみて初めて分かりましたね。
――先ほど「アドバイスをもらった」ともおっしゃっていましたが、どんなアドバイスをもらったのでしょうか?
中丸もぐら役の大塚明夫さんに「台本も見なきゃいけないし、映像も見なきゃいけないし、いつしゃべるのかも確認しなきゃいけないし……みんなどうやっているんですか?」と聞いてみたところ、「人それぞれだと思うけど」と前置きしつつ、台本でセリフは確認しているものの、映像も視界の中に入っているので、自分がしゃべるタイミングはわざわざ見なくても分かる、とおっしゃっていました。
さらに、キャラクターの表情や動きもテストの段階でしっかり確認して、本番ではそれを踏まえて演じているそうなんです。その話を聞いて、本当に驚きました。プロの皆さんは、そういった情報を同時に処理しながら自然に演技されているんですよね。実際に現場に入ってみて、その技術の高さを改めて実感しました。

――「声優陣が豪華すぎる!」と話題になっています。キャスティングには中丸さんの意見は反映されているのでしょうか?
中丸キャスティングについては、アニメ制作会社の皆さんと相談しながら進めました。僕の方からは「このキャラクターにはこういう声のイメージがあります」ということをお伝えして、それに合う方へオファーをお願いした形です。ただ、大塚明夫さんと杉田智和さんに関しては、少しだけ個人的な希望も入れさせてもらいました(笑)。
――それはどんな理由があって?
中丸僕は昔から『メタルギアソリッド』シリーズのゲームが大好きなんですよ。そこから大塚さんと杉田さんのお声にずっと憧れがあって。実は以前にラジオ番組でサプライズメッセージをいただいたことや、個人的なイベントで「このナレーションは大塚さんにお願いしたい」とオファーさせてもらったこともあるんです。なので勝手にではありますが「ご縁がある方」だと思っていて(笑)。今回もその延長線上でお願いさせていただきました。本当に贅沢なキャスト陣になったなと思っています。
――声がついて、ますますキャラクターが魅力的になったかと思います。生みの親なので全キャラに思い入れがあるかと思いますが、特にお気に入りのキャラクターがいたら教えていただきたいです。
中丸本当に難しい質問ですね……! おっしゃる通り、全員に思い入れがあるので。それでも一人挙げるなら「歯くん」でしょうか。奥歯の形をしたキャラクターなんですが、少し品があって、言い換えるとちょっと鼻につくくらい丁寧な言葉遣いをするキャラクターなんです(笑)。収録前に「この絶妙なキャラクター性をどう表現してもらえるんだろう」と楽しみにしていた部分があったんですが、実際に声が入ったら想像以上に魅力的で。収録の日に改めて「いいキャラクターになったな」と感じました。
あと、現場では名前の話でも盛り上がったんですよ。「歯くんって名前、すごくない?」って(笑)。その流れで「よく見たら奥歯の形ですよね」という話になって、「じゃあ今後は前歯のキャラクターや犬歯のキャラクターも出てくるんですか?」なんて話題になりまして。「確かに、新キャラとして歯の種類を増やすのもいいな」なんて思ったりもしましたね(笑)。
――ありがとうございます。最後に、放送を楽しみにしてる皆様にメッセージをお願いできますか?
中丸まず、そもそも『5時に夢中!』が本当に面白いんですよ(笑)。「名前は知っているけれど見たことはない」という方も多いと思うんですけど、一度騙されたと思って見てほしいですね。僕自身も初めて見た時はかなり衝撃を受けました。「これって放送禁止用語じゃなかったんだ!」みたいな新しい発見もありますし(笑)、生放送なので「今週は誰かが何かやらかすんじゃないか」という独特のスリルもあって、すごく面白いんです。
そのうえで『地球大好き!きっくん』を見ていただくと、ある意味“箸休め”のような感覚で楽しんでもらえると思います(笑)。『5時に夢中!』の刺激と、『地球大好き!きっくん』のゆるさや癒やしはかなり両極端なので、ぜひセットで楽しんでいただけたらうれしいです。
もちろん『地球大好き!きっくん』自体も、僕が15年以上温めてきたキャラクターや世界観が詰まった作品です。かわいらしいキャラクターたちのやり取りを楽しみながら、時折登場する都市伝説的な要素にも注目していただけたらと思います。気軽に見られるショートアニメなので、ぜひたくさんの方に楽しんでいただきたいですね。

◆『きっくんのちょい足し!』放送決定!
原作、キャラクターデザイン、さらには主人公きっくんの声優も務める中丸さんのコメント映像をアニメ本編とともにお届けします。
放送:7/2(木)スタート 毎週木曜日7:30~7:35
配信:7/2(木)7:35(放送終了後)~ TVerにて
◆『地球大好き!きっくん』放送情報

【放送局】TOKYO MX
【放送日時】7月1日より毎週水曜日『5時に夢中!』内で放送
【企画】きっくん製作委員会
【原作・キャラクターデザイン】中丸雄一
【アニメーション制作】勝鬨スタジオ
【監督】尾中たけし
【脚本】中丸雄一 尾中たけし
【音響制作】タトゥイーン・サウンド
【音響監督】サイトウユウ
【CAST】きっくん:中丸雄一、つんつん:南條愛乃、もぐら:大塚明夫、いか:杉田智和、歯くん:仲村宗悟、えだまめ:新田恵海そらまめ:田所あずさ
【主題歌】「防衛ライン(だいたい平和です)」まめぞう合唱団 (えだまめ CV:新田恵海 そらまめ CV:田所あずさ)
【作詞・作曲】中西ゆういちろう
(C)2026 中丸雄一/きっくん製作委員会









