エンタメ社会学者中山淳雄が語る、中国アニメ『Re:STARS』日本展開に見る逆輸入現象の面白さ | アニメ!アニメ!

エンタメ社会学者中山淳雄が語る、中国アニメ『Re:STARS』日本展開に見る逆輸入現象の面白さ

中国発のアニメ『Re:STARS』が、劇場版『Re:STARS ~未来へ繋ぐ2つのきらぼし~』として今夏、日本語吹き替え版にて劇場で公開される。

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  • 劇場版『Re:STARS ~未来へ繋ぐ2つのきらぼし~』キービジュアル(C)BEIJING IQIYI SCIENCE & TECHNOLOGY CO., LTD.(C)TEAM JOY/Bushiroad Move/TMS
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中国発のアニメ『Re:STARS』が、劇場版『Re:STARS ~未来へ繋ぐ2つのきらぼし~』として今夏、日本語吹き替え版にて劇場で公開される。

本作は、中国の動画配信サイト「iQIYI(アイチーイー)」のマンガ配信アプリで配信された作品を原作にした作品で、原作の閲覧回数は52億回を超える人気を誇る。2019年に中国でアニメ化、2023年に日本で中国語音声版がBS日テレで放送され、この度日本語吹替版が劇場版作品として、すとぷりの莉犬と声優の三森すずこを主役に迎えて公開となる。

近年、ゲームを筆頭として中国をはじめアジア発の二次元コンテンツが日本国内でも話題になるケースが増えてきた。この潮流の中で中国発のアニメの日本展開の展望や、『Re:STARS』などの作品に対する位置づけを、エンタメ社会学者でコンテンツビジネスに詳しい中山淳雄先生に聞いた。

[取材・文:杉本穂高 撮影:吉野庫之介]

アジア中に浸透する日本アニメの想像力

――『Re:STARS』は、原作もアニメーションも中国製です。近年、中国の二次元コンテンツは大きく成長しており、例えば『原神』などの中国ゲームは日本国内で多くのファンを獲得しています。この傾向に関して中山先生はどうお考えでしょうか。

中山:これは「Z世代」がキーワードになると思います。この世代は中国や韓国に対してマイナスのイメージもプラスのイメージも持っておらず、すごくニュートラルで純粋に面白いものは受け入れるようになっています。ゲームでは『荒野行動』(2017年)あたりから中国ゲームが浸透していき、今『原神』(2020年)や韓国発テンセントリリースの『勝利の女神:NIKKE』(2022年)が大ヒットしています。TikTokも若い世代は当たり前のように使っていますよね。

こうした動きは70年代のアメリカと日本の関係に似ているなと思います。当時のアメリカ人は日本に対してやはり抵抗感を持っていた人が多かったですけど、若い世代は良いものは良いと日本のソニー製品、パナソニック製品を違和感なく受け入れていきました。そうしたことが今、日本とアジア各国をめぐって起きているのだと思います。

――『Re:STARS』は中国アニメですが、日本的なアニメーションスタイルを用いて制作されています。双子の男女逆転やそれに伴う中性的な魅力というものは、日本の漫画やアニメによく見られるものですね。

中山:そうですね。江口寿史さんの『ストップ!!ひばりくん!』は ”男の娘(おとこのこ)”を描いた先駆け的な作品ですが、こうした作品が登場したのが80年代です。『Re:STARS』にはそういう日本が元気だった時代のアニメの匂いというか、日本らしい文化を感じますね。

――男女が入れ替わるアイディアには『らんま1/2』っぽさも感じますね。これも80年代の作品です。

中山:本作はわりとドタバタコメディのタッチがありますが、こうした明るい作品は日本の80年代みたいな前向きにドライブしている時代に集中する傾向があるんでしょうね。

本作はアニメーションの表現的にもマンガ的な誇張や大袈裟な表現など、80年代から90年代の日本アニメにあったような懐かしさが全体に感じられます。ただ、懐かしさとともにテーマとしては新しい面もあるように感じます。

――どんな点で新しいでしょうか。

中山:ユニセックスの物語と言えますし、”男の娘” 的なものを描いています。公式にはゲイの物語が厳しく禁止されている中国からこういった作品が出てくるというのは興味深いですね。

先日BL研究のためにタイに行ってきたのですが、現地では『魔道祖師』など中国のBL小説が日本のBLマンガ以上に輸入されているんです。BLの規制が厳しいはずの中国でそういった物語が非公式にたくさん生みだされていて、国内というよりASEANの市場を当てにして発展している。この作品も ”男の娘” 的なイメージを売りにした物語を、そうしたユニセックス物語ではアジアの先端にあった日本市場に逆輸入するようになる、という事象自体がとても面白いことだと思います。

――そうした日本から生まれた想像力が広くアジアで受け入れられている現状があるんですね。

中山:そうですね。先述の『原神』『NIKKE』も、日本の作品をジャブジャブに浴びて日本の作品で育った人たちが作っているんですよね。そうした人たちが今、アジアのクリエイションのハブになっているんだと思います。『Re:STARS』を創った方たちも、おそらく同様に1980~90年代の日本のアニメ作品にたっぷり浸かって育ってきた人なんだろうと思います。

本来、中国のアニメ市場は3DCGの方が圧倒的に強くて、こうした手描きのアニメはニッチ市場に分類されるんです。規制の面も含め、こういった作品を成立させるのは針の穴を通すような難しさがあるのではないかと思います。

――逆に、日本にはない中国独自の味を感じる部分はありますか。

中山:結構随所に感じます。主人公が女の子たちに追いかけられるシーンとかコミカルな表現に中国っぽさを感じます。笑いのセンスが日本とは異なると感じます。笑いは一番文脈に依存するものなので、そうした意味では懐かしさとともに意外さもある作品です。

ローカライズの豪華な布陣

――本作のローカライズという点ではいかがですか。

中山:作品のサイズ感に対して、すごく豪華な布陣だなと思います。三森すずこさんや堀江由衣さん、上坂すみれさん、岡本信彦さんなど一線級の声優さんに加えて、すとぷりの莉犬さんを起用したことに驚きました。すとぷりさんはあまり他社とコラボしてこなかったので、大物のアサインでこの作品への注目度が一気に高まったのではないでしょうか。

――莉犬さんの中性的な魅力が作品にマッチしていますね。

中山:はい。本作はアイドルものでもあるからそういう意味でもハマっています。今、Z世代をターゲットとしたアイドルで、すとぷりさんは一強と言ってもいいぐらいの存在になっていますし、必然性のあるキャスティングだと思います。

――劇場版『Re:STARS ~未来へ繋ぐ2つのきらぼし~』では、主題歌をすとぷりさんが手掛けることが発表されました。楽曲の印象はいかがですか。

中山:全体曲はまさにすとぷりさんらしい曲ですね。いわゆるアイドル楽曲で、本作の内容ともマッチしたものになっていると思います。

双子の主人公が入れ替わりを経験して、自分の人生を再び歩みだすという物語の内容を総括するような曲で、作品世界に合わせた劇中曲を用意するのもメディアミックスをきちんとしているし、日本向けにローカライズするという点でも大事な要素だと思います。

劇場版『Re:STARS ~未来へ繋ぐ2つのきらぼし~』キービジュアル

――最後に、こうした作品が日本でも紹介されるようになってきて、アジアのコンテンツをニュートラルに受け止める世代も出てきました。こうした傾向が増えていくことで、今後、アジアの二次元カルチャーはどう発展していくでしょうか。

中山:7月からは、中国国内で大きな国民的人気を誇る『フェ~レンザイ -神さまの日常-』という作品も放送されると聞きましたし、アニメでもゲームのように大ヒット作が生まれるかもしれません。もしそういう作品が後々出てくるとしても、そこに至る積み重ねがあるわけですから、こういう作品が作る流れはとても大事なんだと思います。

日本アニメの市場はすでに国内より海外の方が大きくなっています。家庭用ゲーム機の市場は海外が8割、国内2割程度の割合ですから、日本アニメ市場もゲームのようにまだまだ伸びる可能性があると思います。

そんな中、『Re:STARS』という中国のコンテンツを日本に持ってきてブームを作ろうとしている、この動きは先鋭的だと思います。よくぞ挑戦しているなという感じで、両国をつなぐ文化を作ろうとしているのかなと興味深く見ています。

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■締切:2023年7月31日(月)23時59分まで

■応募方法
アニメ『Re:STARS』公式のTwitterアカウント(@restars_PR)&「アニメ!アニメ!」のTwitterアカウント(@AnimeAnime_jp)をフォローし、下記対象のツイートをRT

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《杉本穂高》
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