アニメライターの仕事術-第23回「進捗いかがですか?」に負けない心

連載・コラム

※前の経緯が気になる方は【第21回】連載目次を参照して下さい。
の連載目次を参照して下さい。

■年末進行!「進捗いかがですか」問題

さて12月。出版社は「年末進行」という恐怖のシーズンに突入しています。
「年末進行」とは、印刷所や出版社などの関係各社が正月休暇を取るために、出版物の入稿スケジュールを前倒しにして進行することです。月刊誌なら、いつもは1ヶ月かけて作業をしているものを、10日も早く作業を終えなければなりません。
マンガ家さんなどがネットでつぶやいている、あれです。

さて、私の友人には編集さんも多いのですが、この時期になると泣きが入ります。
「作家さんに『進捗いかがですか?』って連絡しても、返事を返してくれないの~(泣)」

あ、ああ…そうね……。
ライターの私からすると、作家さんの気持ちがよくわかります。原稿が終わっていないときに「まだできていません」って連絡するの、すごく勇気が要るんだよね……。

昔は、電話が鳴ると怖くてよけいに手に付かなくなるので、電話の線をひっこぬいたこともありました。
メールでのやりとりが中心になってからも、怖くてなかなかメールチェックができなかったりして……。あの時はすみませんでした!(ご迷惑をかけた編集さんがいる方角に向かってお詫び)

さて、そんな自分がどうやって「進捗いかがですか」への対処法を身につけたのかを振り返ってみました。


■相手からの催促、その時できるアクションとは!?

悩みに悩んだ原稿がようやく進み始めたのはいいけれど、どうあがいてもあと数時間、いや半日はかかりそう……。そういう、心理状態が極めてセンシティブな時に限って、「進捗いかがですか?」という先方からの着信を発見してしまったら。
怖くて思わず手が止まってしまいそうになります。
でも、ここで手を止めない方法があったんです。

ある時私は、〆切日なのに原稿が終わらずに苦しんでおりました。すると編集さんから携帯への着信が。「いかがでしょうか」。キターー!!
でもその時に、マンガ編集者の友人の言葉を思い出したのです。

「できていないのはわかっているの。その場しのぎの『今送ります』じゃなくて、本当の〈情報〉が欲しい!
本当の情報さえあれば、私が印刷所さんに電話するときに、『あと3時間くらいです』とか、『今夜は入稿できません、明日の午前中になります』という見積もり情報を伝えられるから。そうすれば、私も印刷所さんも、作業の予定が組めるから……!」。
来ない原稿を待ってムダな徹夜をするよりも、原稿の上がりが早朝になるのがわかっていれば、一度帰宅して早く寝て、早朝に出社することで午前入稿ができるから、とも言っていました。

そうか、〈情報〉という捉え方か……!

さきほどの編集さんからの着信の話に戻ります。
私は、進捗をたずねてきた編集さんに、携帯からメールをしてみることにしました。
「あと3時間くらいかかりそうです。すみません」
すると、「了解しました。じゃあ、その間に夜ご飯に行ってきますね」と即レスが返ってきたのです。

これには、めーーっちゃ、安心しました。
気が楽になったことで、3時間はかかりそうだと思った原稿が1時間半後には完成して、編集さんに送信することができました。

《即レスすることで、心の安心を得ることができる!》
これは大きな気付きでした。

■心が弱っているときにはパソコンよりスマホ

あの時、私が返信に使ったのは携帯電話でした(スマホはまだ普及していませんでした)。携帯にした理由は、パソコンからだと「自分の仕事に直結し過ぎていて、気が重くなって落ち込んでしまうから」でした。

今は、予定より遅れそうな時は、編集さんにスマホで状況を細かく書いて報告するようにしています。「今やっているところです。実はこの点でこう難航しています。この部分がクリアしたら、◯時頃にお送りします」というふうに。

先方もだいたいの終わり時間が見積もれるし、何より私自身も気が楽になって、結果的に作業が効率よく進められるのです。
また、メールを書いているうちに「今、原稿でつまづいている部分がどこなのか」を発見できたり、相手に相談することができます。

先方の「いかがですか」打診って、催促以上に「自分が今、席を離れても良いのかどうか」「進行係の人に報告をしないといけない」ために問い合わせをしてくるわけで、〈情報〉を得るためなのです。
相手の進行をこちらのせいで止めてしまわないためにも、《情報提供のための即レス》こそが、相手と自分を救います。
自分自身を責めたり怖がったりするのではなく、「自分は現場を実況する『ひと言つぶやきマン』なのだ」と言い聞かせましょう!

……まあ「いかがですか」が来る前に原稿を終わらせることが一番良いんですけどね! 
常にベストな状況にはならないこともありますよね……!

■相手からの返信待ち、「待機モード」が辛いとき

先ほどの例とは逆に、「相手からの返事待ちでやきもきする」場合もあります。
送った側としては不安ですよね。さっき送ったメールや原稿は、先方様にどう受けとめられたの……!? 直しがあれば対応しないといけないし、いつ寝ればいいんだろう……。
チキンでグラスハートな私は、先方からの返信待ちに本当に弱い。いつ来るかわからないものを待つ「待機モード」が辛いんですよね……!
「おまゆう」(お前が言うな)という言葉を思い出しました。

じっと待機していても、何も手に着かない!
そうであれば、自分でできるアクションをしてしまいましょう。

1.まずは自分から電話する。
これで相手が出てすぐに解決できたらラッキーですよね。

2.先方が不在で連絡が付かない場合は、いったん仕事の場所(PC)から離れる。

1時間~2時間、さくっと外にご飯を食べに行くか、買い物に行くか、いったん寝るか。
とにかく「相手はどんな返事をしてくるんだろう」ということを考えないで良い場所に行くことが肝心です。

心を休めるためには仕事場所から離れるのが大事! 場所というのは「そこで普段している事」の空気をまとっているので、仕事場所だとどうしても懸案事項をぐるぐる考えてしまいます。あらかじめ「心配事を考えなくて良い場所」を見つけておいて、そこに避難すると良いと思います。

やきもきして何もできない状態が続くのは、ただ自分が心身消耗して辛いだけ。時間の使い方としては無駄なので、無駄時間を減らしていくのが良いと思います。

これから入稿する人も、印刷する人も、皆さんの心が少しでも楽になりますように……!

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■ 渡辺由美子(わたなべ・ゆみこ)
アニメを専門にするカルチャーライター。インタビュー記事、評論、エッセイなどの原稿を書いたり、誌面を構成したり。web媒体『ASCII.jp』で「誰がためにアニメは生まれる」を、隔月刊『Febri』で「妄想!ふ女子ワールド」等を連載中。単行本『ワタシの夫は理系クン』(NTT出版)など。渡辺由美子ブログはこちら。
イラスト・宮原美香
《渡辺由美子》

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