声優・アーティストの永塚拓馬さんが2枚目のミニアルバム『Jewel』を11月9日にリリース。本アルバムには、リード曲の「Tears Jewel」ほか、ダンス&ボーカルユニット・MADKIDのLINさんが作詞を手掛けた「Shooting star」、自身が作詞を担当した「風と花」など、全5曲が収録される。今回は永塚さんにアルバム全楽曲のことに加えて、エンタメを届けるひとりの人間として「中途半端にしない」という考え方などについてもお話を聞いた。
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[取材・文:M.TOKU]
病弱だった幼少期に強く残った言葉
――アーティストデビューしてから、気が付けば1年が経ちましたね。
役者としてもアーティストとしても、この1年は自分自身と向き合う時間が多かった気がします。ライブや朗読劇など外で活動することもありましたが、防音室にこもって自分の表現を考える時間のほうが長かったですね。
――デビュー後、周りからは何か言われましたか? 例えば友達や家族の反応は。
友達からは特に何も言われなかったです(笑)。姉からは「すごいね」と言ってもらえました。デビューしてからの周りからの反響といえば、それくらいだったかもしれません。
――なるほど。ソロアーティストとして歌ううえで、声優仲間に相談などはされましたか?
あまりしていないですね。芝居に関して先輩に聞くことはありますが、同期や後輩に相談することはあんまりないかも。彼らと僕の立場はだいたい同じですからね。
――同じ目線に立っている仲間に相談するのは、ちょっと変というか。
そうなんですよね。同じ目線で同じような悩みを抱えている仲間なので。
――1年の活動を経て、2ndミニアルバム『Jewel』がリリースされます。全5曲が収録されていますが、曲を決める際、ご自身からリクエストなどはされましたか。
今回に関しては僕が歌いたい曲ではなく、僕にどういう曲を歌ってほしいのか知りたくて、レーベルさんに曲をご提案いただきました。僕が選んだ曲は、「Tears Jewel」くらいだったと思います。
――それぞれの楽曲についてお話を聞かせてください。まずは先ほどお話のあった「Tears Jewel」から。
前回リリースしたアルバムはアーティスト色強めの曲が多かったので、今回はアイドルっぽい曲をやってもいいかなと思い、選んだ曲です。少し疲れたとき、泣きそうになったときに聞いて元気を出して欲しいという思いを込めて歌っています。この曲が持っている透明感や、爽やかさが気に入っていますね。
――初回限定盤には本曲のMVが収録されたDVDが同梱します。こちらはどのような内容に仕上がっていますか。
前回のMVは大きい倉庫で暗い中での撮影だったのですが、今回はキラキラの宝石のようなものが散りばめられた白いスタジオで撮影しました。前回とはイメージが異なる、明るいMVに仕上がっていると思います。
――MV撮影は歌や芝居とは異なる表現方法になると思いますが、難しさは感じましたか?
カメラに向かって芝居をする経験があんまりないので、やはり難しさは感じました。あんまり迫真の芝居をしても……なんて悩みながらの撮影ではありましたが、楽しかったですね。
――続いては「風と花」。こちらはご自身が作詞された一曲です。以前にSNSで、作詞に挑戦して、もしかしたらアルバムに収録されるかもとおっしゃっていましたが、それがこの曲?
そうですね。この曲、実は病弱だった幼少期に強く残った言葉から感じた思いを形にしたんです。小さいころ、入院していた友達がよく「風と花になりたい」と言っていて。この曲はある種、死生観にもかかわっているのかも。聞く方によって感じ方が異なる曲になった気がします。ある人は希望だと思っても、別の方は絶望だと感じるかもしれない。そんな詞になっていると思います。
――ご自身の経験や考え方が詞にも反映されている。
はい。僕は曲を聞いているとき「このアーティストさんは何を考えているのか」と知りたいタイプなんですよね。なので、自分が作詞した曲は自分のアイデンティティや価値観みたいなものを入れたほうがいいのかなと思って。この曲に関しては自分の考え方などを入れていますね。
――提供曲はいかがですか? 自分自身を入れたり、自分の経験と歌詞のストーリーを比べたりしながら歌うことは?
自分を入れたり、比べたりすることはあまりないですね。その曲がどういう曲なのかを考えて歌っています。芝居でもそうですね。芝居をするのは僕だけれど、そのキャラクターの世界に永塚は存在していない、してはいけないんです。
――むしろ、自分を出さないようにしている?
そうですね。いても邪魔でしかないんじゃないかな。僕を主人公にした作品や自分の思いを形にしたものであれば、自分を出してもいいとは思いますが。
――コンテンツによっては、キャラクターとしてステージに立ち、歌って踊ることもあります。そのときも極力自分は出さないようにしている。
はい。かわいいキャラクターのときはかわいく、かっこいいならかっこよく、女の子っぽいキャラクターなら女の子っぽくなど考えてステージに立っています。僕自身のアイデンティティはあんまり関係ないですね。見た目は僕かもしれませんが、お客さんはその奥にある概念を見たいと思うんです。作品のライブは僕のライブではないので、世界観を壊してはいけないんですよ。
対価分以上のものを届けないと意味がない
――引き続き、アルバム収録曲についてお話を聞かせてください。3曲目は「終電間際、未だ返事はない」。
音のノリ方やピアノの使い方など、サウンド面が今っぽい曲です。アーティストって、その時代に合った曲を取り入れるのも大事な気がするんですよ。もちろん、それぞれの世界観やアーティスト性もすごく大切です。レトロな曲を歌うのがダメってわけではありません。ただ、それはあえてやるからいいのであって。そういう意味で、こういう曲を歌う意義があると感じました。
ーーその音楽を聴くと、当時の記憶がよみがえる、ということもあります。そういう意味でも時代に即した曲を残すのは、意義があるかもしれないですね。
そうですね。
――続いて「Shooting star」。
すごくかっこいい曲です。キャラクターソングでは求められないようなギミックが入っているので、アーティストとして歌うならではの曲に仕上がっている気がします。この曲は、MADKIDのLINさんに詞を書いていただきました。1stアルバムのときにMADKIDさんに振付を担当していただき、そのご縁もあって今回、提供していただくことが叶ったんです。僕をイメージして作ってくれた曲とのことなので、その化学反応も面白いなと思いました。
――実際に詞を見て、どう感じましたか。
明るい太陽よりも、やっぱり僕は「夜の黙(しじま)」というイメージなんだろうなと(笑)。一人称が「俺」じゃないところも僕らしいですよね。
――アルバムを締めくくる曲は「エール」。
「Tears Jewel」が青色だとしたら、「エール」は黄色。さらに明るくて、かわいらしい曲です。楽しい気分になれる楽曲ですね。
――レコーディングはいかがでしたか?
作曲してくださった松坂康司さんから「自分が持っているイメージとはまた違った表現をしてくれたので、面白かった」という言葉をいただきました。それが個人的にはうれしかったです。
――ライブでも盛り上がりそうな曲ですよね。
そうですね。お客さんと一緒に手を振って盛り上がれそうです。
――今後の目標を教えてください。
11月20日にファーストイベントがあるので、今はそれに向けて動いています。ミニライブで何曲か楽曲を披露する予定なので、クオリティをさらに高めていきたいですね。パフォーマンス面では、ダンスのスキルをもっと上げたいです。ダンス曲がきたときに、しっかりと対応できるように爪を研いでおきたいです。
――本日は色々とお話ありがとうございました。最後に、エンターテインメントを届ける一人の人間として、永塚さんが心がけていることを教えてください。
中途半端にしないということは常に考えています。芝居も半端にするのではなくて思い切りやる。歌のパフォーマンスも中途半端にやるよりしっかりと取り組んだほうが伝わるものがあると思いますし、僕自身もそちらのほうが面白いので。趣味としてやっているのなら適度に息抜きしながらやってもいいとは思いますが、お客さんにお金や時間などを割いていただいている訳なので、もらっている以上はしっかりとやらなければいけないという思いで活動しています。
――対価分のパフォーマンスはしなければいけない。
そうですね。対価分以上のものを届けないと意味がないというか。これは自分へのプレッシャーにもなりますが、エンターテインメントを仕事として生きているのでそこは頑張らないと、という思いはあります。だから、アーティスト活動をはじめたからといって声優活動が疎かになるは絶対に嫌です。声優業をきちっとやったうえで、アーティスト活動もしていきたいです。その分、ほかのところはもうちゃらんぽらんでもいいかなって(笑)。そういう気持ちで、これからもエンタメを届けていきたいと思っています。
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永塚拓馬2ndミニアルバム『Jewel』リリース情報
発売日:11月9日 ※発売中
【初回限定盤】CD+DVD
3,740円(税込)
【通常盤】CD
2,750円(税込)
【CD収録内容】
1.Tears Jewel
2.風と花
3.終電間際、未だ返事はない
4.Shooting star
5.エール
【DVD収録内容】
「Tears Jewel」ミュージックビデオ+メイキング映像