アニメ制作の名門!『ルパン三世 カリオストロの城』『つくもがみ貸します』『閃光のハサウェイ』などに携わったテレコム・アニメーションフィルムの歴史と魅力 | アニメ!アニメ!

アニメ制作の名門!『ルパン三世 カリオストロの城』『つくもがみ貸します』『閃光のハサウェイ』などに携わったテレコム・アニメーションフィルムの歴史と魅力

「テレコム・アニメーションフィルム」美術の魅力と歴史を紹介。

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『ルパン三世 カリオストロの城』 原作:モンキー・パンチ(C)TMS
  • 『ルパン三世 カリオストロの城』 原作:モンキー・パンチ(C)TMS
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  • 『ルパン三世 カリオストロの城』 原作:モンキー・パンチ(C)TMS
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  • 『つくもがみ貸します』 (C)2018 畠中恵・KADOKAWA/つくもがみ製作委員会
  • 『つくもがみ貸します』 (C)2018 畠中恵・KADOKAWA/つくもがみ製作委員会
  • 『つくもがみ貸します』 (C)2018 畠中恵・KADOKAWA/つくもがみ製作委員会

 写真や映像などの作品を作るうえで、世界観を演出することは大切だ。例えば、「200年後の発達した未来」という世界を表現するには、高層ビルの数々や空飛ぶ車などを登場させると、見る側もイメージがしやすいだろう。一方で、「武士が登場する硬派な時代劇」にビルや車を登場させてしまったら、世界観は一気に壊れてしまう。こういった世界観をアニメーションで作るうえで重要なのが「美術」。画面の7割を占める場合が多いと言われる美術背景ひとつで、世界観を作ることも、壊すこともできると言って過言ではない。

 そんな「美術」に業界内外から定評のあるアニメーション制作会社が、「テレコム・アニメーションフィルム」だ。今回は、「テレコム・アニメーションフィルム」が関わってきた作品とその美術の魅力を、浄園祐代表取締役社長から聞いたエピソードも交えつつ紹介する。


アニメ業界の名門「テレコム・アニメーションフィルム」はどんな制作会社?
「テレコム・アニメーションフィルム」(以下、テレコム・アニメーション)は、海外に通用するフル・アニメーションを描けるアニメーターを養成する目的で1975年に東京ムービー(現・トムス・エンタテインメント)の子会社として創設された制作会社。日米合作作品『NEMO/ニモ』制作の傍ら、1979年には宮崎駿監督作品『ルパン三世 カリオストロの城』や『名探偵ホームズ』、高畑勲監督作品『じゃりン子チエ』などの代表作を残す。

 同社には、先述の宮崎監督・高畑監督ほか、『新世紀エヴァンゲリオン』のキャラクターデザインを担当した貞本義行氏、『未来少年コナン』や『ルパン三世 カリオストロの城』の作画監督などを務めた大塚康生氏など、数々の名クリエイターが在籍していた。彼らの元で学びたいというアニメ制作に夢を抱く当時の若者の多くが同社の門を叩き、選ばれた実力者たちの数名は今も同社で活躍している。そういった実績を積み重ねていき、業界内では「テレコム・アニメーションは名門」という声も聞かれる。

 同社は1988年に完成した『NEMO/ニモ』をはじめ、海外作品を手掛けることも多かったが、2000年代にはグロス請け(下請け)や共同制作などを通じて国内アニメーションの制作を中心に手掛けるように。単独での国内アニメーション制作も請け負うようになり、現在はTV作品だけでなく、劇場作品、PVなどの制作も積極的に行っている。

業界で長く活躍するレジェンドたちの存在
 
そんな歴史あるテレコム・アニメーションだが、これまでどのような作品を手掛けてきたのだろうか。代表作のひとつとして挙げられるのは、冒頭でも紹介した『ルパン三世 カリオストロの城』である。世代を超えて愛される本作には、先述の大塚氏ほか、カーチェイスのシーンを手掛けた友永和秀氏、『天空の城ラピュタ』の美術監督も務めた山本二三氏など、アニメ業界のレジェンドたちが制作に参加。テレコム・アニメーションは制作協力という形で、本作の背景制作にも関わっている。

 浄園社長は、「名作と言っていただける作品に関わったスタッフが今もテレコム・アニメーションに在籍したり、今は社外で活躍している方でも仕事をお願いできたりすることはありがたいことで、自社の強みでもあります」と語る。実際、テレコム・アニメーションが制作を担当する2022年3月公開予定のアニメ映画『ブルーサーマル』の作画にも『ルパン三世 カリオストロの城』で活躍したスタッフが関わっているという。また、浄園社長は、レジェンド級のスタッフから刺激を受けられる環境は、同社の特徴のひとつとも言葉にしていた。


不朽の名作アニメ『ルパン三世 カリオストロの城』の制作に参加 原作:モンキー・パンチ(C)TMS

カーチェイスのシーンを手掛けた友永氏もテレコム・アニメーションに在籍している 原作:モンキー・パンチ(C)TMS

『ルパン三世 カリオストロの城』のワンシーン 原作:モンキー・パンチ(C)TMS

『ルパン三世 カリオストロの城』のワンシーン 原作:モンキー・パンチ(C)TMS

幅広いジャンルに対応
 
45年以上の歴史のなかで、ジャンルにこだわらず、様々な作品を手掛けてきたテレコム・アニメーション。元請け作品も多くあり、その中には背景の美しさが評判になったものも多い。そのひとつが、2018年にNHK総合にて放送された『つくもがみ貸します』。本作では、山奥や遠くに見える街並みまでが細かく描かれていたり、色鮮やかながらもキャラクターたちに馴染むような色使いがされていたりなど、背景のクオリティが視聴者の間でも評判となった。


『つくもがみ貸します』第8話。鮮やかな雲や空と、細かく描写された建物が印象に残る (C)2018 畠中恵・KADOKAWA/つくもがみ製作委員会

『つくもがみ貸します』第8話。夕暮れの景色はシンプルに「美しい」の一言 (C)2018 畠中恵・KADOKAWA/つくもがみ製作委員会

『つくもがみ貸します』第10話。遠くに見える家々も細かく描写 (C)2018 畠中恵・KADOKAWA/つくもがみ製作委員会

 また、2020年にTOKYO MXほかにて放送された『神之塔 -Tower of God-』では、作中で度々登場する美しい空や雲に、目を奪われた人も少なくなかったのではないだろうか。実際、本作は国内外で高い評価を得た。


『神之塔 -Tower of God-』第2話。鮮やかな空の青が印象的 (C)Tower of God Animation Partners

『神之塔 -Tower of God-』第6話。木や草の緑、水面に映る木々、奥に広がる青など、どこを取っても美しい (C)Tower of God Animation Partners

『神之塔 -Tower of God-』第12話。吸い込まれるような青空。雲の形も細かく違っており写真のようなリアリティを感じる (C)Tower of God Animation Partners

 これらを手掛けたのは他でもない、テレコム・アニメーション社内の美術スタッフ。浄園社長は、『神之塔 -Tower of God-』の美術監督・清水啓一朗氏や30年ぶりのTVシリーズとなった2015年放送の『ルパン三世 PART4』の美術監督・山子泰弘氏をはじめ、美術スタッフたちの活躍には多いに期待していると、笑顔で言葉にしていた。

他の制作スタジオと協力することでの学び
 
元請け作品を作る一方で、2012年に放送された女児向けアニメ『アイカツ!』では、サンライズと共同で制作を行っていた。共同制作の理由は様々あるが、テレコム・アニメーションとしては「自社以外の制作スタジオさんと一緒に作ることで何か学びたい」という想いがあったのだという。そんなときに声をかけてくれたのがサンライズであり、共同制作を行うこととなった。歴史ある制作会社でありながらも、新しいチャレンジや学びを止めない。それが、テレコム・アニメーションのスタイルなのである。


『アイカツ!』の舞台となるスターライト学園の門 (C)BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

スターライト学園の全景。本作では視聴者の年齢層に合わせて、リアルに描写し過ぎないようにしている (C)BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

スターライト学園の校内。リアルな描写は避けつつも、水面に映る雲や建物などは丁寧に描いている (C)BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

あの大ヒット作品の制作にも協力
 
前述の『アイカツ!』のほか、テレコム・アニメーションは元請けではない、様々な作品にも参加している。近年で言えば、美しい空や雲の描写も話題となった新海誠監督のアニメ映画『天気の子』や、細田守監督渾身の最新作『竜とそばかすの姫』、また、新たな宇宙世紀を紡ぐ『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』といった大ヒット映画の背景を一部担当していた。


テレコム・アニメーションが背景を一部手伝ったアニメ映画『天気の子』のDVDパッケージ画像 (C)2019「天気の子」製作委員会

2021年夏公開のアニメーション映画『竜とそばかすの姫』の背景を一部手伝った (C)2021 スタジオ地図

『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』テレコム・アニメーションが手掛けた美術ボード(各担当が背景の指針とする、背景のイメージ図)。お店に置かれているひとつ、ひとつの商品が丁寧に描かれている (C)創通・サンライズ

『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』テレコム・アニメーションが手掛けた美術ボード。マフティが利用した基地・ロドイセヤは美しい自然に囲まれた場所であることがよく分かる (C)創通・サンライズ

『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』テレコム・アニメーションが手掛けた美術ボード。ハサウェイたちが宿泊したタサダイ・ホテルから見た景色。街・山奥・雲のひとつまで緻密に描かれている (C)創通・サンライズ

 元請けだけでなく、一部でも作品の制作に積極的に参加するのは、自分たちの学びのため、そしてアニメ業界へ貢献するため。そういった考え方やスタイル、そしてこれまでの実績があるからこそ、テレコム・アニメーションは今でもアニメ業界から必要とされているのだ。

 今回紹介したもの以外にも、テレコム・アニメーションは数多くの作品を制作している。そんなテレコム・アニメーションは、2022年3月4日公開の最新アニメ映画『ブルーサーマル』の制作を手掛けている。グライダーというスポーツを通して「空」に恋した大学生を描く青春物語の本作では、青空をはじめいろいろな空が登場。ひとつとして同じ空はなく、実際の情景やキャラクターの心情などによって描き分けられているという。ここまで紹介してきたテレコム・アニメーションの美術・背景の魅力が凝縮されたアニメ映画になることは間違いないだろう。本作をはじめ、アニメ制作会社の名門であるテレコム・アニメーションが生み出す美しい背景や美術表現に、今後も大いに期待したい。


アニメ映画『ブルーサーマル』のポスタービジュアル (C)2022「ブルーサーマル」製作委員会

関連情報
『つくもがみ貸します』
上ノ巻/下ノ巻
Blu-ray&DVD 発売中
発売・販売元:株式会社KADOKAWA

『天気の子』
Blu-ray&DVD発売中
発売元:STORY/東宝
販売元:東宝

『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』
2021年6月11日劇場公開作品
Blu-ray&DVD&4K UHD発売中
発売・販売元:バンダイナムコアーツ

『竜とそばかすの姫』
キャスト:中村佳穂 成田 凌 染谷将太 玉城ティナ 幾田りら / 役所広司 / 佐藤健
原作・脚本・監督:細田 守 作画監督:青山浩行 CG作画監督:山下高明
CGキャラクターデザイン:Jin Kim 秋屋蜻一 CGディレクター:堀部 亮 下澤洋平
美術監督:池 信孝 プロダクションデザイン:上條安里 Eric Wong
音楽監督/音楽:岩崎太整 音楽:Ludvig Forssell 坂東祐大 色彩設計:三笠 修
撮影監督:李 周美 上遠野学 町田 啓 衣装:伊賀大介 / 森永邦彦 篠崎恵美
編集:西山 茂 リレコーディングミキサー:佐藤忠治
スーパーヴァイジングサウンドエディター:勝俣まさとし 
ミュージックスーパーヴァイザー:千陽崇之
キャスティングディレクター:増田悟司 今西栄介
企画・制作:スタジオ地図
上映時間:2時間2分

(C)TMS
(C)2018 畠中恵・KADOKAWA/つくもがみ製作委員会
(C)Tower of God Animation Partners
(C)BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO
(C)2019「天気の子」製作委員会
(C)2021 スタジオ地図
(C)創通・サンライズ
(C)2022「ブルーサーマル」製作委員会

《M.TOKU》
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