[オフィスH 伊藤裕美]■ アニメーションを“コミュニケーションの手段”にアニマ・ムンディのワークショップ「Open Studio(オープンスタジオ)」では、砂のアニメーション、手書き(ドローイング)、ゾートロープ(回転のぞき絵)、ピクシレーション(人間のコマ撮り)といった、いろいろな技法を体験できる。こどもや未経験者にその場で“動く絵”を見せられるように、簡単な操作と身近な装置で動作するソフトウェア「MUAN」を導入した。コマ撮りソフトウェア「MUAN」はアニマ・ムンディが基本設計し、IBMの資金援助で、IMPA(国立純粋・応用数学研究所)が開発した。ハンディカムかウェブカムで撮影してPCへ転送すれば、リアルタイムで見られる。取り込み、編集、ビジュアリゼーション(可視化)をシンプルなインターフェスでおこなえる。無料でダウンロードできるオープンソースだ。/http://www.muan.org.br/en/muan アニマ・ムンディは映画祭期間だけでなく、「Anima Escola(アニメーション・スクール)」と名付けた、学校や市民講座でアニメーション創作の普及をおこなっている。「MUAN」は即興性と身近な機材で誰でも操作できる手軽さが重宝され、公立・私立の学校に普及している。アニメーションは創造性、計画性、統合力、集中力、抽象的な考え方を育てるのに適した、文字だけに頼らない“コミュニケーションの手段”とする考えが、ヨーロッパやブラジルで生まれている。「MUAN」はエンピツの代わりになるツールと、マガリャンイス氏はいう。アニメーションをデジタルネイティブのコミュニケーション手段としたら、アニメーションはエンタテインメントや産業ビジュアリゼーションの表現手段に留まらず、新しい産業を誘導する可能性がある。アニメーションの専門教育を受けた人が社会のさまざまな分野でその専門能力が活かす、雇用機会になるだろう。■ブラジル製アニメーションへの期待ブラジルには2つの業界組織があり、政府へ公的支援整備の圧力も掛ける。200名ほどのアニメーターが組織するABCA(ブラジル・アニメーション協会)。そして映像制作会社250社ほどが加入する、ABPITV(ブラジル独立系TVプロデューサー協会)。ABPITVの1割ほどはアニメーション関係で、2011年にリオデジャネイロで、映像・ディジタルメディアコンテンツなど、クロスメディア・コンテンツの国際見本市「RioContentMarket(リオ・コンテントマーケット)」(http://www.riocontentmarket.com.br/)を始めた。文部省がオーディオビジュアル産業を統合的に管轄する。ケーブルテレビ局が拠出する資金を元に、アニメーションを含めた長編映画とテレビシリーズの制作と配給を支援する、18億レアル(約720億円)のファンドがある。文化省傘下のANCINE(国家映画庁)と、ブラジル国立経済社会開発銀行の政府系金融機関が運用と投資を管理する。今年末には10億レアル(約400億円)が追加される見通しだ。日本のJETROに相当するApex-Brasilも、ブラジルのアニメーション輸出を手厚く支援する。長編とテレビシリーズともに、ブラジルでは自国制作が軌道に乗り、政府は国際共同製作や輸出を支援する。今の活況は短編アニメーションを独学で始めたパイオニアたちが商業分野へ進んだ結果だ。インタビューに応じた監督はみな、「常にオリジナルの短編作りを考えている」という。最初から最後まで自分でコントロールできる短編の自由度が魅力であり、その経験を商業アニメでも活かす。短編も重視する姿勢は、ブラジル・アニメーション協会が公費で制作支援するよう政府に要求するほどだ。「ブラジル製は品質が悪い」という固定観念が崩れている。「カートゥーン・ネットワークでブラジルのアニメーションが人気を得ている」と、市場がブラジルのアニメーションを求めるようになったことでさらに自信を深めている。ラテンアメリカに“アニメーション大国”が誕生した。
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