Nはなにやら思案顔だが、僕はかまわず話を続けた。「ラブレターだとするとずいぶんいびつなんだけれど、読み手がいるのを知りながら、モノローグを投稿するあの感じって、未明のtiwitterみたいだなーって思ったら、なんか少しは納得できたんだ」「確かに、ラブレターってコミュニケーションなわけだから、もらった側がリアクションしたくなるような部分は必要よね。一方的に自分の気持が書いてあったら、ちょっとキモい。ストーカー的?」僕が、そうだよね、と相づちを打とうとした瞬間、その言葉を遮るようにNは続けた。「でもさ、それはそれとして。はっきりいって、Sは『ほしのこえ』を理解してないんじゃない?」「は?」僕は思わず間抜けな声を漏らした。「え、どういうこと?」「あそこで二人が相手のことを尋ねないのにはちゃんと理由があるのよ」自信たっぷりにNは断言する。「それは、二人が相手の状況を聞いたところで、もう自分にはどうしようもないと思っているからよ。もし状況を聞いても、自分としては遠すぎて何かリアクションできるわけじゃない。だから、二人とも、そこを避けて話をしているわけ。単なるセンチメンタルな自分語りってわけじゃないのよ」Nの“解釈”はさらに続く。「だから、あの二人は告白すべきタイミングでちゃんと告白しておくべきだったのよ。『ほしのこえ』の切なさというのは、告白をし損ねてしまったために、恋という橋をかけられなかった二人の悲劇なのよね。だから二人は物事の核心の周囲ばかりをグルグルと回ることになってるわけ。わかった?」わかった? とかドヤ顔でいわれても。しかし無駄な抵抗をしないのが僕だ。「わかった、わかった」「でも、考えて見ると、アニメでラブレターはでてきても、その文面まで出てくるケースってあんまり覚えがないかも。『とらドラ!』に出てきたラブレターなんて、中身が入ってなかったし。なにかアニメで有名なラブレターの文面ってある?」「うーん、いきなり振られてもなぁ。『うる星やつら』でじゃりテンが、さくらさんにラブレター書いてたような気はするけど」僕がいろいろ考えていると、Nが「あっ」と言った。「そういえば、最近のアニメで、ちゃんと『好きでした』『愛を込めて』っていう言葉が出てくる手紙が登場してた気がする」……また、アバウトな手がかりだとは思ったが、僕は黙っていた。(続く)「アニメの門チャンネル」 第12回/http://ch.nicovideo.jp/channel/animenomon 2013年8月2日21時半~放映
庵野秀明監督はなぜ「シン・エヴァ」で“絵コンテ”をきらなかったのか?【藤津亮太のアニメの門V 第69回】 2021.4.2 Fri 18:15 アニメ評論家・藤津亮太の連載「アニメの門V」。第69回目は、庵…