ミュージカル「薄桜鬼」ほとばしるエネルギー”新選組起源”の物語とシンクロする 2ページ目 | アニメ!アニメ!

ミュージカル「薄桜鬼」ほとばしるエネルギー”新選組起源”の物語とシンクロする

高浩美の アニメ×ステージ&ミュージカル談義 ■ 公演直前イベントでは「新しいミュージカル『薄桜鬼』を創ります」と意気込む

連載 高浩美のアニメ×ステージ/ミュージカル談義
注目記事
■ Rock調の楽曲、初々しく、力強く、”瞬間を懸命に生きる若者たち”の群像劇

キャストがほぼ一新した今回のステージ、今までは客席通路からフォーカスされるキャラクターが登場していたが、舞台上に今回の主人公・井吹龍之介が登場する。芹沢鴨が亡くなったところから始まる
。泣く井吹、そしておなじみのキャラクター登場となる。”前だけを見て……迷い捨てて”と歌う。フレッシュさを全面に出した内容の歌詞だ。オープニングの殺陣は今までよりダンス的で”お、新しくなったな”という印象を観客に抱かせる。Rock調の楽曲で盛り上げる、”黎明録”にふさわしい。

それから物語が始まる。追い剥ぎに遭い、ぼろぼろになった井吹龍之介に芹沢鴨が近づく。「生きたいなら食え」と握り飯を差し出すが龍之介が手を伸ばそうとした瞬間に芹沢はそれをわざと落とす。芹沢という男を端的にあらわしているシーンだ。どこにも行き場がない龍之介、壬生浪士組での生活が始まる。
壬生浪士組こそ、後の新選組。その個性的なメンバーに龍之介は面食らう。芹沢の小間使いとしてこき使われる日々。芹沢の発言や態度は傲慢、その行動に一同は眉をひそめる。武士の出でありながら武士であることを嫌う龍之介。士農工商で武士は一番高い身分ではあったが、幕末の武士、とりわけ下級武士は生活が厳しく、龍之介の家も例外ではなかった。
プライドだけ高い武士の現実に嫌気がさしている龍之介。芹沢からは”野良犬”とののしられ、それでもどうにもならない苛立ちや焦りを白又敦が全力で表現する。

今回の主人公は井吹龍之介だが、群像劇の要素もあり、それぞれに見せ場がある。農民出身の近藤勇、その近藤に育てられた沖田総司、近藤を心から尊敬する土方歳三等、『薄桜鬼』は架空の幕末ではあるが、史実とシンクロする部分が多く、全くの荒唐無稽なものではない。そこが、この『薄桜鬼』の真骨頂である。
不遜な態度・行動の芹沢であるが、実はきちんと世の中の情勢を見据え、自分が何をすべきかを心得ている。会津藩と交渉し、後ろ盾となってもらうが、それも芹沢が腐心したからこそ、である。
しかし、組内での対立は深刻になってくる。近藤派と芹沢派の溝は深まるばかりであった……。
《高浩美》
【注目の記事】[PR]

関連ニュース

特集