2009年に34歳で逝去したSF作家 伊藤計劃さんの『ハーモニー』が、米国のSF小説に与えられるフィリップ・K・ディック賞の特別賞(A Special Citation of Excellence)を受賞した。P・K・ディック賞は、フィラデルフィアSF協会とP・K・ディック財団が協力して運営している。毎年、米国でペーパーバックにて刊行されたSF小説の中から選出する。 『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』や『高い城の男』など生みだしたSF作家P・K・ディックさんを記念した賞で、革新的な精神を持ったSFを対象とする。過去にはスティーヴン・バクスターさんやウィリアム・ギブスンさんなどSF界を代表する作家が受賞している。毎年5冊から8冊の候補作から選考が行われるが、今回はマーク・ホドラーさんの『The Strange Affair of Spring-Heeled Jack』の本賞と伴に『ハーモニー』が選ばれた。
こうした快挙には翻訳出版を行ったハイカソル(HIKAROSRU)や翻訳者であるアレクサンダー・O・スミスさんの役割も高く評価されるべきだろう。ハイカソルは、北米でマンガ・アニメ事業を手掛けるVIZメディアの日本SFの翻訳出版レーベルである。同社は小学館、集英社、小学館集英社プロダクションの出資会社だが、ハイカソルでは今回の『ハーモニー』(早川書房刊)の様に、日本では他出版社から発売される小説の翻訳出版も積極的に手掛ける。 レーベルの刊行開始は2009年初頭、過去2年余りで出版点数20余点は必ずしも多くないが、宮部みゆきさんや乙一さん、神林長平さんら現在読まれている日本のSFを積極的に英語圏に紹介する。発刊作品からは桜坂洋さんの『All You Need Is Kill』のハリウッド映画企画が浮上するなど、日本SFの英語圏への普及に大きな役割を担っている。