アニメライターの仕事術-第18回「気が乗らない」という気分を利用しよう! | アニメ!アニメ!

アニメライターの仕事術-第18回「気が乗らない」という気分を利用しよう!

渡辺由美子さんの連載「アニメライターの仕事術」第18回目。「気が乗らない」「嫌な作業」を「楽しめる作業」に変換するには…。連載は第2・第4火曜日に更新中。

連載
注目記事
■難易度高めも単純作業も

「取りかかりの壁」が高いタスク!

※これまでの経緯が気になる方は【第12回】連載目次を参照して下さい。

前回、「タスクの取りかかりの壁が高すぎる問題」について書きました。今回はその続きです。

ある時、仕事原稿への現実逃避として同人誌原稿という別のタスクに取りかかったら、それである程度達成感を得た後に、本題タスクに着手することができた、という経験をしました。

なので、どういう場合に「課題の着手」ができずにつまづくんだろうと考えてみました。


私が仕事を先送りにしてしまうのはなぜだろう。
すべてのことが先送りになるわけじゃない。
先送りにするのは、〆切がゆるい作業だけじゃなくて、難しくて頭をすごく使ったり、単純作業の繰り返しなどの《やりたいと思えない作業に取りかかるのが嫌》なんだ。
取りかかるのが遅い上に、その後もしょっちゅう手が止まってしまうから、それが〆切原稿を抱えたままギリギリまでひっぱってしまう要因になっているんだなと。

とある仕事術の本には、「まず机に座って取りかかれば、だんだんそのことに集中して、目の前のタスクをこなすようになる」とありました。でも、テンションが上がらないとできない私のような性分の人間は、やる気が起きにくい作業を毎日同じ時間にルーチン化するのは難しい。

そこで、自分のこれまでの行動をよく思い出してみたんです。
《最初は「嫌だな」と思っていたタスクでも、ひとたびハマってしまえば無我夢中でやる》じゃないか、と。
たとえば、私が取りかかるのが面倒くさいなと思っている作業のひとつに「確定申告のレシート打ち」があります。単純作業なので取りかかる楽しみが少なくておっくうになりがち。あの数字を打ち込む気の遠くなる作業……。学生さんには、「伝票は、大人の写経」だと覚えてもらいたい。

そして誰からも催促されない。編集さんなら「経費の精算」等にあたるのでしょうか。

しかも日々の優先順位は低いにも関わらず、毎年、確定申告をする3月初めまでには絶対に終わらせなくてはならない。
“夏休みの宿題”は、大人になってもずっと続くのです。

■脳には「マイブーム」がある

でも、確定申告のレシート打ちも、取りかかってさえしまえば、わずか2日間で終わったりします。
やる気になってレシートの数字を打ち込んでいる最中は、脳内麻薬がどんどん出ている状態で、脳が「熱中して楽しい」と認識しているようです。

《最初は「嫌だな」と思っていたタスクでも、ひとたびハマってしまえば無我夢中でやる》。

性分的に、嫌なことを嫌なままでは頑張れない。「取りかかり」の敷居を低くするためには、「嫌な作業」から「楽しめる作業」に変換することが必要なんだ、と気づいたのでした。

楽しいと思ったことならどれだけでも頑張れる熱中気質を、「エネルギー」として活用することはできないかと考えてみました。

そして、ここがとっても興味深いことですが、
人は《同じタスクでも夢中になれる日とそうでない日がある》のです。

ある日、朝から机に座って原稿をやるのがどうしても嫌な時がありました。
その代わり、気になって仕方がなかったのが散らかった部屋! 「ああ、あのポスターなんでまだ貼れていないんだろう。ハンカチがきれいにたたまれてないよ。ペンがペン入れに入ってない。書類が散乱してクリアファイルに入ってない!」。
結局、その日の午前中は、仕事原稿をやらずに部屋を片付けことに熱中してしまいました(笑)。

それで「ああ、今日は仕事原稿はできないかもな……」と思っていたら、
午後からは新鮮な気持ちで楽しく取りかかることができたのです。

この現象は何を意味しているのかなと考えたのですが、
ひとつは、《身体を動かす作業をしたことで、脳がリフレッシュされた》ということ。
ふたつ目は、《「脳のマイブーム」は毎回違っていて、マイブームにしたがったほうが生産量は格段に上がる》ということでした。

■タスクの「組替え」でテンションを上げていく

そこで思い出したのがゲーム『艦隊これくしょん』(以下『艦これ』)。第2艦隊から第4艦隊までを、それぞれ所要時間が異なる「遠征任務」に出すのは、複数のタスクを組み合わせるガントチャートみたいだと以前からから思っていました。

この「異なる作業を組み合わせる」「作業の順番を自分で組み替える」という点が、仕事術への大きなヒントになりました。

熱中気質の人は、集中モードと飽きてしまう状態の落差が激しい。
ならば、「その時自分のやりたい事」に忠実になることで、自分をうまくノセてタスクに向かうマイブームを創り出す、そういうモードに自ら持っていくようにすれば良いのかなと考えました。

《作業の順番を工夫することで、テンションを上げられるのではないか?》

これが、次回に書く『艦これ』応用仕事術の肝になります。

■ 渡辺由美子(わたなべ・ゆみこ)
アニメを専門にするカルチャーライター。インタビュー記事、評論、エッセイなどの原稿を書いたり、誌面を構成したり。web媒体『ASCII.jp』で「誰がためにアニメは生まれる」を、隔月刊『Febri』で「妄想!ふ女子ワールド」等を連載中。単行本『ワタシの夫は理系クン』(NTT出版)など。渡辺由美子ブログはこちら。
イラスト・宮原美香
《渡辺由美子》
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