東京国際アニメフェアのシンポジウムのトップをきって開催されたのが、『進化する欧米のアニメ市場と日本企業の戦略』である。もともと東京国際アニメフェアは、海外に向けた日本アニメの売り込みを主要な目的に始またから、これほどアニメフェアに相応しいパネルはないであろう。 パネルの主な内容は、アメリカ市場とヨーロッパ市場での日本アニメのビジネス状況と問題点、課題である。パネリストは、昨年に引き続き米国Wowmax Media!の海部正樹氏とジェトロ・パリセンターの豊永真美氏が行った。 パネルは海部氏がアメリカ市場、豊永氏がヨーロッパ市場の現状を説明し、司会でジェトロの木村誠氏が質問をする討論会とで構成された。 海部氏、豊永氏の報告は対照的であった。つまり、エンタテイメント市場は巨大だがそのなかでマイナーな存在であるアメリカの日本アニメ市場と日本アニメは大きな人気があるがエンターテイメントビジネスの市場が小さなヨーロッパの違いである。 両市場は似ているようで全く異なるという認識が必要であることをあらためて感じさせるものであった。例えば、アメリカと中国でのビジネスの戦略が違うように、アメリカとフランスでのビジネス戦略も異なってくるのである。 逆に過去1年間での両地域共通の現象は、マンガ出版の急増である。しかし、これも似ているようで異なる部分もある。アメリカではマンガとアニメ連動が強まっているのに対して、ヨーロッパではアニメとマンガは個別の動きだと言う。 シンポジウムの雰囲気は、楽観も悲観もなくといったように感じた。例えば、アメリカであれば、海部氏の提示した資料では、日本アニメの市場は大きな市場ではないが、少なくとも現在の市場規模を維持しつつあるようだ。 この限られた市場で、何をすれば良いのかといった実際的な内容である。特に興味が惹かれたのは、アメリカには既に4000作品の入手可能な日本アニメの在庫があるという指摘である。こうした作品を棚に並べられるショップはないが、間違いなく売れる商品だという。そこに新しい可能性がありそうであった。 ヨーロッパについても、豊永氏はプラスのベクトルとマイナスのベクトルが両方存在するという。地上波放送で日本アニメは縮小する傾向にある一方で、有料チャンネルのマーケットが広がっているからである。また、フランスでは『鋼の錬金術師』や『MONSTER』といった大人向けの作品が、ゴールデンタイムに放映されるなど、これまでなかった大人向けのアニメ市場が生まれつつあると解説した。 こうした内容を聞く限りでは、アメリカでもヨーロッパでも、まだまだ日本アニメのビジネスの可能性はありそうだ。そして、そのために必要なのは、このシンポジウムのタイトルでもある十分考え抜かれた戦略ではないだろうか。■進化する欧米のアニメ市場と日本企業の戦略パネリスト米国Wowmax Media! 代表/プロデューサー 海部 正樹氏ジェトロ・パリセンター次長 豊永 真美氏司会:ジェトロ輸出促進課長 木村 誠氏主催:日本貿易振興機構(JETRO)/東京国際アニメフェア /日本貿易振興機構