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「アーロと少年」インタビュー 松重豊、八嶋智人、片桐はいり:T・レックス一家は吹替えも豪華

ディズニー/ピクサーが贈る感動のアドベンチャー・ファタジー『アーロと少年』は3月12日(土)に全国公開。今回は日本語吹替を務めた、松重豊さん、八嶋智人さん、片桐はいりさんにお話を伺った。

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――演劇とアニメーションではお芝居にどのような違いがあるのでしょうか?

八嶋
アニメーションではキャラクターがすでにお芝居をしているんです。だから僕たちの方からキャラに寄り添っていく必要がある。自然と一人で芝居をするときと違う感覚が生まれてきます。その代わり、役にハマるとすごく気持ちいいんですよ。

松重
松重豊でも、八嶋智人でも、片桐はいりでもない。キャラクターそのものになれるんです。自分たちが顔を出して演じるのとまた違った喜びと面白さがあることは、声のお仕事を頂くようになって初めて気付きましたね。

八嶋
ディズニー/ピクサーは要求されるお芝居のレベルも高いんです。目線のやりとりでちょっとした瞬きを入れたり、呼吸を交えたりと非常に細やかです。それにオリジナルは英語なので、日本語の喋り方とは異なる部分も多い。たとえば否定するときは頭に「No!」と付けることが多く、日本語では声と動きをシンクロさせるために倒置法を取り入れたりもする。そういった翻訳の部分も原語に上手く馴染ませてあります。

松重
それらを摺り合わせて、向こうのリップに芝居がマッチした瞬間は鳥肌が立つんだよね。もう自分の声じゃなくて完全にブッチの声になったと実感できる。役者にとって究極の喜びは「本物にしか思えなかった」と言われることです。そこを最終的に目指しているので、自分が恐竜の影に隠れてしまった方が、してやったりな気分になります。『アーロと少年』のアフレコは一人ずつの収録でしたが、それもちゃんと意味があってのことなんですよ。私たちがこうやって一つに集まってしまうと、どうしても3人が自分の空気を作ってしまう。それでも芝居は成り立ちますが、やはりT・レックスの一家にはなりません。アフレコを別撮りしたがゆえに映画では僕らは消えてしまって、恐竜同士のお芝居が生まれたんだと思っています。

■ コメディはカートゥーンから学んだ

――ディズニー/ピクサー作品にはどう接してきましたか?

松重
唐沢寿明君と一緒に芝居をしているとき「CGのアニメで声をやったんで子供と観に行ってよ」と招待券をもらいました。その作品が『トイ・ストーリー』だったんです。それから20年以上、子供の成長と一緒に作品を観続けてきました。

八嶋
僕は『モンスターズ・インク』を観たとき、「このレベルの作品がフルCGで作れるなら、役者は必要なくなるんじゃないか」とショックを受けました。しかもNG集まで付いていて、キャラクターが本当にミスをして素に戻ったようにしか見えない。「こんなことをされてしまったら生身の人間なんていらないじゃん!」と恐怖しましたよ(笑)。

片桐
私も映画館で働いていたとき、毎年夏にディズニー作品を上映していたので必ず観ていました。私たちの世代はディズニーに限らず、アニメーションの動きにかなり影響を受けた世代だと思っているんですよ。人間よりアニメーションの芝居を舞台に逆輸入した部分が大きいと思っています。

松重
それは分かるなぁ。私たちはバスター・キートンやチャップリンといった喜劇役者よりは、むしろ『トムとジェリー』などアメリカのカートゥーンによってスラップスティックを植え付けられた世代なんですよ。

八嶋
劇団でもカートゥーンのような芝居をやりたいという気持ちが強いですよね。頭の中ではアニメキャラのように足がクルクル回転したり、体がビヨーンと伸びたり……。

片桐
驚いたときにガーンと顎が外れたりね(笑)。そういうことをイメージしているんです。

松重
コントやギャグなど、ズッコケの基本はアニメーションから学びました。

片桐
ミッキーマウスたちから影響を受けたことは多いですよ。


――『アーロと少年』でお気に入りの場面を教えて下さい。

松重
やっぱり冒頭シーンですよ。恐竜を絶滅させるはずだった隕石が地球を素通りして、恐竜たちがフッと振り返る。あの場面には思わず笑っちゃったよ。

片桐
もっと盛り上がるシーンなのかなと思ったら意外にあっさりしてて(笑)。

松重
今回はコミカルな作品なんだなと安心して膝を崩したら、本編は笑うどころか色々と考えさせられるストーリーになっている。そこは映画を観てからのお楽しみというところで(笑)。だけど『アーロと少年』はあれだけの大冒険を繰り広げておきながら、意外にサッと終わるんですよね。何だか「ここから先は私たちが考えていくんだよ」と言われているようで、オジさんの涙腺が刺激されました。そういった想像力にも働きかけてきます。

八嶋
僕は『カールじいさんの空飛ぶ家』が大好きなんです。普通の作品だったら「年を取っていても冒険に出よう」というところで終わってしまうものですが、ディズニー/ピクサー作品はもう一歩先に踏み込んだ世界を見せてくれる。『アーロと少年』も未熟な主人公が旅に出て成長するという、それこそ神話の時代から受け継がれてきたオーソドックスな構造ですが、本編ではもう一個大きな成長が描かれている。本当の強さとはこういうことなんだと実感できる物語になっていますよ。

片桐
言葉が通じないアーロとスポットが冒険を通じて友情を培っていく。その中で二人が出会うものがきめ細かく描かれていて、そこに注目すればまた違った何かを感じ取れるのかなと思いますね。

八嶋
父親という存在も重要なものとして描かれていまね。アーロのお父さんの言葉を聞くと「アメリカという国も様々なことを模索しているんだな」と大人は感じてしまう。もちろん子供たちはそんな難しいことを考えなくても、純粋に楽しむことができる。

松重
本編前に流れる短編アニメーション(『ボクのスーパーチーム』)もオリエンタルな世界観が楽しめて面白かったよね。『アーロと少年』のピーター・ソーン監督もアジア系ですし、そこが僕らにも響くところなのかなと。

八嶋
監督は『カールじいさん』の少年・ラッセルのモデルなんだよね。

片桐
本当にそっくりでビックリした!

八嶋
『アーロと少年』でも声優を担当していますし、ピクサー社内ではムードメーカーなのかも知れないですね。僕たちにもフレンドリーに接してくれて、ああいう人柄だからこそ作品にも温かさが生まれるんだなと感じました。

――本日はありがとうございました。


『アーロと少年』
3月12日(土)ロードショー
(c)2016 DISNEY / PIXAR.
《高橋克則》
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