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2021年2月24日にスタートして以降、現在まで人気・注目を集め続けているゲーム『ウマ娘 プリティーダービー(ウマ娘)』。
8月24日には2.5周年に合わせてさまざまなアップデートや新要素が追加されますが、一番の目玉といえば新たな育成シナリオが搭載されることでしょう。
これまでも周年記念イベントに合わせて、「つなげ、照らせ、ひかれ。私たちのグランドライブ」「グランドマスターズ -継ぐ者達へ-」と新たな育成シナリオが実装されてきました。
今回の新シナリオは「Reach for the stars プロジェクトL'Arc」(以下、L'Arc編)と題されたもの。フランスにある歴史ある競馬レース・凱旋門賞を舞台にしており、これまでウマ娘/競馬どちらも知るファンから待望されていた「海外レース」にフォーカスを置いた内容となっています。
本記事では、新シナリオ公開に先駆けたメディア向け体験会でのプレイレポートをお届けします。
※記事中の画像は開発中のものであり、表記される数値などは実際に収録されるものと異なる可能性があります。
◆悲願の凱旋門制覇へ!特殊なレース目標と新たなトレーニングシステムを紹介
日本競馬にとって大きな夢である「凱旋門制覇」。その目標に向かって突き進む新キャラクターが登場するほか、さまざまなテクノロジーや知見をフル活用して凱旋門賞制覇を狙っていくのが、物語のキモとなります。
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そのため、このL'Arc編では育成ウマ娘それぞれに設定されていたレース目標はなく、凱旋門賞制覇に向けた特別なレース目標が設けられています。凱旋門賞に挑戦するチャンスはクラシック級とシニア級の2回のみ。それに向けてのトレーニングをしていくという流れです。
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非常に特徴的なのは2つ。まず、これまで7月・8月に開催されていた夏合宿が無くなり、凱旋門賞が開催される10月前半までの海外遠征という新たな形となっている点です。
その期間はフランスの地での特別トレーニングという形となり、前哨戦となるレースも含めてのスケジュールは合宿に代わる強化期間となります。
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もう一つ、本シナリオの最終目標は「凱旋門賞の制覇」。そのこともあり、シニア級10月前半に迎える凱旋門賞に挑戦した時点で本シナリオは終了となります。
その後に開催・出走できるはずの天皇賞秋・ジャパンカップ・有馬記念といった秋古馬レースや、JBCクラシックを中心としたダートレースには参加できません。この2点は十二分に注意すべきでしょう。
さて、これまで新シナリオ導入に合わせて新たなゲームシステムが導入されてきましたが、今回も新たなシナリオに合わせた「SSマッチ」「海外適性」という2つの要素が導入されています。
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凱旋門賞に向けたL'Arcプロジェクトの一員として練習をしていくということで、トレーニングでは通常通りのサポートカードに合わせ、他にもさまざまなウマ娘が加わります。
トレーニングの画面で、これまでのスピード/スタミナ/パワー/根性/賢さに加え、「SSマッチ」という項目が増えています。
サポートに入ったウマ娘には3段階のゲージがあり、それをフルで貯めると「SSマッチ」を行なうことができます。一度の「SSマッチ」で最大5人のウマ娘とマッチすることができ、ここではサポーターPt(シナリオ進行のためのポイント)が集められるほか、パラメータ上昇・スキルヒントの上昇・体力回復など、さまざまな効果が得られます。
なお、サポーターPtを集めると、トレーニング効果の上昇やトレーニングレベルアップといった効果が得られます。
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プレイした感触では、過去シナリオでいうアオハル杯編の「アオハル魂」のように、一定までゲージを貯めて「SSマッチ」でパラメータやスキルヒントをゲットしていく、といった流れでしょうか。
さらに、凱旋門賞といえばフランス、つまり海外の環境と競馬場のなかで戦うことになります。海外レース場で活躍するにはさまざまなデバフを払拭・克服し、強化していくことが重要になってきます。
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トレーニング/お出かけ/お休み/レースが並ぶ画面に、「海外適性」という項目が新たにあり、このなかには「フランス語力」「海外洋芝」「強心臓」など様々な適性が設けられています。
「SSマッチ」などで適性ポイントを集め、適性をゲットすることでデバフを解消したり新たにボーナスやトレーニング効果アップを狙っていったりするという形であり、現実の競馬で重要視される部分を意識した新しい要素といえます。
先に述べた海外遠征で特に適性Ptを集めることができ、ドンドンと海外適性を獲得していく必要があります。
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ほかにも多くの見どころがありました。
海外を舞台にしたレースということもあり、フランス・ロンシャン競馬場をモチーフにした海外競馬場が新たに制作されています。
ロンシャン競馬場の地形・外観、実際の凱旋門賞でカメラが競走馬を捉えている撮影アングル、レース中に流れるBGMもストリングスをふんだんに使った新楽曲、レース結果を伝えるテロップすらも海外仕様と、「海外競馬レース」「凱旋門賞」をかなり意識し、踏襲した内容になっています。
また7月初めから10月まで続く海外遠征のタームでは、トレーニング/休みで流れる映像は通常と違い、"フランス仕様"の映像となっています。
通常映像と違うということもあり、これまでとは違ったコミカルさ、かわいさ、カッコよさなどウマ娘の表情を見せてくれるわけですが、今回インサイドではミスターシービーを選んでプレイ。
超美形・モデル体型のミスターシービーがフランスの地で必死にトレーニングし、街中や川沿いで優雅に休む姿は、まさしく"美しい"の一言。各トレーナーさんも自分の推しのカッコいいorカワイイ姿を見て、より一層惚れ込むこと間違いないでしょう。
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もう一つ強調しておきたいのは、凱旋門賞で戦う海外馬の強さ。今回はライバル馬として新たなウマ娘が2人登場し、モブウマ娘もどこか海外らしいカジュアルなビジュアルの子が多いのですが、これまでのシナリオで戦ってきた日本馬よりも若干強めに設定されています。
新シナリオの先行体験会ということで若干勝手がわからなかったこともあり、最初の(クラシック級の)凱旋門賞では17位となってしまいました。
翌年の(シニア級の)凱旋門賞ではもちろん1位獲得。無事制覇しましたが、ちょっと気を抜いたトレーニングや海外適性取得をしていると、初年度クラシック級の時点で凱旋門賞制覇は難しいかもしれません。
もちろんシナリオ公開後には最適・最優のシナリオ攻略が進むはずですし、2年連続凱旋門賞制覇もできるはずです。
◆フィクションがリアルを、リアルがフィクションを それぞれに超えていくせめぎ合い
いちど『ウマ娘』や競馬から離れた話題を持ってきましょう。
日本人がメジャーリーグ・ベースボールに入り、ホームラン王を争う。それだけでなくサイ・ヤング賞を争い、投打の二刀流選手として活躍する。
中学生にしてプロ入りを果たしたあと、無敗で公式戦最多連勝を記録。各タイトルを次々と獲得し、史上最年少記録を現在でも更新し続ける。
アジア男子初のオリンピック金メダルを獲得したあと、史上初のジャンプコンビネーションを次々と成功。世界記録となるスコアを20回近く更新し、国際大会で優勝を総なめにする。
アジア人初の4団体統一王者となり、現在は4階級を制覇。史上2人目となる2階級での4団体統一を目指していく「日本ボクシング史上最高傑作」
大谷翔平、藤井総太、羽生結弦、井上尚弥。
彼らに共通するのはそのシーンの歴史上に名を残すプレイヤーであると同時に、フィクションすらも霞むレベルの圧倒的な実力をリアルで見せつけているという点にあります。
彼らのような存在は、30年から40年前であればまさに「漫画・アニメの住人」でしょう。海外の相手をも圧倒してしまう清々しい姿は、まさに夢の中にいる存在だといわれていたはず。
ですが時代は変わります。彼らは2023年現在、実際に我々の目の前で活躍する、生きた人間です。そして彼らのような存在が活躍を続けることで、創作作品のハードルは一気にギュンとあがりました。
「現実にいる彼らをも乗り越えていくフィクションや夢とは何だろうか?どう描くべきなのか?」
2023年における創作者・クリエイター・ストーリーライターは、このハードルと常に向き合う必要があります。特に野球・スケート・将棋・ボクシング、もしかすれば他のシーンでもこういった問題が生まれているかもしれません。
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日本競馬において「凱旋門賞制覇」は、1970年代から現在まで続く宿願と目されています。現在では遠征費用と獲得賞金の収支や遠征レース出走後の反動なども踏まえ、「凱旋門賞制覇は決して至上命題ではない」と冷静に考える競馬ファンも多くいます。
そんな声もあがるなか、アメリカやドバイの地で近年結果を残している競走馬がいるのも事実です。
日本・アメリカ・中東・ヨーロッパで芝やレース環境に大きな違いがあるとはいえども、やはり期待してしまう日本馬による海外レース制覇。特にそれがヨーロッパ戦線で、しかも凱旋門賞であれば…そんな期待がフツフツと持ち上がってくるのは無理もないでしょう。
さて、『ウマ娘』は競馬をモチーフにした作品であり、そのシナリオに現実の競馬からのオマージュや影響をうまく表現しようと試みています。
今年2月24日に実装されたツインターボの育成ストーリーでは、「ツインターボを思い起こさせる大逃げ」をするウマ娘を、後ろから差しきろうとするウマ娘が描かれます。そんな2人を応援するのは、ツインターボとキタサンブラックの2人。競馬ファンならばたまらない、非常に粋な演出を見せてくれました。
そんな『ウマ娘』が2023年8月24日に「凱旋門賞」にまつわるシナリオをスタートさせます。リアルとフィクションの狭間で起こっているちょっとした困難やせめぎ合いを、エンタメとして昇華するかのような質感を筆者は感じます。
詳細は省きますが、このシナリオに登場するさまざまな登場人物やウマ娘の言葉から浮き彫られるのは、スピードシンボリの出馬から始まり40年以上に渡って続いてきた「凱旋門賞制覇」に向けた、あまりにも強すぎる宿願の念です。
これまでの育成シナリオはあくまでフィクション性の強い舞台設定がベースになっていましたが、今回のシナリオは現実にあるレースとそれに絡んだ歴史・知見がベースとなっており、今までの『ウマ娘』では感じることの少なかったゴツゴツとしたリアリティが確かに感じ取れるのです。
『ウマ娘』のなかで凱旋門賞を制覇したあとのエピローグは、今までよりも力強いパッションと決意を伴ったものとなっています。ぜひそのエンディングを堪能してほしいところです。
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