■『ぼくのわたしの勇者学』キャラとの対比も楽しんで
――では、灰呂の登場回以外で注目してほしいエピソードは何ですか?
島崎:みんな気になっていたであろう『ぼくのわたしの勇者学』(以下、『勇者学』)とのコラボエピソードです。観てくださった方はわかると思いますが、『斉木』のキャストで『勇者学』のキャラを演じさせていただきました。

――主人公の鋼野剣を神谷さん、火野木望を茅野愛衣さん(『斉木』では照橋心美役)、宗村まさゆきは小野大輔さん(『斉木』では燃堂力役)、そして島崎さんは河野盾を演じていました。
島崎:『斉木』での立ち位置を考えつつキャスティングされたようなんですが、楠雄と鋼野剣は性格が真逆なので、神谷さんはアフレコをすごく楽しみにしていたようです。「俺がこの現場でずっと我慢してきたことをやれる!」って(笑)。
ただ、ギロチンのまさゆき(宗村まさゆきのあだ名)と燃堂はちょっと近いキャラクターです。燃堂はしっかりおバカなので、迷いゼロで「お?」「お?」と言っていれば成立するんですけど、ギロチンのまさゆきも燃堂ほどではないもののおバカではあるので(笑)。
――おバカというジャンルで差を付けなければいけなくなったと。
島崎:小野さんが「ちょっと……どうしようかな……」とキャラを探っている光景は、『斉木』の現場でははじめて見たので新鮮でした。
あとは、才虎芽斗吏役の松風雅也さんが、ブタこと小野石男を演じたのもギャップがあって面白かったです。
――才虎は大金持ちですけど、ブタは典型的なオタクでしたからね。
島崎:ヒエラルキーの違いみたいなものを感じました。『勇者学』単体で観るのももちろん面白いんですが、『斉木』のキャラとの対比を見るのも面白かったです。もともと『勇者学』を本誌で読んでいて好きだった僕としては、感慨深くもありました。
なので今後の麻生先生には『勇者学』のアニメをやって、その間に先生に『斉木』の続きを描いてもらって、また『斉木』のアニメをやって、『勇者学』を連載してもらって……という無限ループを生み出してもらいたいくらいです。

――それくらい両方やり続けたいと。
島崎:本当に! 先生のご都合もあると思うのであくまで願望ですが、そんな夢も広がる『勇者学』のコラボでした。
あと、『Ψ始動編』で印象に残っているのは、楠雄が動揺しているシーンです。「最強の超能力者なのに、うろたえている姿も見られるなんて……!」と、グッと来るものがありました。
感情を出す場面やテレパシーでなくかけ合う場面もあって、今までにはない人間らしい楠雄が見られるのも嬉しかったです。ここまで積み重ねてきたからこそだなと思います。
■手紙から『斉木』の魅力を痛感
――Netflixでの全世界配信ということで、字幕28カ国/吹き替え8カ国に展開。日本でも一部の言語には切り替えられます。
島崎:Netflixさんって、ローカライズがすごく丁寧な印象なんです。だから、たとえセリフ量が多くてスピードが速い『斉木』であっても、ちゃんと各国の方に楽しんでもらえると思います。
――ともあれ、言語によってはセリフで画面が埋まりそうだなと思うこともあります。
島崎:そうなんですよね!(笑) 以前、各国の『斉木』のタイトルロゴを見させてもらったんですが、日本だとふりがなが書いてある部分が言語によって全然違うんですよ。サブタイトルでも入っているのかなと思うくらい。
でも、何より注目は吹き替えです。言語によっては圧縮しているのかもしれないですが、喋りやすい言語なら「あれ、俺らより……」ってなるかもしれない(笑)。それがすごく楽しみです。
これを読んでくださったみなさん、興味本位でいいので、ぜひ世界各国の言語に切り替えてみてください。面白い体験ができると思います。

あと、翻訳の内容で文化の違いもわかるから面白いですよね。「日本でしか通じないネタは何に置き換えられているんだろう?」と。
――『斉木』は初詣やクリスマスなどの行事を描いていますからね。
島崎:そうそう、どんなふうになっているんでしょうね? バレンタインなんて、海外から入ってきたイベントだけど日本独自の文化になっていますよね。「なんかよくわからないけど、海外からもらっためでたい日だぞ、フゥーー!!」って(笑)。
――本当ですね(笑)。
島崎:アメリカの人が見たら、何をしているのかわからないと思います。どう表現されているのか気になりますね。
食べ物もそう。「SUSHI(寿司)」は、今でこそ海外でも通じるワードですが、そのほか通じないものもあるはずで、そのあたりどうなっているか僕も確認してみたいです。

スマホで観るのは我慢できない気がするんですけど(笑)。
――というと、笑ってしまうから?
島崎:そうです。さっき「スマホと相性がいい」とか言いましたけど、僕個人は外で観るのがちょっと怖いです。アフレコの記憶が蘇って、マスクをしていたとしても声が出ちゃうと思います。「ハッハーー!」みたいな声が。職業柄、とっさに出た声がめちゃくちゃデカかったりするので危険ですね(笑)。
自分が演じたキャラに入り込んで、気づいたら同じ表情をして観ていることもありますし。
――外では観ないほうがいいかもしれません(笑)。じゃあ、観るなら家ですね。
島崎:そうですね。外だとしても、誰の邪魔にもならないところで落ち着いて観たいです。家なら、TV画面で楽しみたいですね。僕、アンドロイドTVを使っているのでTVでNetflixが観られるんですよ。
――じゃあ、ご自身が出た作品もそれでチェックしたりするんですか?
島崎:はい。配信文化に触れたのが2年前なので割と最近なんですけど。「そういえばリモコンにNetflixボタンがあるな」と思って、つけてみてはじめて「観られるじゃん!」と気づきました。
それまでは、家でお酒を飲まなかった僕も晩酌をはじめて。最近は、めっちゃ楽しんでいますね! ビール飲んでつまみを食べながら『斉木』を観てゲラゲラ笑ってます(笑)。

――なんと幸せな(笑)。『斉木』自体、そういうふうに気兼ねなく笑える作品だからいいですよね。
島崎:本当に。家族で観るという方が多いらしいんですが、それも納得です。そういえば、視聴者のおじいちゃんから『斉木』の番組宛てに手紙が届いたんですって。「『斉木』を、孫と観ています。正直、私には時折何を言っているか聞き取れない部分もあるのですが、そういうときは孫が教えてくれます。おかげで交流の時間になっています」という、丁寧な内容の手紙が。
――まさに家族で楽しんでいる方ですね!
島崎:それを聞いて、「『斉木』ってすげーな!」と思いました。「速すぎて聞き取れない」というのも『斉木』らしくて(笑)。
本来ならご年配の方でも聞き取れるようにしたい思いがあるんですが、これはこれで素敵だなとも思います。嬉しかったですね。
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