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大学の芸術学部出身のイラストレーターでありながら、中国の3Dアニメやゲームの公式コスプレイヤーとしても活躍。中国最大のSNS・Weiboでは86万人以上のフォロワーを持ち、近年は日本でのコスプレ活動が増えており、SNSで話題になったり、メディアで取り上げられたりしている。
Twitterでも11万人以上のフォロワーを持ち、日本で活躍する中国コスプレイヤーの中でもとりわけ知名度が高い小柔SeeUさん。「世界コスプレサミット2018」のゲストコスプレイヤー、さらには自らキャラクターデザインをしたVチューバー・ニジキユイお披露目イベントで来日したタイミングに、どのようにして美しいコスプレが生み出されるのかを訊いた。
コスプレを始めたのは大学生になってから
ーーコスプレを始めたきっかけを教えてください。
小柔SeeU
大学に入学したのをきっかけに始めました。ずっとアニメやマンガが大好きだったので、コスプレ社団(中国にはいくつものコスプレをする人が所属する団体がある)に入ったんです。最初にしたコスプレ作品は『魔法少女まどか☆マギカ』でした。
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ーー振り返ってみると、最初のコスプレはどうでしたか?
小柔SeeU
初めてのコスプレだったので、ウィッグカットやセットが上手くできませんでした。髪型や衣装も十分にキャラクターに近づけられていなかったと思います。その時から反省を活かしてステップアップしていこうと努めて来ました。
ーー現在は1年でどれだけの作品のコスプレをしていますか?
小柔SeeU
公式コスプレイヤーなどお仕事の依頼は別として、毎月2~3キャラクターは新しくコスプレをしています。今でも動漫展(中国のアニメやマンガを中心とした同人即売会)など国内のイベントに年十数回は参加しています。
ーーコスプレを続けている理由はなんですか?何を得たと感じていますか?
小柔SeeU
私がコスプレを好きなことだからということも大きいと思います。コスプレをするのが楽しいから自然と続けることができました。1年ごとに自分の成長も感じられますし。
ーーコスプレをして来て大変だったことはありますか?
小柔SeeU
外でのコスプレ撮影は大変なことが多いですね。たとえば夜に撮影する時は周りがとても暗いですし、夏は蚊が多いです。
だいたい自然が良い場所で撮影するので、足下もはっきり見えないのも危ないです。無事に撮影を終えることができるようにするのも大切なことです。
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ーーコスプレ撮影にあたっては、どのように取り組んでいますか?
小柔SeeU
自分が切り取りたい作品のワンシーンを再現するにあたって、自分なりの考えや表現手法を入れることはあります。同じシーンを何度も角度を変えながら撮り直して、キャラクターの内面、もしくはしぐさがどれだけ再現できているかを突き詰めるようにしています。
中国と日本のコスプレの違い
ーー中国では武侠作品を基軸にしたアニメやゲームが多いです。そういった作品のコスプレもしていますが、日本のアニメとは全くジャンルが違うと思います。どのように演じ分けていますか?
小柔SeeU
中国ではクンフーを扱った小説やアニメ、ゲームが多くあります。そちらのコスプレはウィッグを使わずに自分の髪の毛をセットして撮影します。
ウィッグを付けると見た目では違和感が出ることが多いからです。また、服装なども日本のアニメとはデザインの方向性が大きく違います。
武侠作品コスプレと日本アニメなどのコスプレは、見ている層が違いますので、写真の撮り方なども変えなければいけません。
私が行う武侠作品のコスプレ写真に関しては、衣装の動きが感じられることが大事です。そのため、カメラマンの助手に裾や袖を引っ張ってもらった衣服が風に流れているような演出をします。
日本アニメ作品のコスプレ写真に関しては、それほど衣装の動きを求められていないと感じています。その代わり、活発な動きのあるポーズが好まれているのではないでしょうか。それぞれの違いがあるので、どちらのコスプレも楽しいです。
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ーー中国と日本では好まれるコスプレ写真に違いはありますか?
小柔SeeU
違いはあります。中国では透明感のある写真や動きの大きい、光の色が華やかな写真が好まれます。日本では、可愛い少女の清純なイメージが伝わる写真が好まれるのを感じています。
ーー日本と中国のイベントでは違いはありますか?
小柔SeeU
中国のオタクイベントは大規模のものもありますが、多くは日本と比べて小規模で開催されることが多いです。そう感じるのは、私が日本で参加しているのがコミックマーケットや世界コスプレサミットのように大きいイベントだからかもしれません。とくにコミケは想像を超える人の多さでした。
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コスプレとイラストで表現したいことは
ーー日本でもあなたのコスプレ作品はまるでCGアニメのような美しさだと絶賛されています。どのようにして生み出していますか?
小柔SeeU
事前の準備がとても重要です。アニメを何度も見直すなどのキャラクターの研究はもちろん、ウィッグや衣装のクオリティーを徹底的に高めないといけません。
細かい部分の見落としや手抜きも許されないです。撮影している時のウィッグの乱れや衣装のほつれも、完成度を下げてしまいます。
撮影する前からカメラマンと相談して、どのような構図を撮りたいか、どのようにすれば原作のキャラクターを再現できるかを決めます。それによって自分の準備に不足している部分があれば、気がつくのでさらに補うことができます。設計図のように全てが定まってから、やっと撮影にとりかかるようにしています。
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ーーそこまで準備しても自分の狙いとファンの受け止め方が違う場合もあると思いますが?
小柔SeeU
もちろん、あります。同じ写真を見ても人それぞれに見え方も違うでしょうし、伝わり方も違うはずです。受け止め方が違って当たり前だと思っています。私のコスプレも、自分の中の構築したキャラクター像を表現しているのにすぎないわけですから。
ーー日本の企業の依頼でVチューバー・ニジキユイのイラストデザインをしたと聞きました
小柔SeeU
日本の企業に依頼して頂いて描きました。ざっくりとしたイメージを伝えてもらって、そこに自分のアイデアを加えて、最後に合致させてデザインしました。最近は日本でもコスプレだけでなくイラストのお仕事も頂くようになってきました。
コスプレも絵を描くのもどちらも同じくらい好きですが、現在はコスプレにかけている時間のほうが多いですね。
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ーーコスプレとイラストでは自分の表現の仕方が違うと思いますが?
小柔SeeU
コスプレは自分の好きなキャラクターの行動を演じますが、絵を描くのは頭の中で描きたいことを浮かべる、もしくは様々な理由で自分が演じられないキャラクターを代わりに絵で表現する心境です。
ーーコスプレを通しての理想は?
小柔SeeU
私はコスプレをするのが楽しいので、このコスプレ愛を継続してコスプレしていけたらと思います。そのための目標も自ずと定まっていくと思います。
日本で活動する理由は最近の好きなアニメ
ーー現在は国内だけでなく日本など海外での活動も増えました。ほかの国のコスプレを見て感じることはありますか?
小柔SeeU
中国とほかの国のコスプレは違う所が多いと思います。ただ、私は自分が良いと思うコスプレをしているので、あまり比べたり強い影響を受けたりすることはありません。自分がそのキャラになりたいと思ってコスプレをする気持ちを大切にしています。
もちろん、「世界コスプレサミット2018」では各国のパフォーマンスは素晴らしくて、さすがは代表だなと思いました。良いと思う部分はたくさん学びたいです。
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ーーどうして日本でもコスプレ活動するようになったのですか?
小柔SeeU
日本がアニメの聖地だからです。ずっと日本に来たくて、日本の同人誌即売会やコスプレイベントに参加できたらとても幸せだろうなって思っていたので、それが叶ってとても嬉しいです。
ーーSNSではWeiboとTwitterを利用していますが、利用していて感じる違いはありますか?
小柔SeeU
Twitterは、ツィートした際にファン以外からの声も活発に寄せられるのを感じます。私のツィートを通して皆さんが意見を交わしあうこともあります。
Weiboは、自分のファンだけに向けて写真を公開している感覚が強いです。個人的にはTwitterが面白く感じています。ただし、中国国内ではサービスが規制されているため、ログインしている時間は短いです。
ーー最後に好きなアニメやゲームを教えてください
小柔SeeU
最近は『はたらく細胞』です。中国のアニメですと『一人之下』(武侠アニメ)です。
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小柔SeeUさんのコスプレはアニメキャラクターの再現度の高さもさることながら、透明感ある美しさが最大の特長だろう。また、インタビューをしていて、目を逸らさずに質問の意図を理解しようと耳を傾けてくれる姿勢に、コスプレイヤーとしての姿勢をかいま見た気がする。
画像提供:小柔SeeU(Twitter:@seeu_cosplay、Weibo:@小柔SeeU)
取材協力:寒黙(@nigellizhe)