押井守×鈴木敏夫が早大生へ語る、映画と「ガルム・ウォーズ」への思い | アニメ!アニメ!

押井守×鈴木敏夫が早大生へ語る、映画と「ガルム・ウォーズ」への思い

イベント・レポート

   
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4月16日(土)、都内の早稲田大学大隈記念講堂にて映画『ガルム・ウォーズ』の先行上映、および、押井守監督と日本語版プロデューサーの鈴木敏夫によるスペシャルトークイベントが開催された。本イベントは早稲田大学の人気講座「映画のすべて マスターズ・オブ・シネマ」の一環で行われたもの。同講座は2005年から開講され、11年の間に多くの著名人がゲスト登壇してきた。
今回は5月20日(金)にいよいよ全国公開を控える実写SF映画『ガルム・ウォーズ』の先行上映も行われるということで多くの早大生、また一般聴講生が集まった。

本編上映後、早稲田大学基幹理工学部講師の元村直樹を進行役に、壇上に押井守監督と鈴木敏夫プロデューサーが姿を現すと大きな拍手が送られた。
まずは本作が完成に至るまでの簡単な経緯が語られた。『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』制作後に当時のバンダイ映画部門から巨額の予算で「大作を作って欲しい」とオーダーを受けた押井はデジタルエンジン研究所を立ち上げ『ガルム戦記』というタイトルで制作を進めた。3年でシナリオ、コンテ、ロケハン、パイロット版制作などを行った後、諸般の事情で中止命令が下り、制作は暗礁に乗り上げた。
諦めきれなかった押井は構想を温め続け、ある時期に企画を改めて出したところ予算が通ったのだという。それもカナダとの合作、カナダロケ、キャストは全てカナダ人、完成までの全行程をカナダで行うという条件付き。完成した映画は北米、ヨーロッパで順次公開を終えるも、日本での公開に辿り着けないまま。そこでProduction I.Gの石川光久社長とスタジオジブリの鈴木の協力があり、公開へと至ったということだ。

なぜ関わることを決めたのか、鈴木は「押井さんが作ったのはカナダ版。全員が英語で喋ってる。じゃあ日本語版があってもいいんじゃないかと思って携わることにしました」と語った。押井は「日本語版で興味を持ったら英語版も見てほしい。両バージョンの中で変わらない所があるとしたら、それが“核”だと思う」と述べた。
なお、日本語版のキャッチコピー【この国が棄てた幻想を、再び。】を虚淵玄が、日本語版制作・演出を『パシフィック・リム』の吹き替え版などを手がけた打越領一が務めている。メインキャストは壤晴彦、星野貴紀、朴ロ美が担当している。

本イベントは講義である特性上、早大生からの質疑応答の時間もたっぷり設けられた。「『ガルム・ウォーズ』に影響を与えた作品を3つ教えてください」という押井への質問では、押井は『マクベス』(1971年、ロマン・ポランスキー監督)、『レッド・アフガン(原題:The Beast)』(1988年、ケヴィン・レイノルズ監督)、『ドラゴンクエスト』(RPG、TVゲーム)を挙げた。
その上で、「剣と魔法の世界の世界の代わりにテクノロジーとミリタリーで描いてみようと思った。戦後日本でそれをやってきたのはアニメだけ。僕らは完全な異世界を作り出せるという、映画が魔術だった頃を取り戻そうと思っていた」と本作へと至る思いを述べた。
鈴木は押井が挙げた作品例を聞き、「現代では過去のものをうまく引用することが大事」とコメント。それに乗るように押井は本作について「北欧・ケルト神話や旧約・新約聖書も入ってる。いろんなものの折衷をして、自分の中に神話体系を作っていくこと。古典の教養は非常に大事です」と熱く語った。

雑談の中から、鈴木は「押井監督は人形やメカ、“人間が作ったもの”に興味があるよね。これは宣伝上言っていいと思うから言うけど、カラ(主人公)も実はそう。これは押井作品を観る時のヒントになるんじゃない?」との話題へ。それに対し押井は「子どもの時から人間的なものがいやだった。腐ったりドロドロになったり、そういう文学的な世界に対する拒絶感がある。それよりも廃墟といった、作ったものが失われていく過程に興味があるんです」と語った。
他にも「創作のきっかけはどこにあるのか」という学生からの質問に、押井は「昔は『自分の作りたいモノ』をずっと考えてたけど、今は発注があるまで何も考えない。人から与えられるテーマをどれだけ広げられるか考えた方がブレないで着地できる。最近は本、それも飛行機や軍艦の本を読みまくってます」と告白した。

トークイベントの最後に本講座に出席した学生にアドバイスを、と求められると押井は「映画監督になりたいなら別のジャンルで偉い人になりなさい。でなければ、もの作りの中で向いていることを探した方がいい。向いていることというのは飽きないこと。僕は全てのこと――生きることにもとっくに飽きてるけど、映画のことに関しては未だに飽きたことがないです」とコメント。
鈴木は「映画は1人ではなくて、仲間と一緒に作るもの。仲間を集められる才能があるかどうかというのも大きいような気がしています」と締めくくった。1時間半にわたるトークイベントが終わり、2人は大きな拍手に包まれながら舞台をあとにした。
[細川洋平]

*朴ロ美のロは(王へんに路)
《細川洋平》
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