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「赤毛のアン」はアニメも!ミュージカルも!実写も!全て軸がブレない

高浩美のアニメ×ステージ&ミュージカル談義:アニメも!ミュージカルも!実写も!全て軸がブレない『赤毛のアン』は世界中の憧れの最強パーマネント・コンテンツ。

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ミュージカル『赤毛のアン』
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■ わかりきっているストーリーなのに、登場人物たちに一喜一憂
楽しいミュージカルナンバー、ファンの期待を裏切らない出来映え


ミュージカルは“本家”カナダで制作。カナダの建国会議100周年を記念して建設されたコンフェデレーション・センターのオープニングセレモニーにて、記念用に書かれた短いミュージカルが最初とか。それ以来、1965年から毎年夏に上演、ギネスブックにも“世界で一番長く、同じ場所で上演され続けているミュージカル”として記録されている。

劇団四季はこの作品を1980年から上演。初演当初、カナダ人スタッフからも絶賛されたそう。7月1日現在、公演数は682回に及ぶ。劇団四季はロングラン中の『リトル・マーメイド』や『ライオンキング』『オペラ座の怪人』等の海外ミュージカルの上演で高い評価を受けているが、国産ミュージカルの制作にも意欲的で、その数は39作品に及ぶ。ミュージカル上演では日本では最高水準、そんな劇団四季だから、これだけファンが多い『赤毛のアン』の制作には細部まできめ細やかにアンの世界を再現している。 
まず、衣裳だが、500点以上に及ぶ。生地、縫製ともにイギリス製の特注品。デザインもアンの時代を反映したもので品のよい仕上がりになっている。ダンスの際にチラ見えする裏地も可愛く、”萌え”ポイント。また、アンの鞄もアンティークテイストで思わず欲しくなってしまう。

本音でいろんな人々とぶつかるアンだが、何故か周囲を明るく元気にしてくれる。そんなアン・シャーリーを演じる若奈まりえは
「どんなことも想像力を持って前向きに乗り越え、精一杯に生きようとする姿勢。そして出会った人々を幸せにしていくパワーを持つところが好きです。」
と語る。

さて、ミュージカルだが、緞帳がパステルカラー、プリンス・エドワード島の景色が描かれているが、もちろん、グリーン・ゲイブルズも描かれている。緞帳前でのプロローグ、物語を全て知っていてもワクワクする滑り出し。緞帳が上がるとそこには誰もが知っている三つ編みの赤毛の少女。うろうろするマシューに声をかける。初対面なのにペラペラとしゃべり出す少女に内気で口下手なマシューはすっかり心を奪われてしまう。テンポよく物語は進んでいく。
キャッチーなメロディラインのナンバーが多く、親しみやすい。馬車で家に向かう時に♪だから私のままでいい♪とアンが歌うが、元気をもらえるナンバーで、アンの心意気がよく伝わる。

原作の最初にも登場するが、リンド夫人はファンの期待を裏切らないおしゃべりマダム。ずけずけとアンの容姿をけなす下りは“キタ~!”と叫びたくなるし、そのリンド夫人に謝るアンの自己陶酔ぶりは率直に笑える。
ダイアナは黒髪を巻き毛にして目をパチクリさせながら話すそぶりはいかにも“可愛い”し、ピンクのドレスもダイアナのキャラクターを体現している。そっけない物言いでアンに本音で話すマリラ、その挙動は堅物な性格を上手く表現している。学校イチのモテ男子、ギルバートも“お約束”通り、対立しながらもアンに惹かれていく様を好演。“振り向いて欲しいから、気になる女の子にちょっかいを出したくなる”気持ちは共感出来る。ファンなら誰もが知っているエピソード、ダイアナに間違ってお酒を飲ませてしまう、ギルバートの頭を石盤で叩く、など先刻ご承知なシーンはついつい笑ってしまう。ピクニックのシーンは1幕終わりの見せ場、♪アイスクリーム♪と歌うナンバーはいわゆるショーストッパー的で覚えやすい。

実は休憩時間には、なんとミュージカルに登場する2段重ねのアイスクリームが売店で買える。子供はもちろん、大人もロビーでアイスクリームをほおばる光景があちこちで見られた(長蛇の列!)。これは売店の粋な計らいで、ちなみに『エビータ』の時はアルゼンチンワインを販売するそう。なかなか憎いサービスである。ま
た、パンフレットの表紙は物語に登場するアイテムが可愛いイラストになってちりばめられている。もちろん寄稿している執筆陣も村岡恵理始め“アン、大好き”な人々。パンフレットの“アンが好き過ぎる感”がなんだか嬉しい。

2幕からアンに多大な影響を与えるステイシー先生が登場。言動だけでなく、ファッションも影響を与えるが、当時流行ったパフスリーブがなんとも派手で進んだ女性を表現。奨学金の話を中心にストーリーは進行するが1幕と比較するとアンは確実に大人への階段を上っている。そんなアンを若奈まりえは軽やかに演じているのが印象的。誰もが知っているキャラクターだけにプレッシャーもあるかもしれないが、2011年入所の若手ながら、アンのキャラクターをよく理解し、愛しているのがわかる芝居ぶりで今後が楽しみ。
幕切れ近く、マシューが自分の死期を悟り、アンに語りかけるところは感涙。演じる菊池正はダンスの上手さで定評のある俳優だが、芝居もなかなかのもので、冒頭の駅でのシーンやパフスリーブの洋服を買いに行くシーンのベテランらしい細かい演技はなかなかのものだった。
ダンスの振付は日本のミュージカル界では重鎮の山田卓、ダイナミックなフォーメーションは流石。照明もきめ細やかで、アンの世界観に彩りを添える。

わかりきっているストーリーなのについつい引き込まれてしまう『赤毛のアン』、アニメと舞台、実写、制作側は当然のことながらいわゆる”連動”などしていない。それでも、どこを入口にしてもイメージがブレないのは原作の力であろう。また、それに関わるスタッフの作品愛も見逃せない。こういった”最強パーマネント・コンテンツ”はどんな形にしてもファンを魅了する。クリエイターにとっては”夢”である。

ミュージカル『赤毛のアン』
自由劇場(東京・浜松町)
8月31日~9月28日
/http://www.shiki.jp/applause/anne/
《高浩美》
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