アニメは“SNS”でどう変わったか。Twitterとファンワークスが分析【IMART 2021レポート】 | アニメ!アニメ!

アニメは“SNS”でどう変わったか。Twitterとファンワークスが分析【IMART 2021レポート】

マンガ・アニメの未来をテーマにした国際カンファレンスIMART(国際マンガ・アニメ祭 Reiwa Toshima)の第二回が2021年2月26日(金)と27日(土)にかけて開催された。

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IMART2021「SNSから見るアニメに対する動態の変化」の様子
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マンガ・アニメの未来をテーマにした国際カンファレンスIMART(国際マンガ・アニメ祭 Reiwa Toshima)の第二回が2021年2月26日(金)と27日(土)にかけて開催された。

マンガ・アニメ業界の先端で活躍するイノベーターや実務家を一同に集めた基調講演が多数行われる同カンファレンスだが、本記事では1日目に開催されたセッション「SNSから見るアニメに対する動態の変化」のレポートをお届けする。近年、SNSを抜きに流行を語れない時代となったが、SNSがアニメ産業にどのような影響を与えてきたか、そしてアニメ産業はどうSNSを生かすべきのヒントが詰まった講演となった。

登壇者は、Twitterメディア&エンターテイメント業界担当クライアントアカウントマネージャーの久保沢しおり氏、同じくTwitterメディア&エンターテイメント業界担当クライアントパートナーの石橋宗樹氏、株式会社ファンワークス代表取締役社長の高山晃氏。モデレーターはイードのメディア事業本部副本部長の森元行氏が務めた。



今やアニメファンにとってTwitterは情報収集の基本となるツールだ。そのTwitter社が日本のアニメをどう評価しているのか、気になるところだ。



まず本講演は、久保沢氏のプレゼンから始まった。現在、Twitterユーザーの平均年齢は36歳だそうだ。Twitterは今起きていることがわかるサービスだと特徴づけられると言い、それゆえTV視聴しながら利用されることも多い。ユーザー調査によると、Twitterユーザーの76%がTVを視聴しながらTwitterを利用した経験があるという。



Twitterに人が集まる理由は、興味関心でつながれるプラットフォームだからだと久保沢氏は説明する。Twitterでは共通の趣味や好きなもので集まった仲間のことを「Tribe」と呼んでいるそうだが、アニメとマンガは日本の中では特に大きなTribeになるそうだ。



それらの趣味を持つ人は「オタク」と呼ばれかつてはネガティブな印象を持たれていたが、近年の調査ではオタクはポジティブなイメージに変わってきているという。オタ活は生活の活力を底上げする中心的なものととらえている人は若い世代を中心にかなり多いのだという。





コンテンツを好きという気持ちでつながれるのはTwitterの大きな特徴。企業はその好きのパワーを活用してほしいと久保沢氏は語る。特にアニメとマンガは2020年のトレンド大賞ベスト20に5つも関連キーワードを送り込むほどポピュラーなものだそうだ。



続いて石橋氏のプレゼンに移る。石橋氏はTwitterでユーザーとのコミュニケーションをいかにするのかについて、企業アカウントの適切なキャラ設計について話してくれた。

今日、数多くの企業が公式Twitterアカウントを運営しているが、企業アカウントを運営する際には、アカウントの目的、人格の設定、コンテンツの柱の3つを意識することが大切だという。まずアカウントを作成する目的を明確にしておいたほうが良いとのこと。それが全ての投稿の指針になるからだ。

次いで、人格の設定だが、これにはいくつかのパターンがあるという。ブランド型、キャラクター型、中の人型だ。ブランド型はすでに認知されているブランドならファンと呼びこみやすい。キャラクター型は親しみやすさ重視、中の人型は担当者の属人性に頼った運営方法でセンスが試される。



そして、投稿するコンテンツは、発信側が伝えたいことと、ユーザーの興味がクロスするポイントを狙うことが重要だそうだ。さらに投稿スケジュールにも気を配るべきだという。



そして、Twitter上で会話を促せるコミュニケーションは、選択で回答しやすい会話なのだという。例として以下のどちらが会話がはずむかを考えてみよう。



会話のきっかけとなる質問はより具体的な方が会話が弾む。Twitter上でのコミュニケーションも以下のようなことを心がけた方がよいとのこと。

そして数多くの情報が流れていくタイムラインで手を止めてもらうには、短く明確に、サウンドオフでも伝わること、直観的にわかるもの情報の出し方を心がけると良いそうだ。



最後のプレゼンは、ファンワークス代表の高山氏だ。ファンワークスは数多くのキャラクタービジネスを成功させてきた会社で、近年は『すみっコぐらし』や『アグレッシブ烈子』などで知られる。長編アニメだけでなくショートアニメも数多く制作してきた会社でSNSは、アニメとは切っても切れない関係になっているという。

高山氏は、自社のショートアニメを以下のように分類する。
短尺アニメ:『やわらか戦車』など、ユーザーに伝えやすい長さの作品
アニメPV:効果的に作品の魅力を伝えるPV
アニメCM:TVのCMよりも長いもの



ファンワークスの代表作の一つ『やわらか戦車』はSNS普及以前、ライブドアのポータルサイトで展開した短尺アニメだ。SNS以前から同社はネットを活用していたことを証明する作品と言える。

近年の代表作である『アグレッシブ烈子』はNetflixで配信されブームとなったが、きっかけは一つの動画投稿が国際的なニュースで取り上げられたことだった。それによって世界のMeToo運動などとも連動する形で盛り上がっていったのだという。



アニメCMの例として高山氏が挙げたのは『アリキリ』だ。アリとキリギリスをモチーフに働くをテーマにしたCMで、サイボウズがワークスタイルを問い直す目的で制作されたものだ。こちらもSNSで評判となり、ACC TOKYO CREATIVITY AWARDSで「総務大臣賞 / ACCグランプリ」を受賞するなど高い評価を獲得した。

ファンワークスは現在、中国でもショートアニメの配信に挑んでいる。中国の動画市場は短尺ものだけが成長している状況だそうだ。




ここから3名によるディスカッションに入る。

モデレーターの森氏は、近年SNSユーザーの動向として短い動画作品が好まれる傾向になるのではと指摘。久保沢氏は、それは事実と指摘しながら、長尺の作品も解釈や考察の余地のある作品に人気が集まる傾向があると指摘した。石橋氏は、長尺か短尺かも重要かもしれないが、自分たちも参加したいと思わせことが重要なのだろうと語った。

また、森氏は、特定のTribeにめがけてアニメでPRしようという動きがかつてあったが、今はそれだけでは伝わらなくなってきているのではという疑問に対し、高山氏はアニメーションは世界で最も伝わりやすい言語であり、まだまだ色々な作り方が検討できるだろうと語った。

石橋氏は、価値観が多様になっているので、ユーザーが自分に向けられていると思ってもらうためには、発信する際の文脈整理が重要だという。企業アカウントの目的を整理すべきなのもその一環なのだそうだ。

価値観の細分化という観点から、森氏は『鬼滅の刃』の大ヒットに触れた。細分化の一方であのような国民的ヒットが生まれる可能性も近年は高まっているのではと言う指摘だ。

高山氏は、『鬼滅の刃』は多くの要素を持った作品だったので、トライブを横断する力のあった作品だったのではと指摘。最初にアニメ・マンガ好きのトライブに深く刺さったことで話題となり、そこから他のトライブに波及していったのではと分析した。


『鬼滅の刃』の大ヒットも記憶に新しいが、近年の大ヒットコンテンツはSNSを抜きにしては語れない。「好き」のパワーをどう活かすのかが今後のコンテンツ作りには必須の要素だということが強く印象づけられたセッションだった。

[アニメ!アニメ!ビズ/animeanime.bizより転載記事]
《杉本穂高》
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