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■「終わらない気持ち」に区切りをつける
仕事が終わりません……。
1月の三連休明けまでに、提出しなければいけない原稿がたくさんあって、さっきまで、その「終わらない感」に苦しんでいました。
今は晴れて悩みが解決したところです。どうやって? というのをこれから書いていくことにします。
12月にもこんなことがありました。
12月中旬。年末進行の仕事を全部終えてやったーと思った時に、ふとカレンダーを見てみたら、実は「1月7日まで」の〆切仕事がまだたくさん残っていることに気付きました。
「これじゃあ終わりがまったく見えないよ……」と落ち込んでしまい、そのストレスで仕事の手が完全に止まってしまいました。
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同業者のみんなはどうしてるのかとTwitterで口をこぼしたところ、先輩ライターから返信が返ってきました。
「ライターが年またぎの仕事が多いのはしょうがない。その場合も、やはり自分で区切りをつけて、休むときはしっかり休むのが大切」。
そうか、「区切りがない状態」のときは「自分で区切りを作る」ことが必要なのか……!
私は毎年、お正月をできるだけ楽しむために、年明け〆切の原稿も年内に全部上げてしまうというやり方できていました。ところが今年はついにオーバーフロー。
年をまたぎたくなくて、年末までに「全部やらないと!」という気持ちになっていたのですが、ストレスでキーボードを打つ手が止まってしまうことがとても多くなっていました。
先輩の言葉でようやく区切りをつける大切さを知り、年内に送ったほうが先方が助かるだろう原稿と、年明けでOKの原稿を振分けて、年内までの原稿だけをえいやっとやりきって、無事にコミケに行くことができました(笑)。
■自分の「やる気のリズム」を知ろう
それにしても考えさせられたのは、「自分の気分を見越したスケジュールの切り方」です。
私には、仕事の手が止まってしまう時期がある。テンションが低くなって、原稿を書くやる気が起きなくなる。そんな「身体的・気分的なリズム」があることにぼんやりと気付いていました。
何年か前からつけている「作業記録表」を見返すと、次のことがわかりました。
書き方がわかっている原稿の場合、1日目が集中できる時間量のMAXで、2日目はそのMAX時間の3分の2。3日目はちょっと飽きが来て、午後からはやる気がなくなってきてしまう。そんなリズムです。
「リズム」という言葉は、「身体の声」というか、「気分の盛り上がり」にも相当するでしょうか。
原稿を書き始めて2日目の夕方くらいになると、「ああ、明日はこんなにバリバリ進まないんだろうなぁ」という負の予言が脳内に浮かびます。
同じ作業を3日も続けると、3日目には脳が飽きてしまい脳が停滞してしまうのです。
その3日間のうちに、取材や打ち合わせなどの「外出仕事」があれば気分はガラリと変わります。でもそうでない場合も多いのです。家にこもって同じ作業をしていると、だんだん頭が固まって凪いだ海のようになってきてしまいます……。
「自分の怠け心が3日で起きる」というサイクルがあることに気付いたことは進歩でした。
身体にもリズムがあるんだなとわかった時から、「常にベストコンディションじゃないといけない」という“ベストコンディション病”の心の枷が外れて少し気が楽になりました。調子が悪い日は「私には他の人みたいに根性がないからいけないんだ」とくよくよ自分を責めてしまうばかりだったので。
■気分を予測してスケジュールを立てる
「自分の仕事が進むリズム」=「気分の予測」がわかると、スケジュールの立て方に工夫ができるようになりました。
ひとつは、《作業内容の変更》。同じ原稿書きが3日間続かないように、3日目には(急ぎでなくても)別の原稿を書くためのテープ起こしをするなど、別の作業を組み込むようにしました。
もうひとつは、《場の変更》。3日間とも同じ場所では仕事をしない。1日目と2日目はコワーキングで作業をするとしたら、3日目は自宅作業に切り替えました。コワーキングのような人が多い場所は脳が活性化されますが、ずっと同じ空気にいると、やはり脳が飽きてしまいがちです。
自分のリズムを観測していると、もう少し長い期間での予測もできるようになります。
私の場合、「一週間に一度も仕事関係の人に会わない週」があると要注意。次に人と会う日が来るまでに、きっとエネルギー切れの日ができてしまう。残念な予想ができてしまいます……。
そんなときは極力《人と会う外出予定を入れる》ことを心がけます。
特に、友人とのお話会や勉強会、イベントなどの《時間に縛られる予約をあえて入れる》ことが重要でした。
これにはリフレッシュだけでない大きな効果がありました。
■「あと◯時間しかない!」という焦りを活かす
時間に縛られる予約をあえてする。これにはどんな効果があるかというと、「楽しみと焦りがセットになる」という点です。
実は原稿が一番進むのは、コミケの前とか、旅行の前だったりします。
「あと◯日しかない!」という焦りと、「入れた予定が楽しみだから頑張ろう!」という気持ちが入り交じるという気持ちが、原稿への集中力を高めるのだと思います。
たとえば「この原稿は17時までに終える」など、「数字」だけを目標にしても、つい先延ばしてしまうものです。そこに「行動の予定」を入れることで、仕事の「区切り」を作ることができます。
人気女性作家さんのエッセイに、「仕事を上げるコツは、夜にお友達とお芝居を観に行く約束を入れてしまうこと」とありました。その作家さんは大量の仕事をこなしていますが、モチベーションの源は、予約が必要な遊びにあるのでしょうね。アニメファンである私にも応用が効きそうです。
抱えている仕事を早く終わらせたいときは、タスクを終わらせられるであろう日の翌日に、物理的に動かしにくい楽しい予定を入れておきます。友達と会う、イベント、映画の予約など。特に映画はいいですよね。席を予約する時にクレジットカードからお金が引き落とされてしまいますから。かなり有効です(笑)。
以前の私は、まだ仕事が終わってもいないのに遊びの予約なんて入れたらいけないんじゃないかと思い、ガマンして、結局仕事に割り当てた日もストレスで進まず、これならイベントに行った方が良かったよね、と後悔することがたくさんありました。
自分のリズムを把握して、行動を伴う物理的な楽しみを先にスケジュールに入れてしまいましょう。今日もこの原稿が終わったら、予約したレストランに行くところです。
■ 渡辺由美子(わたなべ・ゆみこ)
アニメを専門にするカルチャーライター。インタビュー記事、評論、エッセイなどの原稿を書いたり、誌面を構成したり。web媒体『ASCII.jp』で「誰がためにアニメは生まれる」を、隔月刊『Febri』で「妄想!ふ女子ワールド」等を連載中。単行本『ワタシの夫は理系クン』(NTT出版)など。渡辺由美子ブログはこちら。
イラスト・宮原美香