東山奈央と安野希世乃によるスペシャルユニット・ぽかぽかイオンインタビュー「型にハマらない、とても自由なユニット」 | アニメ!アニメ!

東山奈央と安野希世乃によるスペシャルユニット・ぽかぽかイオンインタビュー「型にハマらない、とても自由なユニット」

声優・歌手の東山奈央と安野希世乃によるスペシャルユニット・ぽかぽかイオンにインタビュー。

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  • 「やじるし→」アニメ通常盤ジャケット写真 (C)うちのまいこ・芳文社/スローループ製作委員会

 アニメやゲームの主題歌、テーマソングなどを歌うアーティストに楽曲について語ってもらう雑誌「メガミマガジン」のインタビュー企画「Megami’sVoice」。2022年4月号には、声優・歌手の東山奈央と安野希世乃によるスペシャルユニット・ぽかぽかイオンが登場。本稿では、本誌で紹介できなかった部分も含めたロングインタビューをお届けする。


爽やかなハーモニーの『スローループ』OP

――まずは、正式にユニットを組むことが決まった感想を教えてください。
安野
 ぽかぽかイオンを正式なユニットにしたいとお話があって、「本当にいいんですか?」という気持ちでした。

東山 ぽかぽかイオンって、とある番組での共演をきっかけに意気投合して、私たちが勝手に名乗っているユニットだったんです。だから、お話があったときは夢見心地でした。そこから、メンバーカラーを決めたり、ロゴを考えたりするうちに実感がわいてきました。

――1stシングルの表題曲で、テレビアニメ『スローループ』のOPである「やじるし→」の曲の印象は?
東山
 心が開いていくような気持ちのいいサウンドで、始まりを感じさせる楽曲だなと思いました。

安野 背中を押してくれるようでいて、前へと導いてくれるような楽曲でもあるんです。管楽器が鳴り響くところでは、「がんばれ!」と応援してもらっているようでもあり、それが家族として新しい絆を紡いでいく(海凪【みなぎ】)ひよりちゃんと小春【こはる】ちゃんにエールを送っているようにも感じられて、とてもやさしい曲だなと思いました。

――レコーディングをしてみての感想を教えてください。
東山
 日ごろから、希世乃さんとは波長が合うと思っていたので、歌声も絶対に合うんだろうなと思いつつも、実際のところやいかにというのはありました。でも実際に重ね合わせてみると、想像以上にフィットしていました。

安野 自分たちも、ここまで聞き心地がいいものになると思わなかったんですよ。

東山 ずっと聞いていたくなるよね。

安野 うん。お風呂に入ったときとか、朝起きたときに聞きたくなるよね。

――「やじるし→」の個人的なお気に入りのポイントは?
東山
 まだまだ素敵な未来が待っていると感じさせてくれる、サビの歌詞がすごく好きなんです。作品的にももちろんですが、自称ユニットだった私たちがついに公式になって、私たちにもそんな未来が待っているだろうなと感じられて。活動にリンクしているようでもあり、とてもお気に入りです。

安野 私もサビですが、追いかけっこのように始まって、だんだんと重なっていく歌声が好きで、それを経て2人の声が揃う瞬間がすごく気持ちいいです。先日、『リスアニ!LIVE2022』のステージで生歌を初披露したのですが、サビの「心のやじるし」で顔を見合わせる振り付けにしようと相談して決めたのですが、本当に自然にそうしたくなる気持ちがステージ上で生まれてきました。

――ぽかぽか盤に同梱のDVDには、「やじるし→」のミュージックビデオ(MV)が収録されますね。
安野
 富士山がよく見える高原で撮影しました。滝つぼの前にシートを敷いてこたつを置いて、ドローンを試すなど、いろいろな形で撮影をしたんですが、普通に観光客の方もいたんです。

東山 「これは何のロケ?」みたいな顔をされたよね(笑)。

安野 お子さんにも面白がられたよね。

東山 スタッフさんが、撮影に使うこたつをあちこち運んでくださったんですが、その姿がすごくシュールでした。私たちは私たちで、2人分繋がったワンピースを着ていたので、単独行動ができなくて。どこに行くにも、裾を一緒に持ってくっついて移動していたのが面白くて。

安野 うん、楽しかった。

――MVの注目ポイントは?

東山 MVのなかにたくさんのやじるしが出てくるところです。隠れやじるしもいっぱいあるんですよ。

安野 一時停止しながらじゃないと見つけられないのもあるよね。

東山 意地悪なやじるしがありますよね。私、種明かしされたときに叫んだんですよ。

安野 教えてもらって最初に見たときは、奈央ちゃん気づかなかったもんね。

東山 そうそう。「ないない!」って言っていて。いつか答え合わせもしたいと思っているので、ぜひチェックしてください。

――ジャケットは、ポップでかわいいですよね。
安野
 じつは、私たちの手書きの文字が採用されているんです。しかも、たとえば「や」が私で「じ」が奈央ちゃん、みたいにバラバラに使われていて。

東山 「やじるし→」は全部希世乃さんじゃないの? 私、あんなにかわいい字書けない。

安野 違うの。確かによく見てみると、私の字じゃないのがあるの。

東山 そうなんだ! 手書き文字ってぬくもりがあっていいですよね。

――各曲のレコーディングは、どちらが先だったんですか?
東山
 「手紙の塔」以外は私が先でした。ぽかぽかイオンとしての最初のレコーディングは「僕の宝物」で、それも私が先だったんですが、ぽかぽかイオンの音楽の質感のようなものを私が決めるのか……みたいな感覚はありました。希世乃さんだったらこう歌うかなとイメージしつつ、何回もテイクを重ねて、どんどんクリアになっていく感じもありましたね。最終的には、ピタリと音がハマった気持ちです。

――安野さんの声の入った曲を聞いてみた感想は?
東山
 希世乃さんらしい歌の運び方や、豊かな表現が付けられていて、楽曲の持つまだ知らなかった魅力にいっぱい気付けました。

安野 私は奈央ちゃんが先に歌ってくれたから、助かったことがすごくたくさんあるんです。奈央ちゃんは、楽曲の持つものを汲み取る能力がすごく高いので、あとから歌う私としてはとても心強くて。とくに、「まわりみち」という楽曲でそれを感じました。私は奈央ちゃんの歌の跳ね感がすごく好きなんですが、きっと私が先に「まわりみち」をレコーディングしていたら、こんなにウキウキとした曲にならなかったと思うんです。逆に、私が先に歌うことになった「手紙の塔」では、迷いがありました。

東山 私も、先に録った3曲は迷いがあったよ。メロディも歌詞も決まってはいるけど、私はそれをどのくらいの握力で握ればいいのかなって。

安野 握りしめる感じ。

東山 そっとね。ユニットとして歌うことをどう表現したらいいかなって考えていて、いま握力というワードがしっくりきたんですが、全力で握っていいのかふわっとしたほうがいいのかをレコーディングでは考えていて、頭のなかの希世乃さんと相談しました。あと、リアルの希世乃さんにも相談しました。

安野 「僕の宝物」のときだったよね。レコーディング前日に「希世乃さん、どうやって歌う?」って連絡をくれたので、スマートフォンで歌を録って送ったんです。その雰囲気も汲み取ってくれて。奈央ちゃんのぽかぽかイオンへの思いや、2人で心を合わせて表現したいんだという思いが感じられて、感激して泣きそうになりました。


困りたい! 困らせてほしい!

――これまでも話に出てきましたが、全部で3曲制作されたカップリング曲についてもそれぞれ教えてください。
東山
 「僕の宝物」は、ひと言で言うなら「王道ハッピーソング」です。

安野 ひと言なら「ひとつになろう」がテーマかな。

東山 2人の歌声がずっと重なっているから「ひとつになろう」感は強いね。

安野 すごく求め合っている感じがするよね。求めて、心の底から手を伸ばし合っているような曲です。

東山 掛け合いもたくさんあるんですよ。

安野 惹かれ合う引力の強さを感じます。

東山 「手紙の塔」は、「さあ、私は誰でしょう」という感じ。2人で歌っているんですが、曲の主人公である人物が、心を寄せている相手がいるのか、自分と対話をしているのか、輪郭をぼかして文学的に歌詞が紡がれているので、いろんな解釈ができる曲です。

安野 私的には「鏡」かな。鏡のなかの自分と対話しているようでもあり、合わせ鏡で永遠に続いていくようなイメージでもあり……。現在、過去、未来、いろんな瞬間に心が飛ぶような、不思議な曲になっています。

東山 郷愁を誘うようなサウンドも魅力的だよね。ちょっと大人っぽい感じがする。

安野 ほかの3曲と比べると、カラーが違うんだよね。試行錯誤しながら歌った結果、ここまでアダルトに表現していいんだと、新境地が感じられる曲になりました。

東山 この曲は、アーティスティックなニュアンスの付け方を求められそうだなと思ったんですね。私の得意分野ではなかったんですけど、希世乃さんはすごく上手で。でも、そんな希世乃さんですら「あれは奇跡のワンテイクだった」といっていたので、とにかく同じ奇跡を起こさねばという気持ちで歌いました。

安野 奈央ちゃんのレコーディングのあとに、2人での録りものがあったんです。だから私もレコーディングの様子は聞いていたんですが、すごくがんばっていて、ブースから出てきた奈央ちゃんがヘロヘロなっていたのが印象的でした。あともう1曲の「まわりみち」は、「二人三脚」という感じかな。

東山 私的には「これって歌!?」です。歌い分けのフレーズもとくに細かくて、これはもはやおしゃべり、会話なのではないかなと思って。

安野 交互に歌うパートが来るから、まさに会話だよね。歌いながら言葉のキャッチボールをしている感じ。密度がすごく高い曲ですね。

――「まわりみち」は、ラストに2人のおしゃべりが入っていますね。
安野
 セリフ周りは、奈央ちゃんが考えてくれました。

東山 レコーディングが終わったあと、プロデューサーさんから「2人でおしゃべりをしてほしい」と言われたんです。「いまひとりでレコーディングしてるのに?」と思ったんですが(笑)、2人で話しそうなことをいっぱい盛り込んだセリフを考えて、希世乃さんの好きなカフェラテも入れてみました。

安野 セリフをもらったとき、「リアルでこの会話したっけ?」と思うぐらいリアルでしたね。

東山 私たち、いままで一緒に遊びに行ったことはあるんですが、お散歩はしたことがないんですね。でもお散歩をしたらこんな会話になるんだろうなって、すごくイメージしやすかったです。

――全4曲歌ってみて、デュオだからこその難しさは感じましたか?
安野
 先ほどもお話ししたように、先に歌った「手紙の塔」でどこまで湿っぽくしていいかは迷いました。ユニットに「癒しとビタミンを届ける」というコンセプトがあるので、どこまで沈んだ歌い方をしていいのかと思って。奈央ちゃんが困っちゃうくらいディープにはしたくなかったんです。

東山 困りたい! 困らせてほしい!

安野 そうなの?(笑)私たちの歌声って、奈央ちゃんは明るい成分が強めの陽の雰囲気なんですが、私の歌はどちらかという泣きの、陰なんです。それが融合していい楽曲が作れるんじゃないかと話してはいたんですが、まさかほかのポップな3曲と比べて、ここまで雰囲気の違う曲が来ると思わなかったこともあって、難しかったですね。

東山 私は、全体的な難しさはあまり感じなかったです。すごく希世乃さんに引っ張ってもらっているし、お姉ちゃんみたいに甘えているので歌いやすかったです。

――2人で歌ってみて、新しい発見はありましたか?
東山
 どちらが主旋律を歌うかで持ち味が変わるのが発見でした。「まわりみち」は、私は朗らかだけど、希世乃さんは伸びやかなんです。

安野 グルーヴ感が違うよね、私たち。その違いが、ハモリでひとつになったときに複雑さを生み出して、味が出るんです。

東山 うん。バターもおいしいし、醤油もおいしいけど、バター醤油っておいしいよね、っていう気持ち。

安野 奈央ちゃんとのインタビューって、すごく楽しいね(笑)。いろんなワードがするする出てくる。

東山 出てくるんですよ、希世乃さんと話しているうちに(笑)。

――先ほども話題に出ましたが、『リスアニ!LIVE2022』で初めて2人でステージに立ってみて、驚いたことはありましたか?
東山
 めっちゃ自由でした! 希世乃さんがリハーサルではしなかったことを急にやってきたんですよ。「僕の宝物」で突然私に指差ししてきて。

安野 やった! あのときのリアクションを見て、奈央ちゃんってプロだって思った。難しい歌でやるべきじゃなかったかなとも思ったんだけど……。

東山 ううん、やってくれてうれしかった。それはひとりでは絶対できないことだし、うまく返してくれるだろうって信頼してくれたのかなと思って。よーし、打ち返すぞ! みたいな気持ちになりました。

安野 ステージで同じ空間で空気を震わせて声を合わせるのは、レコーディングとはまた違って、そこにしかないハーモニーのよさが生まれるなと感じました。

東山 ライブって、どんなに練習しても、次の瞬間がどうなるかはわからないけど、2人でいると大丈夫な気がしてくるんです。こう来るだろうって肌感覚でわかるし、何も考えなくてもハーモニーが成立するから、とても気持ちのいいステージでした。

――2人はひよりの幼なじみ・吉永恋の弟・虹、虎役で作品に出演しています。2人から見た『スローループ』という作品の魅力は?
安野
 やさしい時間が流れているところです。釣りって焦っちゃいけないもので、ヒットするのを信じて待つ時間が大事だと思うんですが、それが時間をかけて少しずつなじんでいこうとするひよりちゃんと小春ちゃんにも合っている気がして。人生は長いから、焦らずにやっていこうという懐の深さを感じます。

東山 奥が深いね~。釣りアニメであり、飯テロアニメでもあるけれど、とにかくみんなかわいいんですよ。きららアニメなのに釣った魚に対して「死後硬直」とか言い出してびっくりしますけど、それでいて毎回心に残るひと言もあって。ハートフルな素晴らしいアニメだと思います。

――ぽかぽかイオンで、今後やってみたいことはありますか?
安野
 まずは、ぽかぽか散歩。街ブラ企画をやりたいです。

東山 2人ならなんでも楽しくなると思う。あとは大人デュオとしてディナーショーとか?

安野 こたつの衣装で?

東山 そこはドレスで(笑)。お客さんにはお酒やお食事を味わっていただいて。

安野 畳のディナーショーもいいよね。

東山 それは宴会場では? 私たちがお酌するとか?

安野 じゃあ、私たちのファンクラブで合体企画をやろう!

東山 ぽかぽかイオンバスツアー!

安野 よろしくお願いします!

――では最後に、読者にメッセージをお願いします。

東山 自称ユニットだった私たちぽかぽかイオンがこのたび正式デビューとなりました。夢のような出来事が起こって、いまはとにかくうれしく思っています。ラジオCDが付くバージョンや、私たちがこたつに入ってお鍋を食べる映像特典「こたつ・パーティー!」が付いたバージョンもあるので、ぜひチェックしていただきたいです。そして、皆さんに元気と癒しを受け取ってもらえたらと思います。これから応援していただけたらうれしいです。

安野 ぽかぽかイオンは、型にハマらない、とても自由なユニットだと感じています。これからもアイデアを出しあって、いろんな夢を叶えていけたらいいなと思いますし、今回のCDでは、ラジオや映像企画などもやらせていただきましたので、楽曲も含め、聞いて、見て楽しんでいただけたらと思います。


取材・文/野下奈生(アイプランニング)

プロフィール
ぽかぽかイオン【ぽかぽか・いおん】声優・歌手の東山奈央と安野希世乃によるスペシャルユニット。2017年に本人たちが非公式に結成していたが、今年晴れて公式に始動することとなった。「人々の心を癒し、明日への活力《ビタミン》を届けること」をコンセプトに活動を開始。

「やじるし→」リリース情報
 表題曲は、テレビアニメ『スローループ』のOPテーマ。心温まる作品世界を歌でも表現した、爽やかでポップなナンバーだ。カップリング曲はすべての盤共通で、テレビアニメ『異世界食堂2』の挿入歌「僕の宝物」、さらにぽかぽか盤には「手紙の塔」、イオン盤には「まわりみち」を収録。

発売日:発売中
レーベル:フライングドッグ
価格:
ぽかぽか盤(限定盤A)2,970円(税込)
イオン盤(限定盤B)2,640円(税込)
アニメ通常盤1,320円(税込)

「型にハマらない、とても自由なユニット」東山奈央と安野希世乃によるスペシャルユニット・ぽかぽかイオンインタビュー

《M.TOKU》
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