7月24日から27日まで米国サンディエゴ市で開催されているサンディエゴ・コミコン(Comic-Con International)で、イベントの目玉のひとつである第20回アイズナー賞(Will Eisner Comic Industry Awards)の発表が7月25日に行われた。 アイズナー賞はノミネート作品の選出を経て、専門家が30数部門にわたる各賞を決定する。毎年、サンディエゴ・コミコンで発表が行われるが、米国のコミック界で最も注目度の高いコミック賞である。
このうち米国で出版された日本マンガのみを対象とした日本マンガ部門(Best U.S. Edition of International Material Japan)を松本大洋さんの『鉄コン筋クリート』が受賞した。作品は米国では、VIZメディアが2007年9月に発売した。 2007年には劇場アニメ版『鉄コン筋クリート』も米国でリリースされている。映像と合わせて原作マンガも人気を集めた。 アイズナー賞の日本マンガ部門は、海外賞が1990年代後半より日本マンガの受賞が続いたこともあり、2007年から海外部門から独立するかたちで生まれた。2007年は『Old Boy』が受賞をしている。
一方で、他の部門では、短編賞(Best Short Story)をニューヨークタイムズに連載された『Mr. Wonderful』、単巻賞(Best Single Issue)はDCコミックの『Justice League of America 11巻』、連載コミックス賞(Best Continuing Series)はVertigo/DCの『Y: The Last Man』、限定シリーズ賞(Best Limited Series)はダークホースの『The Umbrella Academy』、新シリーズ賞(Best New Series)もダークホースから『Buffy the Vampire Slayer, Season 8』が選ばれている。 主要な賞の受賞では、DCコミックとダークホース系の活躍が目立った。一方で、大手出版社の一角であるマーベルは、30数部門のなか唯一、作家賞(Best Writer)でEd Brubaker氏が受賞したのみであった。『アイアンマン』や『インクレディブル・ハルク』といった映像展開、マルチメディア展開で圧倒的な強みをみせるマーベルの意外な弱さが表れた。
また、短編部門賞には、日本の作品から『New Engineering』(横山裕一著)、『夕凪の街 桜の国』 (こうの史代著)もノミネートされていたが受賞は逃した。同様に2年連続でベスト連載コミックス賞候補にあがっていた浦沢直樹さんの『MONSTER』、ベスト児童向け書籍賞(Best Publication for Kids)に候補のあずまきよひこさん『よつばと!』や、個人賞の対象になっていたよしながふみさんや小畑健さんらの受賞は叶わなかった。 日本勢は、日本部門以外での受賞はないやや寂しい結果となった。日本での初出と米国での出版の時期のずれや、グラフィックノベルが出版の中心となる作品のフォーマットの違いなどもあり、日本勢のアイズナー賞の壁はまだまだ厚いようだ。