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「アルスラーン戦記」作曲家・岩代太郎インタビュー 音楽制作や生誕50周年への想いを語る

『アルスラーン戦記』の劇伴でも知られる岩代太郎が、生誕50周年と作曲家人生25年記念したコンサート「岩代太郎とアルスラーン戦記×アジア映画音楽」を開催する。これを機にその音楽制作について伺った。

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■ メインテーマは1年後を見据えて作曲する

――楽曲の制作作業についも伺わせてください。そもそも、曲を作る時にはどれくらい作品の情報をインプットするものなのでしょうか?

岩代
極めて少ないですよね。ストーリーボードと、キャラクターの絵と、後はおおまかな話の流れ。映画の場合は、撮影が始まる前に脚本の決定稿が完成しているので、その脚本を読み込んでいって音楽の世界観を導きます。そこから、その映像作品の中で音楽が担うべきものは何なのか、何を表現するべきなのかを紐解くんです。それがテレビシリーズになると、最初から全部の脚本ができている訳じゃない。でも、だいたいの構成はあるので、例えば『アルスラーン』なら、ここで隣の国が出て来るんだ、とか。ここでまたお父さんが出て来るんだ、とか。そういうエピソードを見て「ああ、なるほど」と理解します。

――情報量の少ないなかで音楽を作るのは、非常に難しいような気がします。原作から情報を得ることはないのでしょうか?

岩代
漫画は静止画で感じる世界観で、動画で感じる世界観って違うんですよ。だから動画である映像コンテンツを手掛けるにあたって、そのヒントを漫画から得ようとすることはまずないですね。アニメーションの場合は、脚本もだけど絵コンテとか、キャラクターの設定画といった資料が送られてきます。

――そうなのですね。

岩代
当然、1クールなら1クール、2クールなら2クールを通して、その物語の最後に何を伝えたいのかは監督らスタッフとのディスカッションがあります。その“伝えたいこと”はメインテーマに関わってきますよね。
だって、メインテーマは最終回のクライマックスにも流したいからね。逆に言うと、クライマックスに流せないようなメインテーマってキツイじゃない(笑)。でも、2クールのアニメとかだとオンエアの1年くらい前にレコーディングがスタートするから、その時点でラストを見据えていなきゃいけない。そういう意味では、制作の仕方は大河ドラマに近いかも知れないですね。大河ドラマは1年もやるし、レコーディングの時は映像もなく、大まかなストーリーの組み立てを元にして曲を作るからね。


――作品に使用する音楽は、そのメインテーマのレコーディング時に全て録ってしまうのですか?

岩代
2回までやることはあります。とはいえ、2回目の時も最終回までの全ての絵素材はないですね。そこはもう言葉のやりとりです。どういう風にクライマックスへ持っていくか、みたいなことは監督や音響監督とイメージを共有するために話し合います。

――『アルスラーン戦記』のレコーディングは何回だったのですか?

岩代
『アルスラーン』は2回レコーディングしましたよ。全部で7、80曲くらいはあったと思いますが、それを半々で収録するのか、1回目に重きを置くのか、2回目かってところは議論になりました。限られた時間とお金をどう配分するか、ということですね。結果として1回目のレコーディングで、7割のお金と時間を割いたかな。曲数としては5、60曲くらいですね。僕が知る限りだけど、最近の日本のアニメの音楽制作としては、相当規模が大きい方じゃないかな。

――制作期間はどれくらいでしたか?

岩代
一ヶ月ないし、一ヶ月半くらいだったかな。僕が頂くお話は何故か「大きい編成でドンとやってください」みたいなのが多いから。となるとフルオーケストラのスコアを書かなきゃいけない。やっぱり一ヶ月から一ヶ月半くらいはないと間に合わないんですよね。
《キャプテン住谷》
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