記者会見にはヤサコ役の声優折笠富美子さんとイサコ役の桑島法子さん、それにオープニングとエンディングの作詞・作曲、歌を担当した池田綾子さんがゲストに現れた。また、製作を代表してNHKエンタープライズの松本寿子担当部長、NHKの柏木敦子チーフプロデューサーが参加した。
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『電脳コイル』の物語は、電脳世界を見ることの出来る眼鏡が発明されたある時代のある町の物語である。設定だけ見るとサイバーパンクな世界を創造するが、実際は全く逆である。何か面白いことばかりを探している子供たちが、町のなかの空き地や神社といったどこか懐かしい日本の風景のなかで冒険を繰り広げる。
そうしたなかで、コンピュターウィルスだのバグだの「電脳」用語が飛び交う。だから作品は現代のようでもあり、未来のようでもあり、昔あったようでもある不思議な空間を作り出している。
作品の魅力はこうした全く異なった要素が破綻することなく、自然に取り入れられ、微妙なバンランスを完璧に保っていることである。だから『電脳コイル』は、多くの人に愛される作品になるだろう。SFアニメが嫌いなお母さんにも、SFアニメが好きなコアなアニメファンにも、そして物語をそのままのかたちで楽しむ子供たちにもだ。
NHKが『電脳コイル』を期待の新作として打ち出すのは、そうした絵と物語のクオリティを維持しつつ大衆性を失わないエンタテインメント作品としての自信だろう。
こうした緻密な物語は、『電脳コイル』が初監督となる磯光雄氏の企画の賜物である。NHKエンタープライズの松本寿子担当部長によれば、作品の企画書は2000年4月に完成し、1年半前に製作を決めたものだという。非常に長い時間かかって辿りついた作品である。
そしてまた松本氏は、その多才ぶりで知られた磯光雄氏の初監督作品としても注目が高いと、外部からの期待の大きさも紹介した。
柏木敦子チーフプロデューサーは、番組の放送時間はNHKアニメのゴールデンアワーと紹介した。そのうえで子供にどうすれば作品が届くのか難しい時代、かたちのうえで子供が望んでいる作品でない作品が必要とされているという。
『電脳コイル』は生き生きとした子供たちが活躍するワクワクする作品、そして大人たちも共感する作品として、まさにそうした作品なのだとする。
また記者会見と同時に行なわれた試写会に訪れた小説版『電脳コイル』の作者宮村優子さんは、3年前に作品を知って自分から是非協力させてくださいと磯監督に頼んだ作品と話した。
そして、試写で作品を観た時には思わず涙ぐんでしまったと、感激の様子であった。
電脳コイル公式サイト /http://www.tokuma.jp/coil/