1月22日から東京アニメセンターで開催されている「追悼展示会アニメーター逢坂浩司展」に行ってきた。この展覧会は、昨年9月に逝去されたアニメーター逢坂浩司氏を追悼するため昨年12月杉並アニメーションミュージアムで開催されたものを再構成したものである。 今回は東京アニメセンター内というスペースの制約があるため、決して規模の大きいものではない。しかし、展示会の内容は充実したもので、生前の逢坂浩司氏の業績を振返る点で見所の多いものであった。 展示はふたつのパートに分かれており、ひとつは逢坂浩司氏に生前に縁があったかたがたのメッセージである。 どのメッセージも氏の突然の不幸を悼むと伴にその人柄を懐かしむもので、逢坂氏の暖かい人柄が伝わってくる。 そして残りのパートは、同氏の代表作『機巧奇傅ヒヲウ戦記』、『機動戦士Vガンダム』、『獣王星』、『機動武闘伝Gガンダム』、『絢爛舞踏祭 ザ・マーズ・デイブレイク』、『天空のエスカフローネ』、合計で6作品の版権イラストの原画展示になっている。作品ごとに3点から5点ぐらいが展示をされている。 版権イラストは、作品の中ではなく、雑誌の表紙やポスター、DVD・CDジャケットなどのために特別に描き下される絵のことを指す。今回はその版権イラストの原画だけが集められている。 こうした版権イラストは、画集など以外ではまとまって目にすることがない。また、そうした場合も、彩色され完成したものがほとんどである。今回のように一人のアニメーターの版権イラストが、手描きの線が残る原画のかたちで見られる機会はほとんどない。 しかも数にして20数点だが、そのどれも驚くほど素晴らしいものばかりで、逢坂浩司氏のアニメーターとしての実力にあらためて驚かされた。 まるで今にも動き出しそうな活き活きとしたキャラクター、微妙な構図ひとつひとつにキャラクターの性格や作品の持ち味が凝縮されている。 展示された作品は、子供向けの『ヒヲウ戦記』、アクション中心の『Gガンダム』、少女マンガのスタイルを活かした『獣王星』など非常に幅の広い作品群だ。逢坂浩司氏はその全てに相応しい絵を与えながら、「逢坂浩司」という個性が見事に貫かれ表れている。 アニメーションはその語源がアニマ(魂)=生命の動きから由来するように、海外でも国内でもアニメーターの技量というと専ら動きが重視される。 しかし、日本式リミテッド・アニメの最大の特徴はストップ・アンド・ムーブなのだから、日本のアニメーターの技量は絵を動かせると同時に、絵が止まった時に魅力的に決まるキャラクターデザインと画面の構成力が重要なのでないかと思う。 版権イラストは、まさにアニメの絵を止めた時に、キャラクターを魅力的に生き生きと描くものだ。単なるイラストではなく、動かない絵の中に作品世界が凝縮したもの、動きのないアニメそのものなのだ。日本にはこうした版権イラストを魅力的に描く優秀なアニメーターが多いが、逢坂浩司氏は間違いなくそのトップのひとりだった、と展示された原画をみながら感じた。 そして、日本のアニメ界の失った損失の大きさと同時に、逢坂氏の残された作品の量と内容の素晴らしさに気づかされる。 今回展示されている原画は、スペースの関係から期間中に入替えを行うという。また、そのなかには、杉並アニメーションミュージアムでは展示されなかったものも含まれる予定である。出来れば何度もでも足を運びたい展覧会だ。[数土直志]『追悼展示会アニメーター逢坂浩司展』/http://www.animecenter.jp/jp/200801/21190423.php場所:東京アニメセンター /http://www.animecenter.jp/jp/ 会期: 1月22日(火)~2月17日(日)[休館日:1月28日(日)、2月7日(木)、8日(金)]時間 11:00~19:00入場料: 無料
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