藤津亮太の恋するアニメ 第16回 「水平の綱引き」の行方について(後編) 「惡の華」 | アニメ!アニメ!

藤津亮太の恋するアニメ 第16回 「水平の綱引き」の行方について(後編) 「惡の華」

連載・コラム 藤津亮太の恋するアニメ

藤津亮太の恋するアニメ 第16回 
「水平の綱引き」の行方について
(後編)

『惡の華』

作・藤津亮太


『惡の華』の佐伯さんと仲村さんではどっちが好きか、という話から、仲村さんと春日の関係の話になった。
そこで僕は、二人の仲でずっと気になっていたことをNに言った。

二人の口にする“変態”って、限りなく性的なものなのに、二人は使う言葉も含めて、二人の間がなるべく性的にならないように避けているように見える、と。だからこそ二人は奇妙なこじれを抱えて暴走せざるを得ないのではないかと。

そう投げかけると、Nはちょっと考えるように眉間にしわを寄せた。
「ちょっと話が違って見えるかもしれないけれど、仲村さんって、私にはボニーに見えてたのよね」
「ボニー? マイ・リトル・ボニー?」
「何それ? 私が言っているのは、ボニーとクライドのボニーよ。『俺たちに明日はない』の二人」
ああ、と僕は頷いた。
1930年代に、アメリカの各地で強盗を繰り返した男女の強盗を描いたあの映画を見たのは、たぶん高校生のころだ。

「ボニーは、平凡な街に飽きてるのよね。そこに現れたクライドが颯爽と強盗する様子を見たことをきっかけにして、一緒に行動をするようになるわけ。つまりボニーは“向こう側”に行きたかった。そしてクライドは、ちゃんとそこに連れて行ってくれたってわけ。二人が出会った最初の方の会話、覚えてる?」
「いいや」
「ボニーがまず聞くのよ。『どんな気分?』って。クライドが『刑務所か?』って返すと『強盗よ』って。で、『最高さ』。この『最高さ』っていうのが、“向こう側”に行った気分ってことなのよ。だから私にとって、仲村さんは、クライドを待っていたんだけれど、クライドが全然来ないから、ボニーとクライドを一人でやろうとして混乱してしまった子って感じなの」
「ああ、肝心の春日も、再契約しようっていうまでは、クライド役を期待されながら、そうはなりきれなかったからなぁ」
「そう。だからTVで『惡の華』のラストを見た時は、ようやくここまできた~! と思ったわよ(笑)。たぶんあそこから、春日と仲村さんがちゃんとボニー&クライドになるんだなーと思ったのよ」
「ご明察だね。しかし……『俺たちに明日はない』だとボニーがクライドと行動をともにするまで、あっという間じゃない。それを『惡の華』は、十三本かけて描いていると(笑)」
Nもここでは笑った。
「まあ、そうだけど、それは佐伯さんが悪いね。春日をいろいろ惑わせて、話をややこしくしたわけで(笑)」

「邪魔者扱いかよ」
僕は苦笑した。

《animeanime》
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