6月23日に発売される 「星山博之のアニメシナリオ教室」は、アニメのシナリオライターを目指す人のための入門書である。そして、現在、利用出来るほとんど唯一のアニメシナリオの解説書でもある。 この本はシナリオを学ぶ人に対する講義のかたちをとっている。「オリエンテーション」から始まって、「作り手の視点」や「プロット」、「シナリオを書く」など7日間にわけて、シナリオの考え方から実際の技術まで順番に解説している。しかし、7日間に分けられているからといって、7回に分けて読む必要はない。それは、シナリオのプロセスを判りやすく説明するための手段に過ぎないからだ。 その解説は平易で、やるべきことや考え方は明快、アニメシナリオライターを目指す人にとっては必須の指南書となっている。 一方で著者の星山さんは本のなかで、この本をシナリオライターだけでなく、演出やプロデューサーやその志望者にも是非読んで欲しいと語りかけている。つまり、シナリオを理解することは作品の演出と制作の基礎をなすからだ。 ところが一旦本を読み始めてみればわかるが、この本が優れているのは、アニメシナリオの技術を語りながら、実はさらに多くのことを語っている点にある。それはアニメの物語の本質である。 これまでアニメの作画や演出については語られることが多いが、アニメの物語の有様について語られることは少なかった。アニメの物語の根幹を成すものは脚本であるのだが、脚本を単独に取り上げる機会はあまり多くないからだ。 星山さんは本のなかで、自らが脚本を手がけた『機動戦士ガンダム』や『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』、『銀河漂流バイファム』を例に取り上げる。そしてその解説のなかから脚本の果たす役割、それがアニメの物語を作る仕組みを鮮やかに説明する。 アニメの幹である物語の本質を知る点で、この本はアニメに関心がある全ての人にとって価値がある本でもある。 今、誰かがアニメの作り方を知りたいと思った時に、たぶんその人はアニメの作りかたが書かれた本を探すだろう。その時に、初めてアニメを作ることに書かれた本が、あまり存在しないことに気づくに違いない。 作画は勿論だが、演出、絵コンテ、編集などアニメを作る技術は、きちんとしたかたちにまとめられることが少ない。脚本(シナリオ)は、そうした分野のなかでも特に技術の伝承の存在しない部分である。 星山さんの「アニメシナリオ教室」は、アニメ制作を学ぶうえでの重要な欠落を埋める貴重な仕事である。そしてこの本は、今後、長い間アニメシナリオを学ぶ貴重なテキストとして利用されていくことになるだろう。 著者の星山博之さんが、この本の完成を待たずに2007年2月7日に逝去されたことは、多くの人が知るところだろう。この本は星山さんの遺作ともなっている。 私たちは日本のアニメ史の彩った星山さんの死を哀しむと同時に、その最後に残してくれた素晴らしい仕事に驚かされるに違いない。 星山博之のアニメシナリオ教室雷鳥社 /http://www.raichosha.co.jp/1800円(外税)
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