
英雄になることを夢見て迷宮都市オラリオにやってきた主人公のベル・クラネル。小さな女神ヘスティアの眷属となり、冒険者として活躍する日々の中、神月祭の夜に選ばれた者にしか抜けないと言われる伝説の「槍」を引き抜いたことで、女神アルテミスと出会って新たな冒険が始まる。

劇中ではベルとヘスティア、アルテミスの3者を通して恋を語る場面が多く出てくる。三大処女神に名を連ねるヘスティアとアルテミスは、共にベルに対して特別な想いを抱く。ベルは言う「女の子は守るものだって、おじいちゃんが……」。ヘスティアは言う「ベル君はボクの宝物なんだ」。アルテミスは言う「神は人間と一万年の恋をする」。
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ヘスティアとアルテミスのふたりは、“処女神”の言葉からすると、恋愛とは無縁なイメージを持つ人が多いのではないか。
そこで、本稿ではギリシア神話における2人の恋愛にまつわるエピソードを紹介することで、これから映画を観る人により楽しんでもらいたい。はてさて、二人は本当に恋愛に無縁だったのだろうか?
■ヘスティア
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『ダンまち』で「ロリ巨乳」とあだ名されるヘスティアは、ギリシア神話で炉の女神だ。炉は家の中で調理や暖をとるために使われる“家庭”の象徴であることから、ヘスティアは家庭守護の女神として祀られた。
劇中でアルテミスが、天界時代のヘスティアは「引きこもっていた」と言うのは、家庭の炉としての立場に由来しているからだろう。
また、実はヘスティアは、最高神ゼウスの姉であり、オリュンポス十二神にも数えられる。ただし、ギリシア神話において目立ったエピソードは少なく、影が薄い。
それでもモテた逸話として、海の神ポセイドンと光明神アポロンに求婚されたことがある。しかし、その申し出を断って、永遠の処女であることを望んだという。
ベルが可愛くて仕方がないため、彼以外の団員をなかなか増やそうとしないヘスティアだが、劇中ではベルと仲良くする友人のアルテミスを見てヤキモチを焼く姿が見られる。
「ベル君にドキドキするこの気持は何なんだろう?」と相談されて「ドキドキなんかしちゃダメだ!」と答え、「ヘスティアにとってのベル君は?」と問われた際には「ボクの宝物なんだ」と答えるなど、地上に降りてきたことで変わった彼女が見られる。そのギャップが可愛らしい。
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