映画「スティーブ・ジョブズ」は映画で何を語りかけてくるのか  J.M.スターン監督インタビュー | アニメ!アニメ!

映画「スティーブ・ジョブズ」は映画で何を語りかけてくるのか  J.M.スターン監督インタビュー

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 スティーブ・ジョブズ氏がこの世を去ってから2年。初の映画化『スティーブ・ジョブズ』が本日公開を迎えた。映画はどのようなジョブズを私たちに見せてくれるのか。彼は私たちに何を訴えかけてくるのか。公開直前に来日したジョシュア・マイケル・スターン監督に話を訊いた。


――映画はどこまでジョブズの人生をリアルにとらえているのでしょうか?

スターン監督:ジョブズの人生には様々なストーリーがあり、たくさんの人物が登場する。伝記映画の場合、彼やアップルについて分かっているたくさんのことの中から、共通項を見つけ出して、物語を紡ぐということが大切なんだ。リサーチ期間は8か月。3、4人のチームで過去のインタビューや、彼について書かれている本など、たくさんの資料を読み込んだよ。でも、ただエピソードをつないて、事実をそのまま伝えるということではない。事実に基づいているけど、全てのアート作品がそうであるように、自分なりに解釈したものなんだ。

――このタイミングで本作をつくる意義についてはどう考えていますか?

スターン監督:この映画のメッセージ、つまり、「この世の中をより良くするためにあなたが何を出来るのか」ということは、今、景気があまり良くない時代だからこそ、人々をインスパイアするメッセージだと思ったんだ。これからの新しい時代では、世界経済は個人や起業家が動かす時代だと思うからね。

――本作の製作の話は、ジョブズ没後まもない頃から伝えられていました。同時に、同じくジョブズを題材とした別の映画についても(こちらは、Faccebook創設者を描いた『ソーシャル・ネットワーク』の脚本家が現在執筆中とのこと)。これから他にもジョブズ作品が出てくるとされる中で、その先陣を切っていることは意識していましたか?

スターン監督:初の映画化作品、ということはプレッシャーだったよ。他に比較するものがないから、その分、観る人の目は厳しく、批判にさらされる可能性も高い。今後、たくさんのジョブズ作品が出てくるだろけど、ふり返ってみたときに、この最初の映画がいちばんジョブズのスピリットをとらえているな、と思ってくれたら嬉しいな。

――監督個人的にはどれくらいのアップルファン?

スターン監督:アップル製品はほとんど持っているよ。昔からアップルユーザーで、一番最初のコンピューターはこの映画にも登場する「Apple II」だった。特にライターという職業柄、アップルコンピューターの処理能力、直感的な使いやすさは画期的だと思った。大学卒業したての僕にとってはアップル製品は安くなかったから、一時期はデルに浮気したけど(笑)、結局またアップルに戻ったよ。

――本作はアップルファンと一般の映画ファン、どちらを意識してつくりましたか?

スターン監督:この映画はアップル製品を褒め称えている映画ではないと思う。実際、そこまで製品は登場しない。僕にとって本作は、はっきりとしたビジョンを持って物をつくり出してきた男の物語。製品はあまり重要ではなくて、ジョブズがどのように、どんな考えを持って、成し遂げてきたのか興味を持っている観客に向けた映画だ。そういう意味では、アップルファンのために映画ではないよ。きっとアップルファンはもっと製品や具体的エピソードなど、この映画では省略している部分を観たいのかもしれないね。

――つまりアップルファンにとっては、少々期待はずれということも…?

スターン監督:アップルファンの製品への執着は凄いし、彼らの好奇心は限りない。でもこの映画は、彼の人生のうちの30年間を切り取った、アーティストである僕なりの解釈で、映画会社が決めた2時間8分という尺の中に収めた物語。これでも、映画会社はあと17分短くしろって言っていたんだ。もっと見たい、という人もいるだろう。同時に、ジョブズは課題評価されていると思っている人もそこそこいる。サムソンがつくっているユーザーインターフェースだって素晴らしいし、彼らのアンドロイド製品もかなり高度だ。技術だけを比べたら、アップルよりサムソンの方が高機能なんじゃないかな。ただ、本当に人々が必要としている基本機能だけに絞ると、アップルの方がやっぱり全ての点で少し高度だと思う。そしてそのうち最も高度なのが、「シンプルさ」という点で、アップルの上をいく製品はないと思う。

――本作の大きな鍵はジョブズ役のキャスティングですね。

スターン監督:アシュトン・カッチャーは素晴らしいよ。ジョブズは歴代大統領や他の偉人と比べたら特徴が少なく、彼の特徴をとらえるのは意外と難しい。だたの「男」だから。アシュトンは、彼の内面を似せなければなかった。彼はなぜあのように行動したのか? と。ジョブズはDND鑑定の結果があっても娘を認知しなかったというエピソードがあるけど、ジョブズには現実さえも認めないという極端な一面がある。それってどういう思考なのか? 誰も知ることは出来ないけど、アシュトンはジョブズを理解しようとすごく時間をかけていて、結果、見事だった。

――アシュトンの演技について、すでに公開されているアメリカでは賛否両論あるようです。

スターン監督:アシュトンの演技を批判している人々がいるのは事実。でも、アメリカのカルチャーにはひとつ特徴があるんだ。それは、有名人には、彼らが最初有名になったキャラクターを守り続けていて欲しい、という思い。例えば、ケイティ・ペリーがジャズを歌いたいと言ったら、どんなに美しい歌声でもアメリカの人々は認めないだろう。モーガン・フリーマンやアンソニー・ホプキンスのような、シリアスドラマを演じる俳優ならばコメディはNG。逆に、コメディ俳優ならば、シリアスなドラマには出て欲しくない。新しい自分を切り開くということに関しては、ものすごい偏見があるんだ。だから、コメディ俳優のアシュトンがジョブズを演じることについて、当初から受け入れたくない、という偏見があったと思う。端から批判的な姿勢のメディアは多かったし、不自然なくらい、アシュトンを批判しているものもあったよ。残念ではあるけど、その中でアーティストとしては、常に新しいことにチャレンジして、国民に認めてもらわなければならない使命なんだろうね。

――数々の名言を残しているジョブズの言葉の中で、一番のお気に入りは?

スターン監督:「Everything around you that you call life was made up by people that were no smarter than you(この世の全ては、あなたとそう変わらない普通の人によって創られている)」。リスクを冒すことを恐れず、自分にもできるという自信を持っている人は本当に少ないんだ。僕が今まで出会った75歳以上の人は、必ず「僕が若い頃は俳優になりたかった…」とか、歌手とか発明家とか腹話術師とか、いろんな夢を語ってくれる。若い人は誰もがチャレンジ精神を持っているけど、社会に出るとプレッシャーによって簡単につぶされてしまうんだ。そもそも21、22歳の若者がその後、60年、70年の人生を決めるなんて、不可能だと思わない? でも現実、その年齢で人生を決めていて、45歳になってから「なんでこうなっちゃったんだろう」って思う。そして、その歳になってしまうと、道を変えるのは怖い。リスクを恐れなければ、70歳までハッピーに暮らせるかもしれないのに。つまり、この映画が伝えたいのは、「夢を信じろ」ということかもしれないね。

【監督インタビュー】スティーブ・ジョブズは映画で何を語りかけてくるのか

《曽山愛子》
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