映画会社の松竹とKDDI研究所は、映画のターゲットユーザの反応を定量的にシミュレーション・分析する映画宣伝支援システムを開発し、実験運用を開始した。 このシステムは、どのようなタイプのユーザが、どのような映画に対して、どのような印象を持つかの関係性を定式化したものだという。KDDI研究所と独立行政法人産業技術総合研究所が共同研究で開発した「映画嗜好モデル」を応用している。7月29日にDVDリリースされるラブサスペンス『奇術師フーディーニ 妖しき幻想』の宣伝にて、まず本格運用実験を行う。 映画宣伝支援システムは、宣伝対象となる映画の情報を基にターゲットユーザごとに作品のどの要素がユーザの鑑賞意欲を増加させる訴求ポイントを、効果の重要度により順位づけする。 このモデルでは、まず約8万人分の映画アンケート調査データを構築した。そして、データに基づいて確率的手法により、ユーザー行動の予測を導き出す。今回のモデルはベイジアンネットと呼ばれ、こうした調査データで問題になるデータ間の複雑な関係を表現可能とし、ユーザに関する情報が部分的にしか得られない場合にも予測することが可能になるという。 例えば、『奇術師フーディーニ 妖しき幻想』であれば、20代の男女には「ヒューマンドラマであること」や「実話に基づいている」などが高い確率でアピールするといった具合だ。 松竹とKDDI研究所は、これまでの宣伝活動でもアンケート調査を用いて、ポスターデザインやキャッチコピーを提示し、ユーザ属性ごとの評価をはかる試みを行ってきたという。しかし、そうした調査はマーケティング担当者の経験によるところが大きく、客観性が課題になっていたという。 映画宣伝支援システムでは、統計に基づいた訴求ポイントを確率で表現することでターゲットに適した効果的なプロモーションの提案が可能になるとしている。 映画に限らず、音楽、アニメ、ゲーム、小説まで、多くのエンタテインメントコンテンツの企画、開発、宣伝、そしてそこから生まれるヒット作品は予測不可能性が高い。作品はヒットすればリターンが大きく、そうでなければ投資のほとんどを取り返せない。 それゆえにエンタテイメントビジネスはリスクが高いとされている。また、インサイダー以外からの投資が難しい領域でもある。 これまでにも国内では、映画の興行予測などの分野では、データ統計を利用したシステムが開発されたケースはある。しかし、そうしたシステムは必ずしも確かな実績を残していない。 それだけに、もし映画宣伝支援システムが期待通りに運用出来れば大きな成果となる。エンタテインメント業界の宣伝にも大きなインパクトを引き起こすことになるだろう。KDDI研究所 /http://www.kddilabs.jp/松竹 /http://www.shochiku.co.jp/
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