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通常であれば半年に一度のペースで開催されるイベントが、一年ぶりとなったのはメディアでも大きく報道されたエスカレーター事故によるものだ。
現時点まで事故の原因が解明されない中、短期間の準備、開催会場の移転は、主催者にとっては大きな決断だったと察せられる。また、再開に伴う社会からの関心も大きなプレッシャーとなっただろう。
しかし、そうしたなか行われたワンフェス2009[夏]は大盛況となり、ワンフェスへの支持の高さをあらためて印象づけた。運営面でも様々な試みが加えられ、単に昨年の事故に対処するだけでなく、今後のさらなる飛躍を念頭に置いたものとなった。
今回の最大の変化は、東京モーターショウや東京ゲームショウ並みの幕張メッセ7ホール使用という広大なスペースである。これは参加ディーラー数が過去最大になったことに対応したものだ。さらに会場を広げるにあたり、通路やデッドスペースが拡大された。これによりすれ違いなどで人にぶつかることもなく、会場での快適さは飛躍的に向上した。
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逆に言えば、これだけ大きくなってしまったワンフェスの全てを見ようとするのは、一般的なファンにとってはもう必要でないのかもしれない。今回、ワンフェスでは初めて成人向けのゾーンが設けたが、これとは別にジャンルごとの緩やかなゾーニングがあると便利なのでないかと感じた。
この成人向けゾーンの設定も、今回の大きな変化だ。キャラクターフィギュアの中には、女性キャラクターのヌードに近いものも少なくない。それはイベントの華のひとつではあるが、近年は女性参加者も少なくない。そうした参加者が意図せずにそうした作品を目にするのはやや気まずい。また、参加者の年齢層も広がっており、未成年者との兼ね合いもある。
今回の成人向けゾーンは、身分証明書を提示することで入場可能となる。未成年者の接触を避けると共に、身分証を提示することで、自ら見ることを了承するわけで合理的なシステムだ。
実行委員会によればこれは幕張メッセだからということでなく、以前から検討課題だったという。これほど大きくなったワンフェスは、社会的責任も果たすことが必要という判断である。一方で、今回の会場の拡大が、こうしたゾーニングを設ける余地を生み出したとも言える。
会場の見所はあまりにも多く、何を取上げていいのか迷うところだ。それでも、今年10周年を迎えたWonder Showcaseは触れないわけに行かない。
Wonder Showcaseはイベントの規模的な成長のなかで、時として見落とされがちなイベントの本来の目的であるガレージキットのクオリティの向上を目的にするものだ。優れたアーティスを取上げプロデュースすることで、ガレージキット文化の底上げを図る。
今回、取上げられたアーティストNoaさんとFioさんは、いずれも女性だ。今年で10周年を迎えたWonder Showcaseが、男性優位とされるガレキの世界で女性2名を選んだことも、ガレキ文化がひとつのターニングポイントに到達したことを感じさせないだろうか。
また、今回は10周年ということもあり、歴代アーティストのプレゼンテーションが設けられ、トークショウなどイベントも行われている。ここからは規模の拡大だけでなく、ワンフェスだけが持ちえる何かを目指す姿勢が感じられる。
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今回のワンフェスは広がった会場にも限らず、その盛況ぶりを感じるのに十分であった。さらに今回の様子をみると、イベントとしてのワンフェスはまだまだ拡大しそうな勢いだ。次回のワンダーフェスティバル2010[冬]は、2010年2月7日に今回と同じ幕張メッセでの開催を予定する。
ワンダーフェスティバル 公式サイト /http://www.kaiyodo.co.jp/wf/