デスティック・フォー by 木村真二 『デスティック・フォー』を監督するのは、美術スタッフとして『スペースコブラ』や『ビューティフルドリーマー』、美術監督として『スチームボーイ』、そして『鉄コン筋クリート』を手がけた木村真二監督である。 美術スタッフ出身の監督というのはあまり例が多くないが、木村監督作品のビジュアルはそうと知らなくても、美術志向を刺激する。ストーリー自体はスラップスティックなのではあるが、ちょっとおどろおどろしいキャラクターは「キモグロかわいい」という表現のとおり、物語の別の見え方を示す。
LIMIT CYCLE by 二村秀樹 『LIMIT CYCLE』はアニメーター二村秀樹さんの監督作品。今回はむしろビジュアルクリエイターという肩書きのほうがより似つかわしい仕事ぶりである。 登場人物と同化しそうな不安感の繰り返しは、劇場で見るのに適したプログラムである。表現に合わせた2Dと3Dの融合は、もはや珍しい表現方法ではないが、ここまで一体化を前提とした作品は彼のビジュアルセンスあってのものである。
夢みるキカイ by 湯浅政明 『夢みるキカイ』は、今回の「Genius」という名前が最も相応しいと思われる湯浅政明監督である。アニメーター・演出家、それぞれの仕事に熱狂的なファンを持つ監督。どちらの要望にも応えるのに適した今回の小作品は、それぞれの予想を遥かに上回る幻想的な作品に仕上がった。 彼らしいアニメートもあれば、実写融合に近い画面作り。赤ん坊から始まるストーリーと、本作のタイトルは過分に示唆的である。
BABY BLUE by 渡辺信一郎 『BABY BLUE』は渡辺信一郎監督のビターな恋愛物語。監督デビュー作の『マクロスプラス』や『カウボーイビバップ』にもその面影はあるが、真正面からこうした物語に取り組んだのは本作が初めてとなる。 過去の作品がいずれもヒットしたことで、同様のジャンルばかりオファーされる渡辺監督が、自分の経験まで取り入れて、ある意味で意地を見せた内容だ。もちろん、彼が得意とする実写的なレイアウトと青春映画の風景は愛称が良く、途中のバカバカしくもあるコメディシーンまでは、いい意味でアニメを忘れてしまう。 また、声優を担当した柳楽優弥&菊地凛子の芝居はロードムービーらしさを引き立てる大事な要素となっている。雄弁に心情を語る作品ではない。もし作中と似通った二人で見に行くのなら、男の方はよほど心情表現に注意しておかないと、同じように見抜かれてしまうかもしれない。