アニメライターの仕事術-第21回「ゴールまであと20%」が一番やる気になる

連載・コラム

※久々に連載目次を更新しました。第12回~第20回までの経緯です。

★「予定を組む」と「結果を記録」の間には、そのタスクがどれくらい時間がかかるかという「見積もり」が必要だとわかりました。【第12回】

★「見積もり」をアナログで認識したかった私は、カレンダーの1日のマスごとに「1枚=1時間」を表わすフセンを貼ることにしました。【第13回】

★集中したいのにできない、それには「朝一コアタイム」を設けることが有効でした。
自分の《心の軸》を決めることで集中しやすくなりました。【第14回】

★「見積もり表」だけでは焦ることができない! そんな時に出会ったのがゲーム『艦隊これくしょん』。
感情によってタスクの所要時間が変わったりしないと気付きました。【第15回】

★タスクを効率よくこなすためにタイマーを使ったら、テンションを下げるばかり。
「時間区切り」から「タスク区切り」へと大きく舵を切りました。【第16回】

★私にとって最大の懸案事項は「取りかかりる最初の階段が怖い」ことだと気付き、対策を考えました。【第17回】

★最初は「嫌だな」と思っていたタスクでも、ひとたびハマってしまえば無我夢中でやる。
そうした「脳のマイブーム」を自分で作り出せないかなと考えました。【第18回】

★『艦これ』にヒントを得て、「本題タスク」に段階的に移行していく方法を書きました。【第19回】

★本題タスクに行く気力がない時に「こんなことしている場合じゃないのに」と思う気持ちを乗り越える“処方箋”を書きました。【第20回】←イマココ!

※さらにその前の経緯が気になる方は【第12回】連載目次を参照して下さい。


■「あと少し」のゴールが見えればやり遂げられる

最近、ランニングをぼちぼちとやり始めました。
前はこういう運動系はまったくやる気にならなかったのですが(笑)、何とか続いているのはスマホアプリ『Nike+ Running』のおかげです。走っている最中に「km通過しました」とか「1kmを何分何秒で走りました」というアナウンスが聞こえて、記録としても残るのですごく励みになります。

※【参照】『Nike+ Running』
http://www.nike.com/jp/ja_jp/c/running/nikeplus/gps-app

山登りの「ここは8合目地点」のように、「ただ今何km到達!」というマイルストーンはすごく大事!

外出したときにはマンションの9階まで階段で昇るようにしているのですが、その時には「階段を1階だけ昇ってみよう。疲れたらそこでエレベーターに切り替えよう」くらいの気持ちで始めるようにしています。
無心で上っていると、いつの間にか7階まで到達。「9階まで、あと2階分なら頑張ろう」という気持ちになれるのです。

私が目に見える形でマイルストーンを置くことが大事だと気付いたのは、ゲーム『艦隊これくしょん』の「任務達成表」でした。
任務アイコンの横に達成度が出るのですが、「80%」と表示が出ていたら、「あと20%ならせっかくだからクリアしたい」という気持ちになりました。

■ わざと「欠け」を作って埋めたい衝動を作る

「ゴールまであと少し残っている状態」は、タスクにとっても有効なようです。

IT系の方と話しているとき、大変興味深いことを聞きました。
「僕とかプログラマーの仕事仲間は、一日の仕事を終えるときにあえてキリが良い状態にしないんです。『やり残し』の部分を作る。そうすると、翌日はそのやり残しを埋めるところから作業を始めるから、すっと仕事モードに入れるんですよ」。

《あえてやりかけの状態を作る》! それは大きな発見でした。

タスクを終えるときに、わざとちょっと足りない形して、しかも自分の手が加わることで容易にクリアできる「やりかけ」の状態にしておく。
翌日、PCを立ち上げた脳に「これを完成させるには、ここに手を加えればいいのに!」と思わせると、モチベーション的にすごく取りかかりやすい。
作業の思考から言っても、《次にフォルダを開くときには、するべき事がわかっている状態》というのは大きいです。脳が「次にするべき事がわかっている」と、最初の階段がすごく上りやすくなります。

ジグソーパズルで欠けている部分が少しだけあったら、そのピースを埋めたい衝動みたいな感じでしょうか。『艦これ』の任務達成度の「あと20%を埋めてクリアしたい」も同様ですが、《人間には欠けた部分を埋めたい衝動があり、そこを自分で埋めると達成感を持つ》のかなと思います。

■ 凪いだ海になった脳に、変化を与える

取りかかる時のモチベーションを上げるために、「あえて欠けた部分を作っておく」という手法は、さまざまなことに応用が利く気がします。

私の場合、長文原稿に何日も取り組んでいると、進みにくくなる時期がきます。
「これをこうすると完成するんだな」という“頭の中の設計図”が完成してしまうと、頭の中が凪(な)いだ海のようになってしまい、ダレて進まなくなってしまうのです。

きっと、脳が「わかった!」という喜びで、一度達成感を得てしまうからなのかなと思います。

脳を飽きさせるのは、感情の上下が仕事に影響するテンション型にとって命取り。
それで考えたのが、わざと「欠けている」状態を作って、変化を起こさせる方法です。

私は、脳に「埋める喜び」を用意することにしました。
だいたいゴールまでが見えてしまった原稿には、あえて「欠け」を作る。
具体的には、本題とは直接関係ない整合性がとれない内容でも、面白いと思った事を、余談メモとして書き加えていく。
すると脳は、その余談をどうにかして本題原稿に入れようと画策します。

《少しわかると熱心にやるようになるのが脳の特徴》。
「この放り込まれたナゾを解き明かしたい!」「この欠けている穴を埋めたい!」という欲求を自ら作り出して、その穴を埋めることで達成感を得る。
変化と小さな喜びの両方を用意することで、原稿が完成するまでのモチベーションをキープする、そんな方法です。

タスクをこなすモチベーションの肝は「取りかかり」にあると書きましたが、タスクの山に登る足がかりは、「あと少しの状態を作る」「わざと欠けた状態にする」ことで、取りかかやすくなるのではないかと思います。

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■ 渡辺由美子(わたなべ・ゆみこ)
アニメを専門にするカルチャーライター。インタビュー記事、評論、エッセイなどの原稿を書いたり、誌面を構成したり。web媒体『ASCII.jp』で「誰がためにアニメは生まれる」を、隔月刊『Febri』で「妄想!ふ女子ワールド」等を連載中。単行本『ワタシの夫は理系クン』(NTT出版)など。渡辺由美子ブログはこちら。
イラスト・宮原美香
《渡辺由美子》

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