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マンガはなぜ赦されたのか-フランスにおける日本のマンガ-最終回「フランスにおけるマンガとは何であったか」

短期集中連載「マンガはなぜ赦されたのか」最終回 ■ 豊永真美 [昭和女子大現代ビジネス研究所研究員] 第8章 エピローグ フランスにおけるマンガとは何であったか

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■ ぜい弱な基盤に立つフランスの活字文化

なぜ、フランスでは、「芸術」以外の書籍文化がなりたちにくいのか。フランスは新聞を入れた活字文化自体が危機に瀕しており、新聞は大企業資本を受け入れることで成り立っているのが実態だ。
トマ・ピケティは、左派日刊紙『リベラシオン』のコラムで、フランスでは保守党日刊紙『フィガロ』がダッソーグループに、経済紙『レ・ゼコー』がLVMHグループに属している。左派日刊紙の『ル・モンド』はフランスの3人の富豪、すなわちベルジェ(イブ・サン・ローランのパトロンで、長い間同性愛の相手だった)、ニエル(フランスのインターネットプロバイダー「FREE」の創業者 妻はLVMHのアルノーの娘)、ピガス(ラサール銀行出身)に所有されている。ピケティがコラムを書いている『リベラシオン』もルドゥー(不動産)とドライ(携帯・インターネットプロバイダーSFRを買収)という2人の富豪の傘下にある。フランスのメディアの大半は、情け深い富豪の下で生きながらえているのだ。

フランスの出版業界はまだフランスのメディア業界よりは自律的であるが、それでも、成り立っていくことは難しい。出版業界の雄であるアシェットがEADSグループにいたときはアシェットが重厚長大産業とのつながっていたことにより、業界全体が後ろ盾をもっていた状態だったが、アシェットがサービス産業となってからはこの後ろ盾がない心もとない状態である。

このような中で、マンガ出版が続いていくためには、マンガがフランスの出版界を支えるために絶対に必要であるという認識を、出版界内部のみならず、それ以外の人々に広く共有することが望ましい。
フランスにマンガが根付いているのは、単にマンガが「売れる」だからではない。フランスのぜい弱な出版界を支える経済的な商品として「マンガ」が存在していたから、フランスではマンガが存在することが「赦された」のである。

*30 TBSラジオ「荒川強啓デイ・キャッチ!」2015年2月16日放送
日本経済新聞「シャルリエブド「再開!」 1面にルペン氏やローマ法王ら」(2015/02/24)
*31 http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM24H2A_U5A220C1EAF000/ (2015/03/04 閲覧)
*32 The Guardian “Charlie Hebdo staff vow to print 1m copies as French media support grows” http://www.theguardian.com/world/2015/jan/08/charlie-hebdo-staff-publish-next-week-1m-print-run (2015/03/04 閲覧)

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