アニメ評論家・藤津亮太が語る“インタビューの極意” 質問や事前準備も「シミュレーションが大事」 | アニメ!アニメ!

アニメ評論家・藤津亮太が語る“インタビューの極意” 質問や事前準備も「シミュレーションが大事」

アニメ評論家として数々の実績を持つ、藤津亮太さんに「インタビューの極意」について伺った。知ることでインタビュー記事がもっと面白くなるプロのテクニックとマインドとは?

インタビュー
アニメ評論家・藤津亮太が語る“インタビューの極意” 質問や事前準備も「シミュレーションが大事」
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好きな作品や声優さんについて「もっと知りたい!」と思ったときに、よくみなさんが読まれるのがインタビュー記事ではないでしょうか?

今回はアニメライターの藤津亮太さんに、インタビューの際にどうやって面白いお話を引き出しているのかについて伺いました。

アニメ!アニメ!では、アニメファンに関する記事を年間4500本以上掲載しています。そんな数ある記事の中でも人気なのが、声優さんやアニメ監督、プロデューサーへのインタビュー記事です。

今回はプロのアニメ評論家として数々の実績を持ち、アニメ!アニメ!でも「藤津亮太のアニメの門V」を連載している藤津亮太さんに、5月28日発売のインタビュー集『プロフェッショナル13人が語る わたしの声優道』(河出書房新社)での例を中心にインタビューの極意について伺いました。

知ることでインタビュー記事がもっと面白くなるプロのテクニックとマインド、ぜひお楽しみください!
[取材・構成=いしじまえいわ]

[藤津 亮太(ふじつ・りょうた)]
1968年生まれ。静岡県出身。アニメ評論家。主な著書に『「アニメ評論家」宣言』、『チャンネルはいつもアニメ ゼロ年代アニメ時評』、『声優語 ~アニメに命を吹き込むプロフェッショナル~ 』がある。最新著書は『プロフェッショナル13人が語る わたしの声優道』。各種カルチャーセンターでアニメの講座を担当するほか、毎月第一金曜に「アニメの門チャンネル」(http://ch.nicovideo.jp/animenomon)で生配信を行っている。


■アニメライター業に活きるロジカルなマインド


――今回は藤津さんにインタビューの極意を伺いたいと思いますが、その前に藤津さん自身について教えてください。アニメライターになる前はどんなことをされていたんですか?

藤津:2000年にフリーのアニメライターになったのですが、その前は新卒入社した地方新聞社(静岡新聞)に5年間、その後「週刊SPA!」編集部に2年半在籍していました。

――新聞記者や雑誌編集者時代にインタビューのノウハウなどを体系的に教えてもらったんでしょうか?

藤津:そういう機会もありましたが、どちらかというととにかく実践の中で学ぶ叩き上げ方式でしたね。たとえば「子どもに凧を教える凧あげ教室があるから行って話聞いてこい」という案件があれば現地に行ってお話を聞いてそれを記事にするわけですが、書く段になって「あーっ、これも聞いておけばよかった!」ということに気付く。そういった気付きの積み重ねでしたね。

――新卒で新聞記者にということは、元々文系の学生さんでそういったインタビューや執筆がお得意だったんでしょうか?

藤津:いいえ、理学部分子生物学科でした。

――えっ、それは意外です。異色のキャリアパスですね。

藤津:理系でしたが、所属していた合唱サークルの文集のために文章を書くのなんかは元々好きだったんです。
あと理系といっても、当時は面識はありませんでしたが同じ理学部の地学科の2学年先輩にマンガ評論家の伊藤剛さんがいますし、同級生にはマンガ家の都留泰作さん(代表作『ナチュン』『ムシユヌン』等)もいます。

――理系出身でコンテンツ分野で活躍されている方は意外と多いんですね。確かに藤津さんの記事はロジカルで読みやすい印象があったので納得です。

藤津:僕の記事を面白いと言ってくれる方はそういう僕の理屈っぽい面を楽しんでくれているのだと思います。逆に「こいつカタイな!」と思われている方もいらっしゃると思います。
インタビューを受けた方から「藤津さんに文章にしてもらうと、なんだか頭良くなった感じがする」と言っていただけることもあるんですが、そういうロジカルな面が出ているのかもしれませんね。

――分かります。そういったロジカルなインタビュー記事の書き方について、これから詳しく教えてください。

■取材準備は「会話のシミュレーション」


――インタビュー記事を書くにあたって、取材準備実際のインタビュー、そして執筆と3つのステップがあると思います。取材準備にはどのくらい力を割いているのでしょう?

藤津:ケースバイケースですね。今回の『プロフェッショナル13人が語る わたしの声優道』の場合、「Febri」という雑誌の連載記事が元になっているのですが、僕は声優さんに作品面での話を聞くことはあっても、その声優さんのパーソナルな部分についてお話を伺う機会はあまりなかったんです。なので毎回入念に下調べをしてからインタビューに臨みました。

逆に富野(由悠季)監督などキャリアや作品をよく知っている方へのインタビューであれば、ゼロから調べる必要はないので直近の作品や活動についておさえておく程度です。

【関連記事】藤津さんがアニメ!アニメ!で過去に担当した富野由悠季監督インタビュー>放送開始後、初の富野総監督スペシャルインタビュー「ガンダム Gのレコンギスタ」を語る(上) 

――では今回の本の場合、具体的にどういったことを事前に調べられたのでしょう?

藤津まずはフィルモグラフィ(出演作品歴)を確認して作品リストを作り、見たことのない作品であれば時間の許す範囲で配信やレンタルで実際にその作品を見ておきました。

それと、今回特に気にしたのは、「各作品の音響監督」と「共演者」です。
インタビュー中に相手の方が思い出すのはその仕事をしていた時に一緒にいた人のことのはずですから、そういった話題が出た時に話に乗れるようにしておくための準備です。
これも毎回リストを作りました。

――そこから作品本編もチェックされるかと思いますが、取材準備にかけられる時間も限られているわけですから、すべての作品はチェックすることはできませんよね。どのような作品を重点的にチェックするのか、基準はありますか?

藤津ひとつは「誰もが想像する、その方らしい役」の作品です。有名な役は僕もだいたい知っているのでいいんですが、もし観たことがない作品があれば1話ぐらいは観ておきます。

もうひとつは「その人らしくない役」です。たとえば宮本充さん(『文豪ストレイドッグス』森鴎外役、『THE ビッグオー』ロジャー・スミス役など)はクールな男性の役をされることが多いのですが、2001年版『フルーツバスケット』では草摩綾女というテンションの高い役を演じられていました。その話を出したら、やっぱり話が膨らんだんですね。

――話の引き出しを増やしておく、ということですね。

藤津:そのとおりです。事前準備はシミュレーションなんですよ。
まずクールな役で人気がある方なのでそのお話は絶対に聞きたい。だからそういう種類の作品を調べておく。その流れで現場のことも知りたい。だから音響監督と、同じ音響監督の作品についても調べておく。
ある程度お話が聞けたら、次は「でもこういう種類の役もやってますよね?」と方向を切り替えて話を膨らませたい。そのために少し違った役のことも調べておく……という風にイメージします。

インタビュー中に話題が途切れてしまうとその瞬間に相手のテンションが下がってしまうかもしれません。でも、シミュレーションしたうえで話の引き出しを増やしておけば、仮に話が途切れたり想定しない方向に行ったりしたとしても、別の話題を出して対応できます。そのための事前準備ですから、単に出演作を全部頭に入れておく、というようなことではないんですね。

――準備される時点で記事の仕上がりも具体的にイメージされているんですか?

藤津:いや、事前準備は原稿を書くためではなく、インタビューでの会話のためのシミュレーションなんです。

――準備の段階では原稿をどう書くかについてはそこまで詰めないんですね。

藤津:記事に必要な情報が事前にある程度決まっている2000ワード以下の原稿などであれば、記事内容を固めてからインタビューしてもいいと思います。
でも6000ワード以上のインタビューであれば、具体的な記事の構成を作るのはインタビューの後ですね。あまり事前に形を決めすぎるとインタビューがうまくいかないので。

――そういう面で失敗された経験はありますか?

藤津:「SPA!」時代に『もののけ姫』宮崎駿監督への取材があるということで、自分から手を挙げてやらせてもらったことがありました。
大好きな方へのインタビューにありがちなんですが、その方の本や過去の発言などを調べ過ぎていて「こう聞いたらこう答えてくれるに違いない!」と思い込んでいたんですね。

――分かります、自分の中でイメージを固めてしまうんですよね……。実際のインタビューではどうだったんですか?

藤津:やはりこちらが思っていたようなことは答えてくれませんでした(苦笑)。


富野監督もそうですが、トップクリエイターは日々先のことを考えていらっしゃるので、過去のインタビューと同じことを言うとは限らないわけです。
すると流れをガチガチにイメージしていたこっちは「あれ? 思ったような話にならないぞ!?」と固まってしまい、会話も弾まなくなってしまいました。

過去の記事やインタビューを読んでおくことはもちろん大事なのですが、「その話を聞きたい! それを引き出そう!」と思うと会話でなくなってしまいます。そこが分かっていなかったんですね。
結果的に記事としては形になったのですが、インタビューとしては苦い思い出です。

――シミュレーションといっても誘導尋問してイメージ通りのことを言わせるのとは違うんですね。

藤津ですよね。

――逆に「先入観を持たないために、何も調べずに行ったほうがいいんだよ!」という方もいますが……。

藤津:僕としては、それは調べ過ぎるよりもダメだと思います。話に乗れないから途切れたら終わりですし、誰でも聞くような普通の質問をプロフェッショナルである相手に対してするのは失礼です。
また、基本的な質問はいろんな場で何度も答えているでしょうから相手もうんざりしますよね。

――相手の立場になって考えると、そうですよね。

藤津:アニメ!アニメ!さんのような専門メディアの取材であれば、インタビュアーはアニメ制作のワークフローや業界の直近のトレンドなど、基本的な知識や常識は知っておく必要があると思います。そういう意味での事前準備はいくらしてもいいと思います。

僕も今回声優さんにロングインタビューをするにあたって「演技者というのはどういう思いで取り組んでいるのか?」ということへの知識が不足していると感じていました。
そこで俳優の山崎努さんが『リア王』を演じた時の日記(『新装版 俳優のノート(文春文庫)』)や演出家の方の本などを何冊か読んで、声優という役者の方がどんなことを思って役に取り組まれているのか、どういう演技をいい演技と考えているか、などのイメージを持てるようにしました。

こういった知識がインタビューの際に直接役立ったわけではありませんが、相手の方が言ったことを受け取る力は確実に上がりましたね。



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《いしじまえいわ》
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