アヌシー MIFAにみるヨーロッパのアニメーション市場(1) | アニメ!アニメ!

アヌシー MIFAにみるヨーロッパのアニメーション市場(1)

数土直志

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数土直志

[アニメーション見本市MIFAの機能]
 世界最大のアニメーション映画祭であるアヌシー国際アニメーション映画祭が、6月8日から13日まで開催された。華やかな映画祭とコンペティションが話題になる一方で、併設される9日から12日まで行われたMIFAは日本ではあまり知られていない。
 MIFAは、THE INTERNATIONAL ANIMATION FILM MARKET(国際アニメーション映画マーケット)で、アニメーションに特化した世界で最も大きな見本市である。見本市を運営するCITIAによれば、2009年は350社1900人の業界関係者が自社作品を紹介したという。
 
 こうした言葉が並ぶと凄い会場を想像するが、正直MIFAの会場は大きくない。エンタテイメント関連の大型見本市、例えば東京国際アニメフェア、東京ゲームショウやE3、各国のブックショウに馴染んだ人は拍子抜けするかもしれない。
 湖の畔にある高級ホテルの一部とそれに隣接した場所に張られたテントが、会場のほとんどである。何も用がない人であれば、丹念に回っても1時間もかかるかどうかといった具合だ。
 それでいてMIFAの参加登録料は1人195ユーロ(およそ27000円)とかなり高額になっている。高額な登録料、小規模な企業ブースという点では東京国際映画祭で併催されるコンテンツマーケットTIFFCOMに近い。

 ふたつに共通するのは、ビジネスに関係のない一般来場者を排除していることである。つまり、MIFAの機能は作品売買の場の提供である。
 高額の登録料は、むしろビジネス目的でない人を会場から遮断する役割も果たしている。逆に言えば、会場にいるのは、それだけの金額を払うことに意味を持つビジネス関係者となる。これはこちらも高額の出展料を払う企業出展者にとっても効率的なわけだ。

[MIFAの評価]
 そうして築かれたMIFAの見本市としての評価はどうなのだろうか。実際は、会場を見たところ人は多いが、必ずしも活発に話し合いがされているわけではない。挨拶をする人はいるけれど、ビジネスを行っている様子はあまり見られない。
 また、ヨーロッパにはアニメーションも扱う巨大な映画見本市として、MIPTVやカンヌ映画祭やベルリン映画祭、それに子供番組専門のマーケットであるMIP juniorを併設するMIPCOMなど、MIFAにとって強力なライバルが目白押しである。

 これを見てMIFAの見本市での取引規模は大きくないと考える向きもある。しかし、他の多くの国際見本市と同様に、MIFAの取引も実際は会場の外にあるとの指摘は多かった。そうした場で長期的なビジネスが行われているというわけである。
 つまり、MIFAへの出展はプログラムに会社名が載り、会場内に入るもので、いわばビジネスへの参加表明に過ぎない。高額なMIFAへの出展料や登録料は展示会場への入場料ではなく、展示会場を中心としたビジネスへの参加料金なのである。

[ヨーロッパのアニメーション市場は供給過剰?]
 そして、会場の大きさとは別に会場を見渡せば、そこに出展されているアニメーション作品の数の多さに驚かされる。とにかく数が多い。MIFAには北米や日本の企業の出展は少なく、多くはヨーロッパ地域からのものである。そこにある膨大なアニメーションは、ほとんどがヨーロッパの商業アニメーションなのである。
 日本ではその数字の出所が曖昧な、世界でテレビ放映されている商業アニメーションの7割が日本製との説がまかり通っている。しかし、こうした会場の様子を見れば、そうした数字を疑うのに十分であろう。

 また、特徴的なのは、作品の大半が子供向けのアニメーションであることだ。つまり、ヨーロッパのアニメーションビジネスは依然イコール子供番組となっている。
 さらに3Dアニメーションの盛況など、会場を一回りするだけでヨーロッパのアニメーション映画、テレビ番組のトレンドはかなり掴めるだろう。

 日本ではここ数年、北米市場での日本アニメの放送市場、DVD市場での後退を前に、市場アクセスがより容易ではないかとヨーロッパ市場に注目する動きがある。しかし、少なくともMIFAの会場で見る膨大な商業アニメーションの大群は、ヨーロッパ市場も日本と同様に制作側の供給過多を感じさせた。
 実際に、別に参加したビジネスコンファレンスでは、ヨーロッパでのアニメーショ制作の急増は報告されている。それがMIFAのような見本市への、企業参加を積極化させる理由のひとつでもあろう。
 そして、もし、アニメーション作品が供給過多であれば、その市場に参入しようとする日本企業にとって辛いものとなる。

/2に続く
《animeanime》
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