アニメライターの仕事術-第26回(最終回)奥義は「場所」と「人」にある | アニメ!アニメ!

アニメライターの仕事術-第26回(最終回)奥義は「場所」と「人」にある

連載・コラム

※前の経緯が気になる方は【第21回】連載目次を参照して下さい。

■「応援の声を聞く」は仕事術

1年続けた仕事術連載も、ついに最終回になりました。

最終回にあたって、担当の女子編集Tさんから「今まで連載を(一回も落とさずに)続けてこられた秘訣を」とリクエストがありました。
今回は、すごく明確でした。読者の皆さまと編集さんの「応援」があったからこそです。Web連載は反響の声がTwitterなどですぐにわかるのがすごく嬉しいです。本当にありがとうございました! 

編集Tさんには連載開始の時に「書くモチベーションを維持するために、原稿を読んだ感想をできるだけ下さい」などと結構無茶を申しました。本当にありがとうございました……!
「応援」って、連載ものの常套句として書いているわけではなくて(笑)、これも「応援の声を聞くための工夫」という仕事術なのです。

この連載ではこれまで、「テンションが下がると、仕事が全然進まなくなってしまう」私が、その悩みをどのように解決してきたかを書いてきました。
ラストは、私にとって一番大きなメソッドを書こうと思います。


■心身共にどん底に…浮上したきっかけ

数年前、私には仕事ができなくなってしまった時期がありました。
メイン仕事の原稿が進まないために、自信を失って、心身共にフリーズ状態になってしまったのです。
毎日人が少ないカフェにノートPCを持って原稿を書きにいっていたのですが、カフェの店員さんたちの楽しそうな様子に「なんで私はひとりなんだろう」と家に帰ると落ち込んでしまう日々でした。

浮上のきっかけは、当時メインにしていた仕事が、会社の事情によって終了してしまったことです。
「メインの仕事が無くなって浮上した」と言葉にするとちょっと不思議な気もしますが、“自分を支える柱がひとつしかない”危険性を実感したために、「仕事には幾つもの柱が必要なんだ」と気付くことができたのです。

「仕事の種類を増やしたい」と思ったのですが、その頃には、仕事を完成させる自信がなくなって、自分から編集さんに声をかけることすらできなくなっていました。

幾つか試した中で、浮上するきっかけになったのは、講座や勉強会などで異業種の人と会う機会を増やしたことにありました。
自分が行く講座の内容は「仕事とは直接関係がないけれども、仕事に役立つかもしれないジャンル」に絞ってみました。その時は、自分の仕事に直結しすぎているとよけいに落ち込んでしまうだろうな…と思ったのです。

講座の後にある懇親会では参加者と名刺交換をするのですが、その時に、自分がアニメ関連の仕事をしていることをさまざまな業種の人に話したのです。

自分がやっている仕事の楽しさや「アニメ」というジャンルの面白さ。そういったことを伝えていく中で「自分は今の仕事が好きなんだ」ということを思い出し、失われていた自信も少しづつ回復していきました。

人と会うことにも慣れて、編集者の友人に仕事を紹介してもらい、アニメ記事や連載などをもう一度書き始めました。
この「アニメライターの仕事術」は、どん底だった時期からの試行錯誤の集合体になります。気がついたら、以前よりもたくさんの仕事を楽しくこなせるようになっていました。

■モチベーションを上げるための「環境」を作る

仕事を続けていく自信を失ったときに、3つのことを心がけるようにしました。

《環境を変える》《つき合う人を増やす》《新しいことを始める》

「この職業はもうダメだ」みたいな声がネットなどで大きく聞こえてきたときには、別の分野の人と話す。そうすると、自分の工夫によって新しい仕事が生まれることに気付きます。

『どこでもオフィス仕事術』(中谷健一/ダイヤモンド社)に、「集中力は、場所を変えることによってある程度コントロールできる」と書いてありました。動作、音、人など自分に刺激を与えるものを活用して、集中できる環境を作り出すというメソッドです。

私の場合、浮上するために大きかったのが「コワーキング」の存在でした。コワーキングというのは個人単位のシェアオフィスのこと。数年前、家の近くにできたので通うことにしました。

メンバーには、web関係、会社員、専門職と、様々な業種や立場の人がいました。いろんな分野について見聞きすることで、新しい企画が浮かんだり、自分の持ち味がわかるようになってきました。

コワーキングのもうひとつのメリットは、「自分のことを知っていてくれる人がいる」という点です。フリーランスはひとりで作業をすることが多い。でも私の場合、ずっとひとりでいると、自分へのダメ出しが始まってしまうんですよね……。
コワーキングや、友人との作業会などはモチベーションを上げるのにとても有効でした。

自分を見てくれている人がいる、他人の目があるという状況だと、良い緊張感が生まれて頑張れる。そこで思い出したのが、高校時代に受験勉強で利用した町内の図書館です。小さな町で図書館がひとつしかなくて、行けば受験勉強をしている同級生が大勢いました。そうした環境によって、勉強をほとんどしたことがなかった私も自分なりに頑張ることができました。

■「他人」を活用する

原稿が進まないときに私が取る手法の1つが「聞いて聞いてメソッド」です。担当編集さんや、他の仕事仲間に「難航しているところ」を聞いてもらう。ぴったりの解決法を教えてもらうことができればラッキーですが、そうでなくても自分の考えをアウトプットすることで、「現在のつまづきの小石は何か」を発見できます。悩みを外部化することで客観視できるようになり、解決策を自分で思いつくことができます。

また、課題の山が高く見えてちゃんと進められるのかが心配なとき。そして直接の担当者に連絡を取るには敷居が高いとき。そんなときは、別の人たちとコミュニケーションを取ってみることがあります。
たとえば、少しためてしまったメール返信をする。いろんな人にメールをすれば個人作業の孤独感が薄らぎますし、返信されてきたメールに書かれている「短時間でできる依頼内容」を懸案事項よりも先に進めるのも有効です。小さなタスクでも達成感が得られて自信が付き、懸案事項も進むようになったりします。

他人の目ということで言えば、当時てこずっていたweb媒体の原稿ですが、新しく担当になった編集さんが、私の原稿について「ここは必要」「ここはカット」とスパーンとジャッジをするのが上手な方で、進みやすくなりました。
その編集さんのタイプは、全体から逆算して割り振りができる「トップダウン型」。
私のように、あれもこれも大事に見えて対象をクローズアップしてしまう「ボトムアップ型」とは正反対だったことがうまくいった要因かなと思います。

場所でも人でも、《自分が足りないものを補完する環境作りを意識する》ことが大事だなと思いました。
ひとり作業は孤独です。孤独と直接戦っても益はないので、孤独ではないように「環境」を整えていくのが吉だと思います。

■相手の「好きなところ」をみつけていく

この連載では、私は自分のことを「テンション型」と呼んできました。テンションのアップダウンに左右されて、コツコツとコンスタントに原稿が進まないことが悩みでした。
けれども「好きなものだと頑張れる」という大きな長所もありました。
だから、自分にとって最大の仕事術は《仕事相手の良い面を好きになる》だと思います。

「この人は、連絡はあまりしてくれないほうけど、こちらからのお願いはよく聞いてくれる人だな」など、相手の仕事のやり方や人柄にある長所をつかんで、好きになれる要素をどんどん増やしていく。
すると、「この人のために頑張ろう!」「この部分をこう仕上げると喜んでくれるはず」とモチベーションがアップして、ちょっと疲れているときでもエイヤッと完成してしまったりします。

私にとって最大のモチベーションは、「人」にありました。
それが仕事術を続けてきた中で発見できたことです。
読者の皆さんのモチベーションが、少しでも上がりますように!

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■ 渡辺由美子(わたなべ・ゆみこ)
アニメを専門にするカルチャーライター。インタビュー記事、評論、エッセイなどの原稿を書いたり、誌面を構成したり。web媒体『ASCII.jp』で「誰がためにアニメは生まれる」を、隔月刊『Febri』で「妄想!ふ女子ワールド」等を連載中。単行本『ワタシの夫は理系クン』(NTT出版)など。渡辺由美子ブログはこちら。
イラスト・宮原美香
《渡辺由美子》
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