朝日新聞社が主催の第13回手塚治虫文化賞の大賞に、よしながふみさんの『大奥』と辰巳ヨシヒロさんの『劇画漂流』が選ばれた。大賞の2作品同時受賞は今回が初めてである。 また、短編賞は中村光さんの『聖☆おにいさん』、斬新な表現、画期的なテーマなど清新な才能の持つ作者に与えられる新生賞は丸尾末広さんが選ばれた。丸尾末広さんについては、『パノラマ島綺譯』が作品として言及されている。 手塚治虫文化賞は朝日新聞社が、日本マンガに大きな業績を残した故手塚治虫さんを記念して1997年に設立した。手塚さんの志を継いでマンガ文化の発展に寄与することを目的としている。毎年、優れたマンガ作品と作家を顕彰する。 マンガ関係者からの推薦をもとにマンガ家、マンガ評論家からなる審査員の投票で最終選考ノミネート作品を決定、さらに最終選考で受賞作品を決定する。数多くあるマンガ関連の賞のなかでも、出版社の枠組みを超えた選考などから国内で最も注目されるものとなっている。 今回大賞を受賞した『大奥』は、女性マンガ誌「MELODY」(白泉社)に連載されている。江戸時代将軍家の男女の役割をひっくり返した大胆なアイディアが既に各所で高く評価されている。同作品の手塚治虫文化賞のノミネートは今年が3回目、安定したレベルの高さが受賞につながったようだ。 辰巳ヨシヒロさんは、1950年代から日本のマンガ界で活躍、特に劇画生みの親のひとりとして知られる。国内だけでなく、海外でもその作品の評価は高い。今回大賞を受賞した『劇画漂流』は、そうした劇画誕生の時代を描いた自伝的作品である。マンガ古書販売のまんだらけのカタログ誌「まんだらけZENBU」で連載されていた。 短編賞の『聖☆おにいさん』は、「モーニングツー」(講談社)連載されている。下界におりて立川の安アパートで暮らすブッダとイエスという奇想天外の設定でコメディを描く。 丸尾末広さんは、エロティシズム溢れる独特の表現で知られた存在。『パノラマ島綺譯』では原作江戸川乱歩の世界が、さらに丸尾末広的世界で彩られた。 今回、朝日新聞が公表する審査委員による一次選考結果では、吉田秋生さんの『海街diary』と『大奥』が1位となっている。大賞となった『劇画漂流』は同票数4位、短編賞の『聖☆おにいさん』は同票数6位と、受賞結果と一致しない。 これは手塚治虫文化賞が、審査委員による合議制を取っているためでもあるが、一次選考、最終選考でかなりの激戦となっていたことを伺わせる。特に、最終選考会では『大奥』と『劇画漂流』に議論が集中したとしている。かなりのハイレベルで競い合いがあったようだ。第13回手塚治虫文化賞 /http://www.asahi.com/shimbun/award/tezuka/【受賞作品】大賞 『大奥』 よしながふみ 『劇画漂流』 辰巳ヨシヒロ短編賞 『聖☆おにいさん』 中村光新生賞 丸尾末広 (『パノラマ島綺譯』)
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