「進撃の巨人」ワールドワイド・アフターパーティーは制作者が海外の熱気を実感できる場に | アニメ!アニメ!

「進撃の巨人」ワールドワイド・アフターパーティーは制作者が海外の熱気を実感できる場に

10年に渡って制作されたアニメ『進撃の巨人』が2023年11月、ついに完結した。このシリーズの完結は、日本だけでなく世界中で注目される出来事だった。

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(C)諫山創・講談社/「進撃の巨人」The Final Season製作委員会
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10年に渡って制作されたアニメ『進撃の巨人』が2023年11月、ついに完結した。このシリーズの完結は、日本だけでなく世界中で注目される出来事だった。

それを可視化したのは、10年間の想いを振り返る機会として開催された「TVアニメ放送完結記念『進撃の巨人』ワールドワイド・アフターパーティー(以下アフターパーティー)」だった。この企画はオンラインの特設打ち上げ会場にて、制作陣やキャストとともに完結を祝うアニメ史上初の「ファン参加型打ち上げ」と銘打ち、オープニングパーティーや、制作陣・キャストが出演する特別番組などを展開する企画だ。ファンも巻き込み打ち上げを3D空間で提供するのは、アニメ業界としては初めての試みだろう。また、それを日本から世界中のファンに向けて提供するという試みも画期的なことだった。

これは『進撃の巨人』が特に世界中で広く愛されていた作品だから実現できたことだろう。だが、このような姿勢は、今後ますますグローバルに展開していく必要があるアニメ業界全体にとって大きな一歩だったのではないか。

TVアニメ「進撃の巨人」公式サイト


■アニメ史上初ファン参加型打ち上げをメタバース空間で!?

『進撃の巨人』はこれまで一風変わったタイアップやユニークなグッズ展開などを積極的に行ってきたが、「アフターパーティー」はそうしたチャレンジの最たるものではないだろうか。

「アフターパーティー」は、特別なデバイスを必要とせず、ブラウザでアクセスできるようになっている。アクセスすると3D空間を自由に移動でき、他のユーザーと交流したり、録りおろしのボイスドラマや、スタッフ・キャストのインタビュー、様々な隠しコンテンツなどが用意されており、ユーザーは自分のペースで楽しむことができる。バーチャル空間ならではの楽しみが満載で、インタラクティブに交流できるという点で、単なる配信イベントとは異なる面白さを提供していた。

この施策のポイントは、打ち上げクルーズ船というコンセプトで3D空間をプロデュースし、アニメファンに対して新しい楽しみ方を提供していたことにある。これだけ盛大に作品の完結を祝うイベントは今までなかっただろうし、しかも、制作者たちと疑似的にとはいえ、同じ空間を共有できるのは、ファンにとって何よりの喜びだっただろう。

さらに、日本国内ファンだけに向けたものではないという点も特筆に値する。全てのコンテンツは英語に翻訳されていた。はじめから世界中のファンを巻き込むつもりで計画されたものなのだ。

『進撃の巨人』という作品の完結は、日本のマンガ・アニメファンだけが関心を持っていたわけではなく、世界中にこの傑作を祝福したい、作り手たちに感謝を伝えたいという想いを持っていた人がいたことを、改めて可視化するイベントとなった。

「アフターパーティー」は日本のピークタイム以外の時間でも常に盛り上がりを見せ、24時間活発な状態だった。日本のピークタイム以外にログインをすると、海外の進撃ファンが盛り上がっており世界で愛される『進撃の巨人』を直に感じられる。ユーザー同士のコミュニケーションも活発に行われており、SNSでハッシュタグを使いながら同じ時間を共有しイベントを楽しんだり、専用のDiscordサーバーを立てて、情報交換していたユーザーもいた。また、「アフターパーティー」の空間は広大なので、自発的にマップを作成して公開するユーザーもいたようだ。

日本の『進撃』ファンにとっても、この空間は新たな刺激になったのではないだろうか。海外のアニメファンと交流する機会はそう多くないだろうし、同じ作品を愛する人が世界にこれだけいるのかと実感することができただろう。

また、こうした盛り上がりは、ファン同士が喜びを分かち合うだけでなく、クリエイターの励みにもなっていたのではないだろうか。

アニメ制作者たちも、海外で日本のアニメが人気だということは情報としては知っているだろうが、その熱の深さや実際の拡がりを実感できる機会は限られている。海外のコンベンションなどにクリエイターが呼ばれる機会は増えているが、それに参加できるのはごく一部の人に限られる。今回、バーチャルでだれでもアクセスできる空間を用意し、世界中のファンが直接クリエイターへの感謝のメッセージを多く投稿したことで、制作者たちにとっても自分たちの仕事の影響力を実感しやすかっただろう。

SNSなどでこれまでも直接メッセージを送る手段自体は存在したのだが、諫山創先生や林祐一郎監督をはじめとした関係者のアバターがいることでより感謝を伝えたくなるような演出が行われた。実際に、海外のファンも含めこの作品のクリエイターに対する感謝の投稿メッセージがたくさん見られた。また、キャラクターごとに用意された部屋にはキャラクターに対するメッセージが集まり、ユーザーたちによって手向けられた花で壁一面が埋め尽くされるような盛り上がりを見せた。

■日本から直接海外ファンに届ける重要性

日本のアニメ自体はすでに配信サイトなどを通じて世界中に展開されている。しかし、その周辺情報や関連グッズまで世界展開が行き届いているわけではないのが現状だ。これまで日本の公式な権利ホルダーが直接、海外のファンに何かを届ける機会は少なかったが、今回、それを大がかりに展開したという点も画期的だった。

『進撃の巨人』は、すでに世界中にファンを抱えていたために今回の企画が実現できた部分も大きいだろうし、「アフターパーティー」という名の通り完結を皆で祝福するというコンセプトなので、新しいファンを獲得するという趣旨ではない。だが、日本から世界に自ら発信することで、これまで距離のあった日本の公式ホルダーや制作関係者を間近に感じられたっことに、海外のファンは歓びを感じていたのではないだろうか。

こうした取り組みは、日本アニメの人気をさらに広げていくためにも大切なことだろう。アニメのグローバル人気を後押しするためにも、自ら情報発信していくことは今後ますます重要になるだろう。今回の施策は、そうした先行例としても注目すべき事例だ。

『進撃の巨人』という傑作は、素晴らしい物語を残しただけでなく、これからのアニメ業界に必要なことも最後に示唆してくれたとも言える。そういう意味でもこの作品はアニメ業界の歴史的に重要な作品だったと言えるだろう。

(C)諫山創・講談社/「進撃の巨人」The Final Season製作委員会

《杉本穂高》
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