ジャパンコンテンツの海外展開を模索するMyAnimeListが描く未来図【IMART 2021レポート】 | アニメ!アニメ!

ジャパンコンテンツの海外展開を模索するMyAnimeListが描く未来図【IMART 2021レポート】

日本のアニメ・マンガ文化産業の未来を拓くことを目的に、2019年より毎年開催されてきた「IMART」。第3回となる2021年は2月26日から27日までの2日間開催され、さまざまなセッションでトークが繰り広げられた。

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(C)アイマート実行委員会 2020-2021
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マンガ・アニメの未来をテーマにした国際カンファレンスIMART(国際マンガ・アニメ祭 Reiwa Toshima)の第二回が2021年2月26日(金)と27日(土)にかけて開催された。

本稿で紹介する「ジャパンコンテンツの海外展開」は2月27日に配信されたセッションのひとつで、アニメ・マンガコミュニティサイト「MyAnimeList(マイ アニメ リスト)」や出版市場拡大など、メディアドゥの取り組みを紹介するものである。

登壇者は「MyAnimeList」を運営する株式会社メディアドゥ、および株式会社MyAnimeListの取締役・溝口敦氏。モデレーター兼ナビゲーターはIMART実行委員の菊池健氏。同じくIMART実行委員でジャーナリストの数土直志氏が聞き手として参加した。

出版市場の拡大に向けた取り組み例


電子書籍の普及によって、現在、出版市場は紙・電子をあわせて6000億円を超えるところまで盛り返した。今後、その市場をさらに拡大させるためにはどうしたらいいのか?

メディアドゥグループの理念は、ひとつでも多くのコンテンツをひとりでも多くの人にお届けすること。

そのためにはマンガを読む母数を増やす必要があり、現在、メディアドゥでは他の出版社と同様、「3分でわかる○○動画」といったPR活動や、作品をモーションコミック化するなどライトユーザーの獲得に向けた取り組みを行っている。

また未来のデジタル世界を見据えた動きとして、紙の本を読む感覚で電子書籍を楽しむ「VR電子書籍リーダー」の研究開発にもチャレンジしている。

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そのほかブロックチェーンを活用した取り組みでも新たな商品展開を模索中だ。
キーワードは「デジタルコンテンツの資産化」、そして「トレーサビリティ」の2つ。

まず「デジタルコンテンツの資産化」は、たとえばコミックのオマケとしてデジタルの缶バッジが付属し、なおかつそれが個数制限できる世界が訪れたらどうなるか?という未来を見据えた取り組みだ。

本来、デジタルコンテンツの商品は、誰がその商品の所有者なのか判別できない。しかしブロックチェーンを取り入れて所有者が記録されるようになると、それがユーザーの資産となる。資産になれば、デジタル缶バッジ同士でトレードする楽しみが生まれるのだ。

また古本を売買した場合、本来は作者の収入にはならない。しかしブロックチェーンを導入したデジタルの世界であれば、その売買の記録から作者に印税が入る仕組みを作ることができる。

2つ目の「トレーサビリティ」は履歴やリレーション(関連付け)の管理だ。

例えばデジタルの単行本を読んだとする。その読んだ回数がデータとして残れば、ある回数に達した時に報酬として何かを提供することができる。
この仕組みは既存のデータベースでも可能ではあるものの、履歴が改ざんされてしまう余地が残る。

そこでブロックチェーンの出番だ。
ブロックチェーンを用いることで改ざんできないデータが生まれ、本当のファンを知る手がかりになったり、影響力のある人間を探すことに使えたり、作者本人の信用度として活用することができる。

そしてその考え方はコミックの世界だけではなく、アニメの分野でも新たな取り組みにつながるという。

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アニメの海外展開を推進する取り組み例


「MyAnimeList(マイ アニメ リスト)」はもともとDeNA社が所有していたコミュニティサイトだ。海外ユーザーに国内作品を届けるための接点として、メディアドゥホールディングスが2019年に買収した。

そのおもなサービスは作品ごとのデータベースだ。ユーザー自身が満足度を採点したり、各国ごとの声優リストを追加したり、フォーラムで交流したりと、まさに海外アニメファンが集う場となっている。

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それではなぜメディアドゥホールディングスは「MyAnimeList」を手に入れる必要があったのか?
そこが今後の海外展開を成功させるための鍵となる。

海外にアニメ作品を売り込む際、現在はTwitterやFacebookといった既存のメディアが利用されている。しかしそこではどんなユーザーに受けているのか? 性別は? 国籍は? 年齢は? そういった細かいところまでリサーチすることができない。海賊版ならなおさらだ。

そこでメディアドゥは「MyAnimeList」を通じ、サイトの利用状況から海外ファンの傾向を把握しようと考えた。
ユーザーがデータを入力する仕様であれば、作品に対する反応をダイレクトに集めることができるし、たとえ海賊版を視聴していたとしても変わらず反応を収集できる。
しかも「MyAnimeList」ならPRも一括でおこなうことも可能だ。

またデータの収集のみならず、「MyAnimeList」内でグッズ販売をしたりオリジナル番組を発信したりするなど、総合的なハブとなるようサービスを今後拡充する予定だという。

そのためのコンテンツ配信のテストマーケティングを積極的に行いたいということで、現在「MyAnimeList」ではパートナーを探しているところだ。

新たな段階へと進もうとしている「MyAnimeList」。
はたしてどのような形で成長し、国内アニメ業界にどんな恩恵をもたらすのか今から注目だ。

[アニメ!アニメ!ビズ/animeanime.bizより転載記事]
《気賀沢 昌志》
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