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今回は高杉さん&牛嶋新一郎監督&三田圭志プロデューサーにインタビューを敢行。牛嶋監督も「高杉さんの声を聞いていると、温泉に浸かっているような気持ちになる」と評する高杉さんの“声の魅力”、そしてアニメならではの『キミスイ』の魅力について語り合ってもらった。
本作の主人公は、他人に興味を持たず、いつもひとり本を読んでいる高校生の「僕」。膵臓の病気を患った少女・桜良に振り回されながらも、少しずつ「僕」の心が変化していく姿を描く青春ストーリーだ。
――「僕」役に高杉さんを抜擢した理由を教えてください。
三田P
高杉さんの朗読の声を聞かせていただいたことがあって、すごく素直でまっすぐな印象を受けました。監督にも意見を聞いて、とても「僕」役に合っているなと話をして。「僕」は感情を押し殺す難しい役どころでもありますが、きっと期待に応えていただけるのではないかと思い、お願いしました。
牛嶋監督
落ち着いた少年である「僕」と、溌剌とした桜良。声の印象としても、その2人の差がつくといいなと思っていました。なので「僕」役は、少し低い声の方にお願いしたいなと思っていたんです。そんなときに高杉さんの声を聞かせていただき、すごく合うなと感じました。まさに「見つけた」という思いでした。
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――高杉さんにとっては、声優初挑戦です。もともとアニメがお好きだとも伺っていますが、オファーを受けてどのような感想を持たれましたか?
高杉
小さな頃からアニメが好きで、実家の福岡にいる頃はケーブルテレビがあったので、古いアニメもたくさん観ていました。東京に出てきたときはケーブルテレビがなくなったので、どうしようかと思ったくらいで(笑)。結果、深夜アニメに出会って、それからはガッツリと深夜アニメを観るようになりました。それくらいアニメが好きなので、声のお仕事は、自分が本当にやりたかったお仕事のひとつでもあって。だからこそ、出演が決まった際はとてもうれしかったと同時に、緊張も込み上げてきました。
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――夢が叶ったということですね!それは確かに緊張しますよね。
高杉
思いの丈がありすぎて、ものすごく緊張してしまったんです(苦笑)。初めて演技したときを思い出しました。また、自分が見ていたモノや、聞いていたモノとのギャップ。いわば、現実と夢のギャップがあったので、それをどう埋めたらいいんだろうと悩みました。家でどんな練習をしたらいいんだろうと…。実写も声のお仕事も、キャラクターのことを考えて役作りするのは同じですが、声のお仕事にはそれを表現するための特別な技術が必要だと思ったんです。アフレコの初日、第一声は特に緊張しました(苦笑)。
牛嶋監督
すごく早口になっていましたね。ゆっくりでいいですよとお話ししたのを覚えています(笑)。「僕」は、大きく表情が変化しないキャラクターでもあるので、演じるにはとても難しいだろうなと思っていました。でも高杉さんは、少しアドバイスするだけで、すぐに役に馴染むような形で演じていただけました。本当に、回を重ねるごとにどんどんよくなって。特に思い出すのは、「僕」が涙するシーン。こちらももらい泣きしそうになるくらい、すばらしい演技をしていただきました。やっぱり役者さんはすごいなと感動しました。
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三田P
僕もとても驚きました。アフレコ前から役を自分の中にしっかりと落とし込んで来ていただいたのはもちろん、もしかするとアニメがお好きとあって、いろいろな知識がおありだったのかもしれません。現場としてはとてもやりやすく、ありがたかったです。
――緊張は、ほどけていきましたか?プレッシャーを乗り越えた秘訣があれば教えてください。
高杉
やってみて、やはりとても難しかったですし、ずっと緊張はしていました。ただ現場のみなさんがとてもいい雰囲気づくりをしてくださったおかげで、すごく集中できました。そして今回、すべてストーリーの順番通りにアフレコをさせていただいたので、感情の部分も入り込みやすかったと思います。現場のみなさんに、たくさん支えていただきました。
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――『キミスイ』最後のメディアミックスとして、劇場版でのアニメ化が実現しました。本作の、アニメならではの魅力はどんな点にあると思われますか?
三田P
「僕」が桜良と心を通わせて、それが「僕」の成長につながる。命を扱う物語であると同時に、青春の一瞬の輝きを映し出しているのが、『君の膵臓をたべたい』の魅力だと思っています。今回は、その輝きをフレッシュに描きたいと思っていました。アニメならではの魅力のひとつは、桜良というキャラクターです。ともすれば暗くなってしまうキャラクターを、アニメというツールを使えば、マイルドにまた違った形で表現できるのではないかと感じました。すべてにおいて映像美にこだわって作ってきましたので、新たな魅力を感じていただける作品になったと思っています。
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牛嶋監督
取り掛かるにあたって原作を何度も読み返したんですが、伏線が回収されていなかったり、キャラクターの行動が説明されていなかったりと、読み終わった人が「こうだったのかな」といろいろと考えることができる内容だと感じました。そういった余白の部分は、『君の膵臓をたべたい』の魅力のひとつでもあります。本作をつくる上でも、その読後感や“揺らぎ”は大切にしたかった。大人の感覚で理詰めにしてしまうと、ちょっと違う方向に行ってしまうなと…。原作から受け取った印象を素直にアニメとして表現できればいいなと思っていました。本作も観終わった後に、自由に自分なりに想像していただけたらうれしい。それこそが、『君の膵臓をたべたい』の読後感に通ずるものだと思っています。
高杉
「僕」役を演じるにあたって、実写版はあえて観ないようにしていました。声のお仕事という未知なものに挑戦することもあって、観てしまったら、どこか実写に引っ張られてしまうのではと不安に感じたんです。自分が原作を読んで受け取ったこと、監督に言っていただいたことを大事に、しっかりと表現できたらと思っていました。僕自身、物語の途中時点で、桜良と「僕」をこのままでいさせてあげたい、幸せになってほしい…と感じたので、人の心を動かす力のある作品だなと思っています。
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――また声のお仕事にチャレンジしてみたいですか?
高杉
また機会があれば、ぜひチャレンジしてみたいです!今回、声のお仕事をいただいて、役者を続けてきてよかったなと思いました。やっているときはとにかく必死で、試行錯誤している毎日でしたが、終わってみるとすごく楽しかったなと(笑)。これまでやってきたこととは違う世界を学ぶことができて、お芝居にもいろいろなやり方があるんだと知ることができました。また関われたら、すごくうれしいです。
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三田P
高杉さんを見ていて「短期間のうちに、ここまでよくなるものなんだ」と驚いたんです。最初と最後のシーンでは演技も変わってきていたので、実は最初のシーンは、後から録り直しをさせていただきました。それくらい、進化していました。今回は劇場版でしたが、またテレビシリーズなど長いスパンでご一緒したら、高杉さんはもっと進化していくんじゃないかと思っています。
牛嶋監督
日を追うごとによくなっていくのを、目の当たりにしていました。実はそれって、内容としてもすごく面白い作用をもたらしていて。「僕」と桜良は、最初はとてもぎこちない関係性。ともに時間を過ごすことで、その掛け合いがどんどん気持ちよいものになっていくので、見事にその関係性を映し出すことができた気がしています。そして、やっぱり高杉さんの声自体がとてもいい。すごく低くて、重低音に包まれるような感じがするんです。聞いていると、まるで温泉に浸かっているような気持ちになってくる(笑)。
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高杉
ありがとうございます。めちゃくちゃうれしいです!テレビシリーズだなんて……いつかやらせていただけたら、本当に感激です!