テレビ放映で人気になり劇場展開されるアニメ作品の多くが、これまでのファンに対するサービス精神に溢れている。人気キャラクターの総出演や人気アーティストによる主題歌、あるいは劇場公開に先立つ舞台挨拶などもこれに入れていいかもしれない。 8月に公開された『鋼の錬金術師‐シャンバラを往く者‐』もまたサービス精神に溢れた映画だった。成長した主人公達をスクリーン上に登場させることで、作品としての目新しさをアピールする。一方で、テレビシリーズに登場した人気キャラクターを数多く登場させファンの満足感を高めている。 しかし、こうした従来のファンへのサービスは、これまでのテレビシリーズを知らない劇場作品の観客にしばしば戸惑いを与える。初めて観た作品の劇場版の感想に「よく判らなかった」といったものが多いのは偶然ではない。それは劇場作品の目的が従来のファンに向いている時に常に起こる現象なのだ。 『シャンバラを往く者』についても、こうした面がややあった。2時間という枠にしては多過ぎるキャラクターが、主人公エドと弟アルの兄弟の絆という最も肝心な物語の核をぼやけさせてしまっているのだ。エドの父親やラース、グラトニーの登場やロイの国境警備のエピソードは本当に必要だったのかなと感じる。 そうした物語の拡散といった小さな不満はあるものの全体として『シャンバラを往く者』は、十分楽しめるよく出来た作品だった。それはテレビシリーズとは、異なった独自のテーマと物語を高いレベルでまとめあげているからだ。これはまた、荒川弘のマンガから独立したアニメ版『鋼の錬金術師』の完成でもある。 『シャンバラを往く者』は、舞台の大半を主人公たちの本来の世界ではなくパラレルに存在する我々の世界におくことで、テレビシリーズから独立した作品にすることに成功している。ふたつの対立する世界とその狭間で苦悩するエドは全く劇場版のオリジナルである。そして、それこそが今回の映画の魅力のひとつであった。 こうした原作との違いはテレビシリーズ後半の原作とは異なった作品として展開したアニメ版『鋼の錬金術師』の集大成ともいえる。アニメ版『鋼の錬金術師』は、『シャンバラを往く者』によって完全に原作と離れ、別個の作品として完成された。 アニメ版『鋼の錬金術』の監督水島精二はこの映画『シャンバラを往く者』を持って、独立した才能あるアニメ監督として評価されることが可能になったのでないだろうか。/「錬の錬金術師 シャンバラを往く者」公式サイト /錬の錬金術師公式サイト
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